第十七話 黒幕のアリバイ
私と偽王子君は姉の部屋から異空間を使って、それをこっそりと取調室を傍観していた。丁度、尋問官がピンクのドレスを着た者を引っ張ってきたところだった。
『放せ! 無礼者!』
手荒い尋問官の扱い方に、それは激怒している。取調室に連れてくるや否や、それは尋問官の手を払いのけて、怒りをぶつけるように乱れたドレスを直している。
『オルタンシア様、お座りください』
この方がオルタンシア第四王妃か。
尋問官を睨みながら、オルタンシア第四王妃は椅子に座った。ピンクの薔薇を逆さまにしたようなボリュームのあるドレスのスカートが邪魔そうだ。
「美人だけど気が強そうな御方だ……」
『蜜柑ちゃんも、気が強いよね~』
私は異世界を異空間から傍観している。それをいいことに、コンビニで買ったコーヒーを、ストローですすっている。勿論、その音も向こうにバレてない。
尋問官は頭を下げた。
『申し訳ございません。ですが、貴方様がアレクシス殿下のお食事に毒を入れるように命令したとメイドのシャロンが自白しましたので……』
オルタンシアの目元が不機嫌そうに引きつった。
『ほう? それは不可解だな? 私はシャロンというメイドは知らないからな……』
『ご存じないんですか?』
『ああ、知らないな』
急に取調室のドアが開いて、尋問官が飛び込んできた。
『上官! メイドのシャロンが、毒をあおって自害しました!』
『な、なんだと!? ちゃんと調べなかったのか!?』
『調べました! あの時は、確かに毒なんて持っていなかったのですが……』
「な、なんだって~!?」
異空間の向こうでは騒然となっている。
『メイドのシャロンを見に行く?』と、偽王子君。
「う、ううん。まだ、オルタンシア様の供述を聴いてないから……」
『あら、証人は死んでしまったのね』
オルタンシア第四王妃は、証人が死んでも何も感じてないようだ。
長い睫を伸ばして、涼しい目をしてドアの方を見ている。
非情なのか。それとも、本当に面識がないから他人事なのか。
『オルタンシア様、自白していたただけませんか?』
オルタンシアは、不敵にと面白そうに赤い唇を歪ませた。
『私には、アリバイがある』
「ほぉ、アリバイね……」
一通りオルタンシア第四王妃のアリバイを聞いた私は、再びアレクシス王子の部屋に異空間の映像を転移させた。




