第四十六話 月湯君のトップシークレット
私の心配をよそに、月湯君はあっけらかんとして笑った。
「別に? 逃げようと思ったら逃げれたよ。でも、我が主が妙に面白い人でね」
「そう。だから、あっさりと捕まってくれたというわけだよ」
二人は良い主従関係という雰囲気だ。仲良しこよしだ。
私はほっと胸を撫で下ろした。
「な、なんだ~。安心した!」
『本当だね~。俺も罪悪感があったからホッとしたよ~』
偽王子君も、安堵したようで声が脱力していた。
「月湯のお蔭で、予言の競い合いでは負け知らずだからな」
ザーフィア王子は月湯君の働きぶりに満足げだ。
「そうなんですか~」
「我が主のお役にたてて光栄ですよ」
予言とは作られたものかもしれない。
けれど、月湯君も幸せそうなので、ひとまず安心だ。
「月湯」
ザーフィア王子が月湯君を促した。
「はい、我が主」
月湯君は返事をした後、私の方を向いてニヤリと笑った。
サプライズが好きそうな月湯君らしい笑みだ。
な、なんだろ……? アヤシイ……。
「蜜柑さん、偽王子君、僕が調べたことで面白いことを教えてあげようか?」
「えっ、面白い事?」
『面白い事なら知りたいなぁ!』
偽王子君は興味津々なご様子だ。
私も、得になることなら知りたいけれど……。
「実はねぇ――」
もったいぶるように、月湯君は間を溜めた。
そして、ヒソヒソ声で話し始めた。
「ここだけの話、アレクシス王子は、妃殿下のご子息ではないんだ」
「え……」
『ええっ!?』
偽王子君は驚いているが、私は妙にしっくりきていた。
ライラック王妃のあのアレクシス王子への冷たい態度は、このせいだったんだ。
さらに月湯君は続けた。
「アレクシス王子は、平民の子だよ」
私は、脳天に雷が落ちたように衝撃を受けた。
内容にショックを受けたからではない。
分からない単語があるからだ……!
「偽王子君、偽王子君……!」
『何かな、蜜柑ちゃん?』
私は半トリップしたまま、異空間の偽王子君にコソコソと尋ねた。
「平民ってどういう意味?」
『一般人ってことだよ』
「つ、つまり――。アレクシス様のお母様は一般人ってこと――?」
『そういうことになるよね』
「ちょっと待って? 何か変だよ……?」
『アレクシス様が平民ってことは、父親は国王様じゃないってことじゃないかな』
「偽王子君って流石~!」
『いやぁ~。照れるな~』
ああ、偽王子君ってかわいいなぁ。
いや、焦点はそこじゃない……!
私はあまりの事実に、愕然となった。
「じゃあ、アレクシス王子は、王子様じゃなくて一般人!? しかも、国王様ともライラック王妃様とも血の繋がりがない!?」
「そういうことだよ。僕のトップシークレットなんだけどね?」と、月湯君。
「な、なんだって~!? トップシークレットって――!?」
『蜜柑ちゃん、トップシークレットっていうのはね』
偽王子君が懇切丁寧に説明しているのを私は聴いてなかった。
そ、そんな秘密を、ひとに教えるな~!
私は心の中で本音を絶叫していた。
月湯君とザーフィア王子は、絶句している私を面白そうに眺めて、したり顔で微笑んでいた。




