お出掛け計画…壱
「リンコ…!?」
私の姿を見て驚愕しているラファルはさておき、楽しい楽しいお出掛け計画を始める事にする。
先ずは某遊園地だが…繁盛していたのに何故か取り壊しが決定してしまい、そして無くなってしまっていた。
ちょっとロッカールームだか何だかに機関銃等が置いてあったらしい。真新しい血痕があったらしい。トッテモフシギダワァ。
ラファルが一万円掛けたのに取れそうで取れないUFOキャッチャーの景品のゲーム機を見るかのように熱く憎々しい感じの視線を私に向けているのが辛い。
クオリが私を視姦をしてるラファルに向けて、大粒のジャガ芋を投げつけた。
焼いても茹でてもいない素の素材はとても堅く美味しそう…いや、頗る痛そうな音を立ててラファルにぶつかった。
あらあら気絶した。
貧弱貧弱ゥ!
「リンコ、キャラぶれてる!」
仕方ないのよ、そういうお年頃なんだから。
「あのね、あのね、リンコも、ここに乗って!ぼく、ふたりのり出来るよっ!」
「クオリ君……その馬は2人乗り駄目なんだよ」
「えー!ほんものの馬なら、良かったのに」
本物の馬に棒が貫通してる上に電気によりずるずる動いてるとかどんなホラーなのよ。
えー…只今私達はキャットランドに遊びに来ています。
ラットランド?キャットランドに叩かれまくった所為で無くなっちゃったんだよね。
という訳で、同じ規模の遊園地…キャットランドに行くことと相成ったのだ。
クオリの強い希望があったとはいえ、集団で遊びに行くなら遊園地は定番だろう。
子猫と子犬の2人は今だけ人間に見えるように魔術を掛けてある。
びくびくしながらも目は爛々と輝いている辺り、楽しんではいるみたいだ。
上下に動く馬に立って廻るクオリをポカーンと見つめる従業員。
夥しい量の鳥を引き連れて歩くシザリオン。
高速移動しつつカメラで私を撮りまくるヴァーデ。
浮いてる…めっちゃ浮いてる…
とりあえず私は、側にあったフードコーナーに乗り込んだ。
「リンコーっ」
猫型の風船を持ったクオリがスキップするような動作で光速で飛びついてきた事により、私の愛しのスイートポテトちゃんが宙に舞った。
落としてなるものか!
手はジュースと他の食べ物を持っていた為に、宙に浮いていたスイートポテトを口でキャッチした。
「子リスみたいでかわいー!」
専属カメラマンですかと問いたくなる程にその私の食い意地の汚い所を撮りまくるヴァーデ。
その写真をこれと交換しようと持ちかけるクオリ。
それ何時撮った写真…?
考えると身の毛が弥立つので、美味しい食物に全思考を持っていっておいた。うん、美味しいは正義だよね!日本の食文化万歳!
クオリの強いお勧めにより、白イルカのショーを見る事になった。
「あのね、ぼく、あのイルカさん欲しい」
「な、なんであるかその網は!」
「そんな虫取り網じゃ無謀よ!」
いつの間にかクオリの手に握られていた虫取り網(通常サイズ)を見て、やんややんやと騒ぐシザリオンとヴァーデの2人。
ラファルが小さく「あれは美味しいのだろうか」と呟いていたのが聞こえてきた。
確かにちょっと美味しそうだよね、イルカって。
クジラ肉は食べた事あるけど、イルカは食べた事ないのよね。
「リンコ…なにやら肉食獣のような目になっているのであるが…」
「あらあらリンコ。イルカ怯えてるわよ」
「ぼくの方が、絶対おいしい!ぼくをたべて!」
「クオリ様の愛は強く激しいですね。俺…死んだ後はリンコ様に食べられたいな…」
シザリオンとヴァーデに言われて、そういえばイルカがやけに暴れているなと涎を拭いた。
クオリとリジェロの愛が怖いよ。
カニバるのもうやだよ。
「あれはなんですか?」
「お化け屋敷」
「おばけやしき…とはなんでしょうかリンコ様」
ひゅ~どろどろどろ
そんならしいBGMと女性の金切り声がする屋敷を指差して、リジェロがそう言った。
「女性が怖がるフリして攻略対象に抱き付いて可愛さアピールする場所よ。主にリア充で溢れているわ」
おいおいおい、元も子もない言い方するねヴァーデさんは。
「りあじゅう…?」
ラファルが妙な所に食い付いた。
まあ現代の人しか判然らないような単語かもしれないね、その単語は。
ヴァーデが握り拳を作って力説した。
「頭良くて高学歴な上に外見まで良かったり、彼女が居て脳味噌花畑状態(幸せ)だったりする事よ!」
いや、間違ってはいないけどもその言い方はどうよチュロスうめぇ。
「なる程…」
王子は 変な知識 を手に入れた!▼
「くらいねー」
きょろきょろするクオリ。
今はお化け屋敷の中にクオリと2人で居たりする凛子さんです。
2人組で入ってみようと言い出したヴァーデさんでしたが、誰が私と入るのか当たり前だけどもめにもめた。
まあ…男2人で入るとか何の罰ゲームだよ状態だもんな。
でも異様にじゃんけんの強いクオリの圧勝だった。
私初めてだわ…あんなにプレッシャーに溢れたじゃんけんは…
そしてあんなに悲しいじゃんけんは…
ぐいっと手を引っ張られ、そっと抱き寄せられた。
抱き寄せてきたクオリを見ると、妖しい笑みをして「ぼく以外の男の事を考えるなんて、余裕だねぇ?」と低く囁いた。
ガチッと固まった私を放置し、クオリはやけに愉しげに生首のオブジェやら仕掛けの出来を評価していった。
まるで某ファッション評論家のような辛口での採点は、的確過ぎて耳に痛かった。
別に私が作ったアトラクションでもないけどさ。
というかクオリの言った通りにしちゃうと失禁する人が増えるんじゃ…
特に本物の廃墟と見紛うような内装とかガチですな。
「リンコ、余裕すぎて、つまらない。ぼく、リンコ抱きつくの、すっごく期待してた」
だから自分が抱きついちゃえーとか言ってぎゅうぎゅうされたまま、お化け屋敷の出口から出た。
やめて。
従業員さんそんな微笑ましい目で見ないで。
「ふふっ…見せつけちゃおうか?」
し、舌なめずり止めろーー!
