第三十九話 虚言か、真実か
この後に催されるパレードの見物をしているどころではなくなった。
半トリップを止めて、姉の部屋から私と偽王子君は宝玉国の宝玉城に異空間を転移させた。
アレクシス王子は、丁度お茶を楽しまれている最中だった。私は勢いよくアレクシス王子のお部屋に半トリップして叫んだ。
「アレクシス様!」
『大変です!』
すると、アレクシス王子は顔を上げて吃驚していた。アレクシス王子が持ち上げたカップがソーサーに戻される。
「どうしたというのだ、一体?」
『申し訳ございません、アレクシス様』
「実は、余弦国の春祭りに行ってきたのですが……!」
私の報告を聴いたアレクシス王子は、楽しそうに頬を綻ばせた。
「ほう? 土産話でも聞かせてくれるのか?」
「お土産ってほどではないんですけど……そのぉ……」
勝手に余弦城に行ってきたことを、怒られるやも……!
躊躇した私に代わって、偽王子君が明確に説明した。
『余弦城に行ってきたんですが、そこで、ザーフィア王子に忠告されました』
異空間から顔を出している私は、アレクシス王子を前に固まるのみだ。
普段、私の事を勇者だという彼だが、偽王子君の方が勇者だ。
案の定、アレクシス王子のお顔が強張った。私の額から冷や汗が流れる。
「それはなんだろうな?」
『近々、余弦国と宝玉国に亀裂が入るかもしれないと』
「だ、だから、私と偽王子君がそれを阻止してみせろと言われまして……!」
躊躇ったものの私も偽王子君に倣った。
アレクシス王子は、寛大に偽王子君と私の報告に耳を傾けてくれた。
「そうか、余弦国の予言はよく当たることは身をもって知っている。念のために、宝玉城の中を探ってみてくれないか。何か、火種があるかもしれんからな」
「は、はい……!」
アレクシス王子も危惧されているように、何かあってからでは遅い。
調べて何もなければ、それはただの取り越し苦労だったことになる。
『承知いたしました』
「頼りにしているぞ、蜜柑、偽王子」
アレクシス王子が、にっこりと微笑んだ。
「……! は、はい!」
私は、半トリップを止めて、姉の部屋に引っ込んだ。
「よーし! アレクシス様のために頑張らねば……!」
『じゃあ、蜜柑ちゃん、早速調べよう!』
「分かった!」
私は、異空間を転移させようとしたが、考えなしだったことに気づいた。
「えーと……」
異空間を前にして、床に座り直す。
『どうしたの? 蜜柑ちゃん』
「どこから調べたらいいのか……。やっぱり、王妃様たちや使用人たちの部屋を虱潰しに探していかないといけないのかなぁ……?」
アレクシス王子の毒料理事件よりも手間がかかりそうだ。私は、一瞬で憂鬱になってため息が口から漏れる。
しかし、偽王子君は頭の回転が速かった。
『やっぱり、お城の様子が一番分かるのは、国王様のいるところじゃないかな?』
「おおお! 流石は異空間の偽王子君だ……! じゃあ、早速移動っと!」
『移動移動~っと!』
私は、意気揚々と異空間の画面を国王様のお部屋に転移させたのだった。




