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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第二章 揉め事
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友里の秘密

「あ、ありがとうございます」


 誠はキョトンとした顔で、健吾を見やる。まるで、助けてくれるとは思わなかったと言っているようだった。

「別にお前の為じゃねーよ。オレが気に入らなかったからやった。それだけだ」

 事実、その通りだ。ああいう腐った連中は大嫌いで、本当はぶん殴ってやりたいぐらいだった。

 姿勢を正して、正面を向くと誠の顔が近くにあった。何故か誠は顔を真っ赤にしていた。恐らく、先程の不良共が恐かったのだろう。

 その時、ふとある事に気付いた。


「先輩、今気付いたんだが、あんたもしかして……」


「は、はい?」


 妙にドギマギしている誠に顔を近づけて、じっと見つめる。間違いない。


「伊達メガネか? 近くで見て気付いたが、全然屈折してねぇな」


 誠の瞳を覆う丸いメガネを通しても、顔の輪郭が全くずれていない。どう見ても、度の入っていない伊達メガネである。


「そ、そんな事はありません。度は低いですが入っているんです」


 今度は怒った様子で、誠は距離を取る。もし、その通りだとしても、そんなに度が低いのなら外せばいいのと思う。誠のような容姿なら、女子に人気が出るだろう。それとも、メガネの方がもてるのだろうか。

 とにかく、これ以上何か言うといつもの如く、胃壁が荒れるだけかもしれない。


「まぁ、そんな事はどうでもいいや、先輩は友里を介抱してやれよ。オレのことは苦手っぽいから、先輩が適任だろ?」


「そうですね。彼女の様子はただ事ではありませんでした」


 誠はそう言うと、急いで友里の下へと駆け寄る。健吾は遠くからその様子を見ているが、壁際でしゃがんで、体を抱きながら小刻みに振るえている様子はやはり尋常ではない。確かに恐怖を覚えるには十分ではあったが、それ以上に怯えている。

 駆け寄った誠が彼女を宥めている。今は誠に任せておいたほうが良さそうなので、健吾は遠くから眺める事に徹する。


 それにしても、面倒な事になった。同好会の名前から、ああいう輩が寄って来るんじゃないかと思っていたが、本当に現れると性質が悪い。今回の件はこれで終わって欲しいが、恐らくこれでは終わらないだろう。何かしら対策が必要だ。



 暫くして、落ち着いたのか友里と誠が一緒に席へと戻ってくる。健吾は一足先に着席して、先程不良たちが投げ捨てた写真集に目を通していた。


「もう、大丈夫か?」


「ええ、ごめんなさい。ちょっと取り乱してしまったわね」


 そう言うものの、友里の顔色はまだ青ざめており、本調子という感じでもない。普段から明るく、凛としているだけに、余計にそう感じる。


「私はもう少し休んでいた方がいいと、言ったのですが……」


 誠も流石に不安そうであった。この、鉄面皮もこんな顔が出来るのかと、少々意外に思ってしまうのは、不謹慎なのだろうか。


「いえいえ、これ以上皆さんに心配かけるわけにはいきませんから」


 元気を装っているが、やはりいつもののりではない。まぁ、あんな事があった後では仕方が無い。


「友里がそう言うならいいが、あんま無理すんなよ」


 健吾がぶっきらぼうに言うと、誠とあろう事か友里まで意外そうに健吾の顔を見つめてくる。それほどまでに他人の心配をするのが意外だったのだろうか、非常に心外である。これでも、心優しい男を目指しているというのに。


