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ついにPCが壊れました。
修理に出している間、iPhoneで執筆してみましたが、全く感覚が掴めずボロボロです。
段落下げるのどうやるの?!汗
※追記 やっとPC治りました!6/19
殺して欲しい男がいる
久々に顔を見せたかと思えば、能面のような顔で恐ろしいことを平気で口にする。
結鶴はベッドの上で胡坐をかいたまま、読みかけの新聞紙から顔を上げ、斑鳩を冷たく見据えた。
斑鳩はおやおやと怯えた風を装い、後ろに待機していた鳰へ手を上げ合図する。鳰はそれに反応し、結鶴の側へ来ると一枚の写真をシーツの上に置いた。
そこには明らかに隠し撮りと思われる角度で、初老と思われる老人が写っていた。
「この人物が次の君の仕事だ」
その男を殺し、彼が所時している手帳を持ち帰ること。その手帳にはhandに関してのデータが暗号によって記されているという。斑鳩が国に許可を得ず、無断でhandを幽閉し自らの支配下に置いているという事も恐らく調べられていると思われ、それを使って斑鳩を脅迫してきたという。
「…handに関するデータが記されたその手帳を、張本人であるhandの僕に奪って来いって言うの?頭おかしいんじゃない」
結鶴が呆れたように言うと、鳰がすかさず一歩前に出る。しかし斑鳩がそれを小さく手で制すと、それ以上動くことはなかった。
「私が捕われたところで、自由になれると期待しているわけでもあるまい。私から逃れられても、君の身柄は政府の研究対象として使われるだけだ。それに比べれば、今の状況の方が優遇されているとは思わんかね」
斑鳩は口髭を撫でながらさらりと言う。
結鶴は袖口から光るブレスに目をやった。この鎖でもう5年も縛られている。
何の為に生きているのか。5年間ずっと自問自答してきた。その度に、あの時助けた男の顔が浮かんだ。彼がまだ生きているのかどうかさえ怪しいが、しかし自分が生きていなければ彼に再び会うことはできないと思い、それだけが結鶴の命を繋いでいた。それだけの為に簡単に人を殺せるのだと思うと、目の前の老人より己の方がよっぽど恐ろしいと感じた。
その彼に会った。
夏目雲雀―――
5年前と変わらない、引き寄せられる感覚に泣きそうになった。やっと逢えた喜びと同時に、これからもまた、この左手を使い多くの過ちを繰り返していくのだという絶望感に、深い闇の底に落ちていく気がした。
胸に秘めたこの思いの為だけに、この手は真っ黒に染まってしまった。
「…その手帳はどこにあるの」
結鶴の言葉に、斑鳩はいい子だ、と微かに口許に笑みを浮かべる。
「彼はかなり慎重な男でね。自宅の寝室に鍵を付けた戸棚を作りつけているらしい。鍵は普段から肌身離さず持っているようだ…」
そう告げ、そのまま出口へ向かう。鳰がドアを開け、斑鳩は部屋を出ると、出口で立ち止まり、そう言えば…とこちらを振り返る。
「噂によると、彼は男色家らしい」
そのまま扉が静かに閉まる。
結鶴は写真に写る男の顔を見つめ、左手でぐっと握りつぶす。写真は煙のように跡形もなく消え去った。
そのままベッドに横たわり、シーツに力無く顔を埋め、思考を停止させた。
今はただ何も考えず眠りたかった。
「大佐、ゆづちゃんの力、見たことあります?」
書類に埋もれて真っ白になった机の隅にどうにかスペースを見つけ、コーヒーを置きながら秘書官は目を輝かせる。
「僕、見たんですよ!僕、昨日カップを割って指切っちゃったんです。そしたら今日ゆづちゃんに会って、僕の指の包帯見て、左手でちょっと触ったら!ほら!」
雲雀の前に人差指を突き出し、興奮した様子でくるくると回す。その指は傷跡すらない綺麗な状態だった。
「ゆづちゃんて治癒能力もあったんですね~すごい!普段はつんつんして、なんか生意気な感じですけど、優しいとこあるなってー」
目の前で踊る指を軽く押し返し、雲雀は目頭を押さえて椅子から立ち上がる。
「そのゆづちゃんはお前の指の傷を治しただけで、こちらへ顔を見せる様子はないが」
