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第三章 その17 暗闇の激闘

 フィズは暗闇の中を気配探知を頼りにカオナシの後を追う。


 敵も大したもので、この暗い洞窟の中をかなりの速度で移動している。


 下手に転べば怪我をしそうな、凸凹の地面を進んでいくと突然カオナシの気配が消えた。


 待ち伏せされているのは明らかだが、冷静さを欠いているフィズは臆する事無くカオナシの気配が消えた場所まで歩を進める。


 そこでフィズは動きを止め、カオナシの気配を探知すべく意識を集中して神経を研ぎ澄ます。


 やがて完全な闇の中に静寂が加わり辺りを支配していった。

 本当に二人の人間が存在するのかと思えるほどの静けさが訪れる。


 無音ではあるが、同時に何かが起こればたちまち暴発しそうな緊張感がフィズの周囲に漂い始めた。

 フィズは視覚以外の感覚を最大限にまで引き上げていく。


 刹那、フィズが闇の中の一点に向けて拳を突き出した。

 すると数瞬遅れて、何者かの声が上がったのである。


「ぐわっ!」


 それはカオナシの発した声だった。

 ジェンやビッグスパイダーに対して使った遠隔攻撃をカオナシに使用したのだ。

 気配を探って相手を捉え、能力による攻撃を当てたのである。


 フィズの能力は〈衝撃操作〉という能力だ。

 彼女が能力を使用するとその能力を放った直線上の対象に衝撃を与える事ができる。

 ただしフィズは、異能力の扱いが未熟でまだ上手く使用できない。なので、攻撃の威力は感情などにも左右されてしまい、非常に不安定なものだった。


「くそ、忌々しい」


 感知能力でカオナシの状況を捉えて離さない。

 フィズの攻撃がいきなり当たり、カオナシは動揺している様子を感じさせる。

 視界を闇で覆われた所為で感覚が研ぎ澄まされたフィズには、実際に目で見る以上に相手の状態が分かるようになっていた。


 カオナシが何かを投擲したのを察知し、立っていた場所を移動する。

 フィズの数瞬前まで立っていた場所を投擲された物が通り過ぎていくのが分かった。

 投擲具はやがて背後の壁にぶつかって地面に落ちる音が鳴る。


 そのタイミングでカオナシは動き出していた……のだが、その移動中の横っ面にまたしても衝撃が飛んできて命中したのである。


「うっ、ぐうっ」


 声のあった方向に向かいさらに衝撃を飛ばすフィズ。


「ぐわぁ!」


 カオナシの声と何かが倒れる様な音がした。

 それはフィズの感覚と照らし合わせても間違いなく相手が倒れたというのが解るものだった。


 フィズがそれを好機到来とみて一気に距離を詰める。


「今度こそ終わりだぞ!」


 そう叫んで最大威力の衝撃をカオナシにぶつけようとした瞬間――


「ま、待ってくれ、フィズ……」


 闇の中から聞こえてきたのはイーガーの声だったのである。


 いるはずがないのはわかっていても、思わずその聞こえた声に反応してしまう。


「助けてくれえ……」


「俺たちゃあ、仲間じゃねえですかい……」


「ここまで、育ててやっただろ……」


 さらにガルテオの、シューマの、イーガーの声が突如闇の中で木霊し始めたのだ。

 あちこちで聞こえるその声に、いつしかフィズはカオナシの気配を感知できなくなっていた。


 故にそれは致命的な隙へと繋がってしまう。

 暗闇の中を飛来した投擲具がフィズの手足に突き刺さったのだ。


「うあああぁっ!」


 幾重もの攻撃が直撃した事に加え、太もも付近に刺さった投擲具の影響で跪いてしまう。

 しかも三人の声は相変わらず周囲に響き渡っており、カオナシの気配は消えたままだ。


「うぅっ……お前なんかには、絶対に負けないぞっ!!」


 それでもフィズは逆転のチャンスを狙う。


 しかし、そんな彼女を嘲笑うかの様に飛翔した投擲具が今度はフィズの左肩付近に突き刺さった。


「ああああああっ!」


 フィズはとうとう痛みに耐えきれず悲鳴を上げ、派手に大きく動くという完全な隙を見せた。


 当然カオナシほどの暗殺者がその隙を逃すはずもない。

 大声を上げる彼女の背後にあっという間に移動する。


 フィズの背後から、粛々と無慈悲にカオナシの手にある短剣が振るわれ――たかに見えた瞬間、短剣はそのまま力なく洞窟の地面へと落ちていき、無機質な金属の音を洞窟内へと響かせた。


 カオナシはピクリとも動かない。いや動けなくなったという方が正しいだろう。


 そうなった理由はフィズの能力によるものだ。

 彼女の発した大声、音による衝撃がカオナシを襲ったのである。


 相手が声色を駆使して幻惑してきたのをヒントに、フィズが咄嗟に思いついた一か八かの賭けだった。

 隙を見せれば必ず背後からトドメの一撃を狙うと見越して張った博打技。


 洞窟内の反響を利用して増幅した衝撃を見事にカオナシに叩き込んだのである。


「チッ、まさか……こんなガキに、足をすくわれる、たあな……」


 カオナシは口元から血を吐きながら、そう言い残してその場に膝から崩れ落ちる。

 そんな彼の耳にフィズの声が届く。


「まだ、終わりじゃないぞ――」


 次の瞬間、フィズの拳がカオナシの顔面を直撃し、彼の頭部内を凄まじい衝撃が走り抜けていった。


「ガハッ!」


 完全に動きが止まり、致命的な隙を見せたカオナシに対し、フィズは更なる追撃を加える。

 ガードする事も出来ずに殴り倒され地面に頭を打ち付けたカオナシは、そのまま意識を失ったのだった。



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