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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第一章 ようこそ! 女体研究同好会へ
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新たなる犠牲者?

 ディスプレイを覗いていると、画面に女生徒の姿が写る。その女生徒はそれなりに身長が高く、髪を茶色に染めている。長く伸びた後ろ髪を髪留めで纏めて、ポニーテールにしている。瞳は切れ長で、凛々しいという言葉が似合う雰囲気を纏っている。ブレザーのリボンの色が緑なので、自分と同じ新入生である。条件的には申し分ないのだが……。


「おい、女だぞ。引っかかるとは思えないが?」


「黙って下さい。健吾は私の命令通りにしていればいいのです」


 まぁ、こんな事を言われるとは予想していたけど、思ったより酷い。とにかく、相手に悟られないように口を噤み、ディスプレイに集中する。

 その様子はまるで盗撮のようで、(実際に盗撮です)何となく胸がドキドキする。まさか、盗撮して興奮しているとでも言うのだろうか。まさか……そんな事……あり得ない。


 女生徒の行動を観察していると、有無を言わさず写真集の近くまで歩み寄り、素通り……する事無く、バッチリ写真集を手に取りガン見している。

 他人の事とはいえ、こういう姿は何となく切なくなる。しかも、こんな姿を自分はしていたのかと思うと、もう首でも吊りたい気分になってくる。だが、本人の凛とした様子は、実にいい顔である。何も知らないという事は幸せなのだと、つくづく思う。

 それでも、命令は絶対厳守。心の中で謝罪しながら、デジカメのシャッターを押す。

 しかし、シャッター音はしない。失敗したのかと思って、もう一度シャッターを押す。

 やはり、音は鳴らない。ディスプレイに表示された残りメモリが減っているので、間違いなく撮れている筈である。


 先程の発言の件で誠に言うべき事があり、相手を睨む。だが、肝心の相手はまるでこちらに関心は無いようで、完璧に無視された。

 女生徒は写真集を一通り読み終えて、まだ満足しないのかもう一度最初から読み直す。何時まで経っても動こうとしない様子を感じ取ったのか、誠が動き出す。


「どうも、随分と楽しそうに読んでいますね」


 誠はフランクに話しかける。だが、女生徒は無視するかのごとく、写真集から視線を外す事は無い。まるで動じる様子が無いので、健吾も茂みから姿を現す。デジカメを手にしているというのに、全く気にしていない。


「ええ。このグラビア、中々いいわね。全体的に質は悪いみたいだけど、所々に光るものがある娘がいるのがいいわ」


 何か動じるどころか、写真集に対する感想を口にする始末。この女生徒中々に図太い。


「結構分かっていますね。この娘なんかも少し成長すれば最高じゃないですか?」


「あなたも分かってるじゃない。中々に出来るわね」


 誠と女生徒は意気投合しながら、グラビア写真を眺め合っている。そして、お互いのセンスを認め合っている。あの誠が人を褒めている姿は初めて見るかも知れない。それとも、自分だけ相当酷い扱いを受けているのではないだろうか。

 健吾はデジカメを持ったまま、二人のやり取りを眺めていた。完全に別世界の住人となった二人の話が終わるのを、ひたすらに待つことにした。

 二人の談笑は終わる事無く、太陽はさらに傾き、空は夕焼けによって真っ赤になっていた。そんな空を眺めながら明日は晴れるんだろうなと、どうでもいい事を考えていた。

 そのうち、二人の話題は健吾に移っていく。


「それで? そちらの方は何をやっているのかしら」


 女生徒は何かに気付いたように、健吾の事を誠に訊ねる。うん。分かってる。自分が十分に不審者だって事は。デジカメを片手に、二人の談笑にずっと耳を傾けていたんだ。変態だ、変質者だって呼ばれる事も覚悟している。