「そ、そうですよ。今日はもう帰ってもいいですから」


 誠は何故か、慌ててフォローを入れる。何も間違った事を言っていないはずなのに、どうしてそんな事をされているのだろうか。


「そうね。それもいいけど、これから一緒に活動するなら、知っておいて欲しい事があるから、ちょっと話をしてもいいかしら?」


 友里は無理に微笑みながら二人に確認する。予想するでもなく、先程取り乱した理由であろう。そう思って、黙って頷いた。誠も同様の事を考えていたのか、頷いていた。


「ごめんなさい、気を使わせてしまって。それじゃあ、少し語らせてもらうわ」


 友里は何度か深呼吸して、心を落ち着かせているようであった。向こうの準備が出来るまで、黙って注目していた。

 落ち着いてきたのか、友里はゆっくりと語り始めた。


「二人も気付いたと思うけど、私は男性が苦手なの。今でこそ女性好きとして目覚めのだけれど、当初はただ男性が嫌いというだけで、女性に対して特別な思いを抱く事はなかったわ。小さい頃、小学生ぐらいだったと思ったけど、実の父親に性的な悪戯をされてね、それ以来、男性が苦手で近づくだけで体が強張ってしまうのよ」


 思っていたより重い話だった。というより、そんな話を聞いてしまってよかったのだろうか。正直、何とコメントしていいのか、分からない。特に男性である自分が何を言っても慰めにはならない。

 誠も健吾と同様、何も言えずに視線を伏せていた。


「ちょっ、ちょっと! 何でそんなに暗くなってんのよ。性的な行為って言っても、挿入された訳じゃないから、まだ処女よ? 手遅れじゃないから!」


 そういう問題じゃないんだが、女性にとってはやはりそこが重要なのだろうか。そんな想像をそそるような事を言うもんだから、誠は顔を赤くして俯いている。


「あ、あれ? ちょっと、この空気どうにかしてよ。まるで私が滑ってるみたいじゃないのよ、もう!」


 友里は照れながら誠の肩をバシバシと叩いている。いや、完全に滑ってるんですよ。もう、フォローが出来ないほどに。


「ま、まぁ、それで男が苦手だった訳だな。友里ならアレくらいの不良なら、退治できると思っていたんだが、そんな理由があったんだな」


 深い事には触れないようにしながら、自分なりの感想を口にする。以前、運動部に所属していたという事実に、一〇〇メートルの驚異的なタイムからかなりの戦闘力が期待できたが、男に対しては振るえないようだ。


「そ、そうですね。確か運動は結構出来たはずですよね」


 誠はすがるように健吾の話に食いついてきた。普段から写真集とかを見ている割に、猥談が苦手のようだ。やはり、そういう方面に関しては純粋なのだろうか。


「そんな訳で、私を男性から守ってくれると嬉しいわね。特に、会長さんは頼りにしているわ。健吾くんは遠くで会長を守ってくださいね」


 やはりというか、何と言うか、誠の方が頼りにされている。直接不良を追っ払ったのは健吾の活躍なのだが、友里の境遇を考えると致し方ない。


「へい、へい。適度に守らせてもらいますよ。話はこれで終わりだよな。今日はもう帰った方がいいんじゃないのか? 後片付けはこっちでやっておくぜ」

 誠も同じ意見なのか、反論する事もなく頷いている。


「そう? なら、帰らせてもらうわ。平静を装ってるけど、実は足がガクガクしてるのよね」


 友里は力なく微笑むとよろよろと立ち上がり、会室から出て行った。本当に大丈夫だろうかと心配になるが、友里の他には男しかいない。友里を支えるにしても、男では逆効果だ。ここは彼女に頑張ってもらうしかない。


「しかし、驚いたな。明るい友里にあんな過去があるなんて、分からんもんだよなぁ」


 健吾は先程まで読んでいた写真集を本棚へと返す。いつまで経っても誠は返事をしない。どうしたのかと、誠を見やると俯いていてまるで健吾の話を聞いていなかった。あんな重い話を聞いた後では、ちょっと気が滅入るのも分かる気がする。ここはそっとしておくべきだろう。


 それから、十数分後友里が制服姿で戻ってくる。服を畳む余裕がなかったのか、クシャクシャのメイド服を置いて帰っていった。

 誠はそのメイド服を丁寧に畳んでいた。その後、二人は特に会話を交わさないうちに強制下校時刻となった。

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