第四十五話 ザーフィア王子からのプレゼント
ここは、余弦城だ。
美しい真っ青な城の外観は、暗闇に溶けて鳴りを静めている。
その余弦城のザーフィア王子の自室は、柔らかい光で色鮮やかに照らし出されていた。
その自室に、二人はいた。
『ザーフィア殿下、企ては失敗に至りました』
『ふ。そうか! 流石は、アレクシス王子の妖精というわけか!』
私は、ザーフィア王子と月湯君が話しているのを確認してから、半トリップした。
『失礼します、ザーフィア様!』
「腕輪をお返しに来ました!」
特に驚くこともなく顎を上げて、私と偽王子君を見下ろしている。
「腕輪は返す必要はない!」
「で、でも、月湯君がくれたけど、これって盗品なんですよね?」
一転して、月湯君は穏やかだった。
フフッと笑って、それを否定した。
「いや、それは我が主が、蜜柑さんに渡すように仰ったのでね」
「私からのプレゼントだよ! 勿論、私の私物で盗品などではないぞ!」
で、でも、国宝級だよ!?
国宝級ってことは、一億は下らないんじゃないかと……!
「や、やっぱり、こんな高価なもの、頂けません!」
「私が、蜜柑と偽王子を騙した詫びだ。受け取ってくれ」
騙した詫びでこんな高価なものをポーンと……!?
「現実世界で売り払って、生活費の足しにでもすれば?」
月湯君が悪戯っぽく笑っている。
私は国宝級を握りしめてその価値にクラクラした。
もしかして、当分生活費には困らない……!?
「そ、そっか……。なら、頂いておきます……」
ドキドキしながら、私は再び腕に付けた。
『よかったね、蜜柑ちゃん』
「う、うん……! 両親も喜ぶと思う!」
穏やかな空気が私を取り巻いていた。
「でも……」
気がかりなことがある。
それは、罪悪感と共に私の感情を揺り動かした。
月湯君をじっと見ていると、彼が吹き出した。
「どうしたの、蜜柑さん? まさか、僕に惚れたとかっていう?」
『むむっ、蜜柑ちゃんが……!』
「もう、月湯君も偽王子君も違うよ!」
「じゃあ、何かな」
「あのとき、月湯君が私を助けたから、代わりに捕まっちゃったの?」
初めて、余弦国に来たとき、私はザーフィア王子に捕まりかけた。
助けてくれたのが、他でもない月湯君なのだ。
月湯君は私を助ける代わりに、ザーフィア王子に捕まったとしたら……?




