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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第二章 揉め事
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見学希望者

「へぇ、先輩もやるねぇ。それで、その希望者はまだ来てないのか?」


「ええ、普段からあまり時間を守らない人のようでしたから……」


 誠の表情が少し曇ったところから、その人物がどういう輩か想像がついた。普段から学校の方針に反逆しているトリーズナーだ。一般世間では不良とか、ヤンキーとか呼ばれたりしている。最近ではDQNという呼び方も増えているようだ。


「まぁ、会員を集めるためだから、我慢も必要だな」


 辺りを見回して、友里の姿が無いのもその見学者が影響しているのだろう。友里は男らしい男は苦手そうだしな。


「別にそんな意味で言ったわけではありません」


 誠の切り返しにいつものようなキレが無い、流石に不安なのだろうか。相手がこうだと今一張り合いが無い。胃壁にも優しいのでいつもこの調子でいてもらいたいものである。

 健吾も席に座って、見学希望者が来るのを待つ。目の前では誠が写真集に目を落として、ずっと黙っている。そういえば、こうして暇になるのも久しぶりだ。大抵、誠の言葉に翻弄されて、胃壁の心配ばかりしていた。何となく、教室で利明が言っていた言葉の意味が分かった。

 暫く待つこと、十数分。ようやく、会室の扉が開いた。


「すっげー! マジかよ! ウケルぜ」


「噂は本当だったんだな! おい、あいつエロ本見てるぜ!」


 入ってきた見学者は二人、頭の悪そうな会話を繰り広げている。絵に描いたような不良共に、健吾は頭痛を感じ始めた。未だにこんな奴らがいる事が逆に新鮮だった。


「ほら、先輩。見学者にご指導ご鞭撻を」


 うろたえる誠を促す。健吾にとっては、ただの笑える連中だが、気弱そうな誠には効果絶大な様子で怯えているようにも見える。何となく罪悪感を覚えるが、自分が逃れる為なのであえて手は出さない。

 誠は読んでいた写真集を机に置くと、立ち上がり自己紹介を始める。


「ようこそ、女体研究同好会へ。私は会長の鬼瓦 誠です。今日はよろしくお願いします」


 あんな不良相手にも誠は頭を下げて挨拶する。誠の心境は分からないがこれが健吾なら「ゲット アウト ヒア!」の一言で済ますことであろう。


「まことちゃんね。よろしく、まことちゃん。ギャハハハハハハ!」


「なー、あっちでこっちを睨んでる奴がいるんだけど、あいつの紹介は?」


 不良の一人が健吾を指差してくる。

 母親に人を指差すなと、教えられなかったのだろうか。あまりの不快さに、自然と眉間に皺が寄って来る。


「ひっ!」


 指差していた不良は、怯えたような声を出して、その指を引っ込める。こういう時には自分の顔が便利だと思ってしまうが、それは駄目な考えだ。


「アレは、正式な会員では無いですが、協力してもらっています。古代 健吾、君達を同じ一年生ですよ」


 誠がこちらに視線を向ける。その目は余計な事をするなと、言っていた。弱みを握られているので、一応微笑んでみる。すると、不良の二人はあからさまに目を逸らした。失礼な連中だ。


「あの本棚の本、読んでもいいっすかぁ?」


「俺達も興味あるんすよぉ」


 不良はニタニタといやらしい笑みを浮かべながら、誠に訊ねる。先程から健吾に視線を向けない所を見ると、不良達は健吾をいないものとして扱っているようだ。


「ええ。構いませんよ。ですが、取り扱いには丁寧にお願いします」


 誠が言葉を終える前に、二人は写真集を乱暴に引き抜くとその場で読み始める。


「うわっ! エロっ! こんなのが学校にあっていいのかよ! マジエロイ!」


「マジだ! すっげー乳。あ、俺、勃起してきた」


 不良の片方はその場で股間を弄り始めた。その様子は不快の一言だった。一刻も早くこの会室から消えて欲しかったが、会員確保のためと思うと発言は控えるべきだ。


 誠を横目で見ると、明らかに不快を表情に表していた。それでも、何も言わずに我慢している姿は立派である。

 不良達は笑いながら写真集を一通り読むと、その写真集を投げ捨てる。


「飽きた。会長さぁん、この同好会、女子がいるって聞いていたんですけどぉ、いないんすかぁ?」


「そー、そー、女体研究同好会だったら、女体を研究させろよぉ」


 投げ捨てた写真集は床に落ち、ページが潰れてしまう。それを見た誠の眉がピクリと動く。誠の言う事など、あの二人はまるで聞いていない。入会したとしても、大変な事になりそうだ。だが、健吾には関係ない事なので黙ってその様子を眺め続ける。


「彼女は私達と同じ、会員です。研究対象では無いので、そういう事は――」


 誠が連中を注意していると、タイミングよく教室の扉が開かれる。


「遅れちゃったわ。ごめんなさいね、着替えに時間がかかっちゃったの」

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