第三十三話 二つ目の願い星
それから、ローズ第三王妃とアレクシス王子の取り引きは滞りなく行われた。
アレクシス王子は偽王子君の為に、第二の願い星を手に入れてくれたのだ。
『ありがとうございます、アレクシス様』
「やったね、偽王子君!」
「早速お願いしてみると良い」
「では……」
私はアレクシス王子からごつごつした隕石のような石を両手に持って掲げた。
「願い星様~! 偽王子君を異空間から解放してあげてください~!」
願い星は、私の頭上で眩く光った。パトリック執事は「おおお」と感涙している。
すると、願い星の甲高い声が聞こえた。
『ごっめ~ん! アタシ、食べること担当の願い星なの! 食べること以外は叶えられないんだ~!』
私は思わずムッとした。なんで、願い星のどれもこれもに制約があるんだろう。
しかし、偽王子君が自由に食べれるようになれば、私も嬉しい。だから、妥協することにした。
「じ、じゃあ、偽王子君が自由に何でも食べれるようにしてあげてください!」
『おっけ~! じゃあ、そのお願い事叶えちゃお!』
願い星は眩く明滅した。そして、願い星はうんともすんとも言わなくなってしまった。やはり、願い星は消耗品なのだ。
願いはかなったのだろうか……?
私は、偽王子君に尋ねてみる。
「偽王子君、何でも自由に食べれるようになった?」
『ど、どうかな……やってみる……』
私は、アレクシス王子の部屋に足を降ろした。そして、肉まんの入った紙袋を抱えてスタンバイした。
偽王子君が異空間をぐるんぐるんさせる。
「おお~! 良い調子だよ、偽王子君!」
すると、私の抱えている袋の中から肉まんがふわりと浮きあがった。
「おおお! すごいよ、偽王子君~!」
肉まんは、偽王子君の異空間の中に掃除機の吸引の様に吸い込まれて行った。
「おおお~!? 味はどうかな。偽王子君!」
『蜜柑ちゃん、肉まん美味しいよ!』
「良かったね~! 偽王子君!」
『もぐもぐ~』
私と偽王子君は有頂天になっていたが、アレクシス王子はひとり難しい顔をされていた。
「だが、偽王子は、異空間から解放できなかったようだが……」
「う、うん」
問題はそこだ。偽王子君が異空間から解放できなければ意味がない、と言ってしまえばその通りだ。しかし、偽王子君はご機嫌だった。
『アレクシス様、俺はこれだけ叶っただけでも十分です』
偽王子君の嬉しそうな声を聴いて、アレクシス王子の強張った顔から力が抜けた。
「そうか。また、願い星の情報が入ったらお知らせしよう」
「ありがとうございます! アレクシス様!」
私と偽王子君は、アレクシス王子の部屋を後にした。肉まんのお礼にと、アレクシス王子は美味しいお料理を分けてくれたのだ。
偽王子君と私は、姉の部屋でそれを一緒に食べた。勿論、偽王子君は自分で食べれるようになったので、いっそう食事を楽しんでいるように感じた。
幸せそうな偽王子君を見て、私も幸せになるのだった。




