第十六話 メイドのシャロン
ぬか喜びから七日目。
私と偽王子君は、ようやく毒を入れた犯人を突き止めた。
またしても、舞台は厨房だった。
『フェリックスさん、アレクシス殿下のお食事はこれですか?』
『ああ、そうだよ。シャロン』
『じゃあ、持ってまいりますね~!』
「ああっ!? あの子!」
目の覚める思いだった。
それは、アレクシス王子が毒炭の煙で殺害されようとした日。執事パトリックとすれ違った後アレクシス王子のお部屋の方に歩いて行った、あのメイドだったのだ。
『メイドのシャロンか……』と、偽王子君。
「明らかに怪しいよね! 後をつけよう!」
『うん、そうしよう』
そして、シャロンは予想を裏切らなかった。
シャロンは、辺りを窺うとアレクシス王子のお食事に毒を混入させていた。
アレクシス王子の指示で、すぐに尋問官がシャロンの部屋を調べた。
私の目撃を裏付けるように、シャロンの部屋の中から毒炭が出てきたのだ。
数日前に、アレクシス王子を毒煙で亡き者にしようとした証拠だった。
取り調べの最中、メイドのシャロンは泣きながら答えた。
『私はある御方に命令されただけです! 他のメイドたちもそうでした!』
『ある御方とはだれだ?』
尋問官が尋ねた。
『そ、それは……!』
『このままだと、お前も殺されることになるぞ?』
尋問官がそういうと、メイドのシャロンは観念したらしい。覚悟を決めた面持ちで頷いた。
『わ、分かりました。お答えします。私に命令したのは……』
『命令したのは?』
私は姉の部屋の異空間から食い入るように取り調べを傍観していた。口に運んだセンベイがパリッと音を立てる。
メイドのシャロンは、はっきりした口調で、こう答えた。
『第四王妃のオルタンシア様です!』
やはり、命令する者がいたようだ。
私は頷くと、センベイをすべて咀嚼して嚥下した。
「これで、事件は解決だ! アレクシス様にお伝えしたら、お喜びになるぞ!」
『蜜柑ちゃん、俺にもセンベイ頂戴~』
私は、硬貨を貯金箱に入れる要領で、センベイを異空間に押し込んだ。
中から美味しそうな音がしている。
「偽王子君、器用だね」
しかし、解決するかと思ったこの事件。一筋縄ではいかなかったのである。