可愛さが君の売りだろクオリ!
「んー?恥ずかしいの?かーわいっ」
うあぁぁぁぁぁ!うおぉぉぉおおお!
クオリ君による羞恥プレイは、ヴァーデ&ラファルのペアが来るまで続けられた。
結局クオリ君以外のみんながげっそりした顔になった。
「よし、みんなどんなお土産買った?」
帰宅後、それぞれ別れて適当に買ったお土産を並べてみる事にした。
先ずは私から。
「猫クッキー、猫キャンディ、猫マシュマロ、猫チョコ、猫ポップコーン、猫サブレ、猫まんじゅう、猫チーズスフレ、猫………食べ物のみであるな」
「猫ケーキ、猫ナゲットまであるわね」
「リンコったら、食いしんぼさん!」
「流石リンコ様!無駄のないお買い物です!」
「食い気すごいな…か、かわ、いや、少しは可愛げあるものを買え!」
お土産って、食べ物以外に買うものあるの?
まあ、私のは置いといて、次はラファルのを出してもらった。
「猫ペンライト?可愛いの買ったね」
「猫うちわ、猫ノート、猫キャンディ…おお!キャンディが被ったのである!」
「あら?これ動く猫ぬいぐるみじゃない」
「動くのが気になったからついな…」
「ぼく欲しい!ぬいぐるみ、ぼく好き!」
「……ぬいぐるみ…ぷっ…」
「言いたい事あるなら言え!喧嘩なら買ってやるぞリジェロ!」
「か・わ・い・いなぁーと、そう思っただけだよ王子さま」
2人がガチバトルの為に離脱した。
見た目は仔犬と仔猫の喧嘩なのに、宙に舞ったり格闘家も真っ青な動きをしたりと凄かった。…が、この家では珍しくともなんともないので無視をする。
「次はシザリオンかな。シザリオンは…ナニコレ」
「猫モアイ像なのである」
「あのね、とても可愛くないよ、これ」
「モアイてあんた…」
シザリオンはモアイ像しか買っていなかった。何故だ。何故これを買った。
無駄にでかいし、ビジュアルがモアイ像に猫耳生えてるだけだからキモイしで、それは魔除けとして玄関に飾る事にした。
クオリ?あれは魔物とかそういう類じゃないよ。闇その物だと思うの。
次はヴァーデさんのを出していただいた。
「凄くいっぱいあるね」
「つい気になるものを衝動買いしちゃったのよね~」
「ペンライトをダースで買ってどうするの?馬鹿なの?」
「なんですって!?」
「やーいお馬鹿なヴィヴァルディちゃーん!」
「きぃぃぃいー!!」
「ああ…行ってしまったのである…」
ガチンコバトルをする4人を眺めつつ、リジェロのお土産を探ってみた。
「何だろうこれ」
「我が輩もよく判然らないのであるが…恐らくまんじゅう、的な?」
「でもツルツルしてるし硬いし重いけど」
「柔らかそうな外見を裏切る感じであるな!」
リジェロのは謎の物体しか見つからなかった。
という訳で、最後のクオリのを広げて置いて行く。
「安定のぬいぐるみ群」
「もふもふでいっぱいであるな」
ギャップのあるような物を買ってるのでは!なんて思ったけど、最後までもふもふだった。
「このもふもふの内の1匹は、お留守番していた私が貰っておきます!」
クオリのもふもふがカケル君の手に渡った。
「ああー!ぼくのみっきー!」
もう既に名前を付けていただと!?