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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第二章 揉め事
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部長、怒る

 笑顔で現れた友里は、メイド服を身に纏っている。メイド喫茶などで使われるなんちゃってメイド服ではない、長いスカートに、エプロンドレス。いずれもしっかりとした素材、作りで華々しさこそ無いものの、実に機能的であった。背の高い友里にも似合っている。

 頭にはヘッドキャップも被っており、本格的である。


 こんなものを着込んでいては、時間がかかるのも頷ける。慣れていれば兎も角、初めて着たのでは大変だったであろう。

 全員の視線が友里に集中する。特に不良の遠慮の無い視線が、彼女の体を嘗め回していた。その様子に、心なしか友里の表情が強張る。あんな視線を向けられては、女性なら当然だ。


「ヒュー! メイドさんじゃねぇか! いいねぇ、いいねぇ!」


「メイドスタイルでお出ましかよ! 一体、どんなご奉仕してくれんだよ! ギャハハハハハハハ!」


 下卑た笑いが会室に響き渡る。薄笑いを浮かべた二人は友里に近寄ってきて、間近でその姿を見回す。


「あ、あの、ちょっと距離が近すぎますよ……」


 遠慮がちに友里は言うが、そんな言葉ではその二人がいう事を聞くはずが無い。徐々に近づき、そして不良の手が肩に触れる。


「イヤッ!」


 友里は少し取り乱したように、不良から距離を取る。その仕草は二人の劣情を誘い、二人の行為はエスカレートしていく。

 あまりに不快だったので、友里から視線を逸らし誠に視線を向ける。そこには、何かを堪えているような誠の姿があった。恐らく、会員を逃したくないという気持ちが強くて、注意したくとも注意できないという状態に陥っているのだろう。


 ここは自分がどうこうできる場面じゃない。誠が決めなくてはいけない事だ。健吾は誠を眺めながら、次の言葉を待つことしか出来ない。

 誠が何も言わない間に、不良共の行為はエスカレートしていく。二人は友里を壁際に追い詰めて、逃げられないようにしている。そして、体に触れるか触れないかの距離で、匂いをかいだり、臭い息吐いたりしている。もう、やりたい放題だった。


「へへへ……、もう我慢できねぇ!」


 そう言って、不良の一人が友里の腕を掴む。途端に、友里は体を強張らせて、大きな悲鳴を上げる。


「イヤァァァァァ!」


 その尋常ではない叫びに、不良の二人だけではなく、健吾、誠もビクッと体を跳ねる。ちょっと触れただけとはいえないレベルの悲鳴に、誠の瞳が決意で染まる。


「止めろ!」


 今まで、丁寧な言葉しか口にしなかった誠の口から、初めて苛烈な言葉が出た。それに驚いたのは健吾だった。初めて聞くその言葉は、力強くまるで別人の発言のようだった。


「君達のような人はこの同好会には必要ない! 彼女から離れて、とっとと出て行け!」


 怯えている友里に興味を失ったのか、生意気な誠が気に入らないのか、誠の方へと二人は近づいてくる。


「あ? うっせーんだよ! てめぇには関係ねーだろ!」


「そうだぜ? 別にこんな同好会に入るつもりもなかったし、楽しめればオッケーだった

のによぉ、水差しやがって」


 不良の手が誠に迫り、その襟首を掴む寸前となって急にその手が止まる。


「会長の声が聞こえなかったのか?」


 不良のその手を健吾が掴む。その顔は怒りで歪んでいる。

 会長のお許しが出た訳だし、こいつらは会員となる可能性の欠片も無い。遠慮する必要など微塵も無い。


「な、何だよてめぇ、手を離せよ! 用事があるのはてめぇじゃねぇ!」


 手をつかまれた不良は、強気に出ようとするが、健吾の怒りの表情を目の前にして怖気づいてしまっている。


「お前こそ、会長の言葉が聞こえなかったのか? 出て行けって言われたろ? 会長は貴様なんぞと喋る口を持たないって言ってんだよっ!」


 健吾は握る手に力を込める。すると、不良の顔が痛みに歪む。

 まださほど力を入れていないというのに、たいした根性も無い奴だ。


「ああ、お前は上品な日本語が理解できないんだな。仕方が無いなぁ。貴様にも分かるように、訳してやるよ。とっとと出て行け、ド低脳!」


 中山田高校は本来偏差値の高い公立高校である。だが、昨今の少子化のにより定員割れが発生して、二次募集を行った。その際に、こういった輩が潜りこんで来たのだ。


 健吾が怒りの形相で不良を睨むと、途端に怯えた顔へと変貌し、腕を掴まれていない不良は一目散に逃げ出した。腕を掴まれた方も、逃げ出そうと必死に抵抗するが、健吾の握力から逃れる事は出来ない。


 その無様な姿を見て、少し胸がスッとした健吾は手を離してやると、不良は尻餅をついてしまう。そして、逃げるように会室から出て行く。


「覚えてろよ、てめぇ! 絶対に仕返ししてやるからな!」


 清々しい程の負け犬台詞に、今までの不快な気分が晴れ渡っていった。やっぱり人間、我慢はよくない。最近は我慢の連続でこんなに胸が晴れた事はなかった。

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