「ああ、彼は古代 健吾。こんな酷い顔をしていますが、人畜無害な私の助手です」


 さらっと酷い事を言われたはずなのに、人畜無害と言われて少し嬉しがっている自分がいた。もっとキツイ毒を吐かれると思っていたのに。


「へぇ、助手ねぇ? 校内でデジカメを持ち歩かない方がいいわよ。何時変質者呼ばわりされるか分からないわ」


 至極真っ当な常識的助言に反論の余地も無い。一見、自分に対して好意的な意見を言っているように見えたが、自分と目が合ったとき少し表情が硬くなったのを見逃さなかった。女性からそういった仕打ちを受けると、自分の厳つさを理解していても流石に辛いものがあった。


「そうだな。オレもそう思うぜ」


 自分の行動を棚に上げて、とりあえず同意しておく。このカメラにお前の姿が……なんて事を言おうものなら、この和やかな雰囲気が壊れてしまいそうなので、ここは誠に任せる事にした。


「あなたのデジカメ、見せてもらってもいいかしら? どんな写真を取っていたのか、興味があるの」


 凄く自然にメモリの確認を要求されてしまう。

 これは非常に困った事態である。もし、相手の気分を害すれば、入会する可能性は極端に減ってしまう。何とか言い訳を考えなくてはいけない。


「それは止めておいた方がいいですよ。彼は見た目通り、かなりマニアックな嗜好の持ち主です。場合によっては酷いトラウマを抱えるような事になりかねませんから……」


 誠の言葉に、女生徒は手を引いてデジカメから視線を外す。

 デジカメの中身は確認されなかったが、それ以上に酷い毒を吐かれた。もう少しこっちを思いやった言い訳を言ってもらいたかった。


「なぁ、先輩。そろそろ本題に入っていいんじゃないのか? これ以上遅くなると、強制下校時刻になるぜ」


 これ以上深い傷を負わないうちに、何とか話を終わらせたい一心であった。入会の意思があればよし、なければ説得する必要がある。折角の獲物をみすみす逃すつもりは無い。


「そうですね。君にお願いがあるのです。私の名前は鬼瓦 誠。女体研究同好会の会長で、今会員を集めているのです。どうですか、入ってみませんか?」


 誠の言葉に、女生徒は少し考えるような仕草をする。その次に、誠に顔を寄せてまじまじと眺める。

 誠の顔に穴が開くんじゃないか無いかと思う程、見つめている。流石の誠も少々うろたえている様で、外見に似合った気弱ぶりを発揮してくれる。いつもがこうなら、付き合いやすくもあるんだが……。


「ふーん……、いいわよ。女体研究同好会なんて、何か面白そうね。私の趣味にもあってそうだし……」


 女生徒は舌で唇を舐める。その仕草が妙に色っぽい。何となくいけない気持ちを抱いてしまいそうだった。


「本当ですか? 中々会員が集まらなくて困っていたのです。本当にありがとうございます」


 誠は仰々しく頭を下げる。自分が協力した時はそんな事してくれなかったのに、なんだろうかこの扱いの差は。

 やはり、男女の違いというものか。女のような顔をしていても、やはり男なんだと認識させられる。


「オレは正式な会員って訳じゃないけど、宜しくな」


 笑顔を作って握手をするために手を差し出すが、露骨に嫌そうな顔をされてしまう。確かに初対面の男性と握手というのは、相手にとってはキツイものがあるのかもしれない。それでも、そんな嫌そうな顔をしなくてもいいのに。


「あ、ええと。私は高嶺たかね 友里ゆりと申しますわ。これからよろしくお願いしますね」


 友里は凛とした笑顔をつくると、丁寧にお辞儀をする。結局、差し出した右手は放置されたままだった。

 これでようやく一人。期限の六月でまだ一ヶ月以上ある。このペースなら楽勝で会員は揃う事だろう。誠の魔の手から逃れるため、何としても後三人、集める必要がある。


「なぁ、もう遅いし、詳しい話は明日にしないか?」


 二人は今にも雑談を始めそうな勢いがあったので、先手を打って釘を刺す。その意見に異論がなかったのか、特に反論はなかった。

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