第四十一話 月湯君のコレクション
『妖精殿、居るのでしょう? 国王陛下にご挨拶を!』
ローズ第三王妃は優しい声色で妖精を呼んだ。
すると、異空間が開き、そこから手が伸びた。
「えっ!?」
異空間から現れた顔を見た途端、私は我が目を疑った。
『初めまして、月湯と申します』
異空間から半トリップしているのは、あの妖精の月湯君だったのだ。
「ええ~っ!? な、なんで……!?」
『月湯君が、ローズ様の妖精……!?』
国王様は、酷く感激したようで目をキラキラさせて微笑んでいる。
『おお、月湯殿か! 私の国にようこそ!』
国王様は椅子から立ち上がって、握手を求めた。
月湯君は半トリップしたまま、異空間を移動させた。
そして、国王様と握手を交わしていた。
『これが、お近づきの品です』
月湯君は、異空間から幾何学的模様の入った壺を取り出して、国王様に手渡していた。
『こ、これは美しい壺だな……!』
どことなく、高そうな壺だ。
『ええ。お近づきに差し上げますよ』
『す、素晴らしい! ありがたく頂戴するぞ!』
国王様は大喜びだ。国王様の掴みはオーケーな感じだ。
ローズ第三王妃は、月湯君の目くばせをを確認して頷いた。
『つきましては、骨董品を売る事業を国を挙げて展開しようと考えております』
『私のコレクションを宝玉国のために役立てて頂ければ幸いにございます』
これには、王妃様も感激したご様子だ。
『ローズ、頑張りなさい。応援しておるぞ』
『妃殿下の温情心より感謝しております!』
仲がいい王妃様と第三王妃様。これで、ますます仲良しこよしだ。
しかし、私は月湯君の台詞に違和感を覚えた。
『月湯君のコレクションを売る……?』
「宝玉国の為にそこまでするかなぁ……?」
『変だよね?』
「変だよ~」
『ね~』
私と偽王子君はヒソヒソと話し合っていた。
すると、異空間が隣に開いた。
「やあ、蜜柑さんと、偽王子君」
「うわっ!?」
『わっ!』
いきなり、異空間から月湯君が姉の部屋に半トリップしてきたので、私は尻餅をついてしまった。月湯君はそれを見て、クスクスと笑った。
「やっぱり、僕の事を見ていたんだね」
「月湯君、一体何を考えているの?」
私は、その場に座りなおした。
月湯君は手を顎にやって、うーんと考える。
「ローズ様を立てたら、ギルバート王子が次期国王に推されるからかな……? そっちの方が都合がいいんだよ、いろいろとね……」
「そ、そんなことさせないよ!」
『アレクシス様の方が次期国王にふさわしいんだからな!』
「そんなことを言われてもね。これ、骨董屋の開店祝いに蜜柑さんに差し上げるよ」
いきなり、異空間から何かを取って私に手渡してきた。
「えっ、あ、ありがと……」
『むむっ、蜜柑ちゃんにプレゼント……!』
私は、貰ったものを見た。凄く綺麗な腕輪だった。
これにも幾何学的模様が入っている。
「じゃあ、僕はローズ様のせいで忙しいから……またね!」
月湯君は、手を振るとまた異空間を閉じてどこかに去った。
「行っちゃった……」
『……蜜柑ちゃん!』
一大決心をしたような偽王子君の声に吃驚した。
「な、なに、偽王子君……」
『いつか俺も蜜柑ちゃんにプレゼントするから!』
偽王子君は、異空間をいつもより多く、ぐるんぐるんさせている。
「ありがとう! でもね、偽王子君は居てくれるだけでいいよ~!」
『蜜柑ちゃん……!』
月湯君をライバル視している偽王子君が可愛いなぁと、私はほのぼのするのだった。