途端にしまったと顔を引きつらせる遠矢を残し、執務室を出る。昨日から膨大な量の書類に追われ、疲れが溜まっている。気分転換にでもと管内を歩くことにした。
いつの間にか、随分仲良くなったものだと思う。本部の中庭で2人が立ち話をしている姿を数回見掛けた。遠矢の方が一方的に盛り上がっている風だったが、結鶴の方もさして嫌がっている様子はなかった。むしろ、先日自分と居た時のような態度とは全く異なり、表情にも柔らかさがあるように見えた。
これまで、 handという目でしか彼を見ていなかったが、考えてみればまだ15才の子どもだ。もう少し子ども扱いする必要があったのではないか。そう考えてみたところで、そもそも子ども扱いがどういうものかすら分からなかった。その点においては、遠矢は結鶴が不快に感じない程度に彼を甘やかし、本来の子供らしさを引き出させているような気がする。
あれから結鶴は、必要最低限の報告を文書や電話で寄越すくらいで、雲雀の執務室へは一度も訪れていない。
『僕には、誰かを想うことは許されないから』
彼があの時発した言葉を思い返す。
言葉の意図は、苦しそうに歪む表情からは読み取れなかった。
調査報告では、彼は斑鳩の所有している塔で生活をしているという。いつから斑鳩のhandとなったのか、生まれや家族の存在など、全てが謎に包まれ、唯一分かっていることは、斑鳩の第一秘書である男が、結鶴の保護者のような役割を担っており、身の回りの世話をしているらしいということだけだった。
この様子では、名前や年齢も偽りである可能性もある。斑鳩がなぜわざわざ自分のもとへ結鶴を置いたのか、斑鳩の真の目的はなんなのかー
遠矢の話によれば、結鶴の力は本物であるらしい。斑鳩は、結鶴の力を使って、一体何を企んでいるのか。
「やはり本人から聞き出すのが一番早いか…」
「あら、またさぼってるの」
聞き覚えのある声に振り向くと、大元帥の第三秘書の女が、ウェーブの金髪をなびかせながらヒールを鳴らし、颯爽とこちらへ向かって来るのが目に入った。前回と異なり今回は軍服姿だが、彼女が着るとどう見てもコスプレにしか見えないのは自分だけだろうかと思う。真っ青なアイメイクに真っ赤なルージュ、胸元は今にもはちきれんばかりに窮屈そうで、手入れされた長い爪の先にはキラキラ光る宝石のような物が散りばめられていた。周囲からは相当浮いており、その状態で自分の前で立ち止まられる事に不快感を覚え、雲雀の足は無意識に一歩後退していた。
その様子に気付くと、女は首を傾けて雲雀を上目に覗き込む。
「冷たいわね。貴方も昔は私とさほど変わらない汚い仕事をしていたはずよ?その甘い顔で沢山の女性達を誑かして。それなのにその態度は随分じゃないかしら?」
「…君の外見と発言はいちいち私を不快にさせてくれる。何故ここに居る。君はこんな所に居ていい存在では無いはずだ、C」
雲雀は眉を顰め、苛立ちを隠す素振りも見せず、言い放つ。その呼び名に、女は一瞬顔色を変える。そもそも彼女のような立場の人間が、日中軍部内をうろうろしていること自体おかしい。
表に出せないような汚い任務を闇に紛れ果たす、主の命であれば、自らの命を絶つことさえも厭わない、Cと呼ばれる、名前すらない陰の第三秘書。
存在自体敵に知られてはならないはずだが、何かこの女でなくては務まらないような事態が発生したのか。それとも…。
「私の事をお調べになったの?流石漆黒のアサシンの異名を持つ夏目雲雀大佐。殺し屋に情報収集は必要よねー」
「黙れ」
喉元に噛み付く寸前の狼のような強い瞳で睨みつける。女は一瞬固まったが、すぐに呆れたように両手を顔の横でひらひらとはためかせ、降参の態度を表した。
「短気は損よ。ちょっとお喋りしたかっただけじゃない」
そう言って、雲雀の肩越しにこちらへ向かって来る人物を見つけると、そちらへ手を振り合図する。
「それに、今日は上司の命令で付き人の真似事をさせられてるの」
雲雀は不審げに振り返り、そして微かに目を見開きその人物を凝視した。
「結鶴…」
軍服姿の黒髪の少年は、雲雀の姿に気付くと驚いたように一瞬歩みを止めた。しかしすぐにまた歩き始め、雲雀の前で立ち止まると、小さく会釈した。




