第23話 スキュラ出現
今日は、西の冒険者ギルドで仮面の女エリスとして討伐依頼を受けたのですが。
依頼の場所に行ってみると、滅多に見かけないモンスター、スキュラがいました。
スキュラは人間の女の体に犬の頭が六つ、犬の前足が十二本も生えている恐ろしいモンスター。
取り巻きにはリザードマンやゴブリン族を従えています。
味方の冒険者の反応からすると、スキュラと戦ったことがあるのはわたくしだけのよう。
今回も、なかなか厳しい戦いとなるかもしれません……。
笑うスキュラの指示のもと、モンスターたちが襲い掛かってきました。
まずは、リザードマンやゴブリン族を殲滅することから始めましょう。
さすがにこの連中の相手は慣れっこで、全員があっさりと敵を打ち倒していきます。
スキュラもこれには驚いたのか、口元の笑みがなくなりました。油断していてくれたらありがたかったのですが。
やがて取り巻きは難なく片付けたのですが、問題はスキュラです。
六つの犬の頭に十二本の足。どこから攻めるべきか。
こちらの迷いを見てとったか、スキュラが先手を取りました。
仲間の二人にそれぞれ二つの頭が牙をむきます。
「ぐあっ!」
戦士が腕に噛みつかれ、得物のメイスを取り落としてしまいました。
わたくしは援護するために前へ出ると、スキュラへ愛用のメイスを振りかざします。
それは避けられてしまいましたが、怪我をした彼は何とかいったん離脱することができました。
獲物を逃したスキュラ。今度はわたくしをターゲットにして、いくつもの頭が噛みついてきます。
「くっ……」
一つ目の頭は左腕の盾で受け止め、二つ目の頭は右手のメイスで牽制し……三つ目の頭がわたくしの足を狙って伸びてきます!
しかし、その牙はドレスアーマーのすそに弾かれて無傷で済みました。
厄介な相手です。なんとか隙を作りたいものですが……。
先ほど仲間が落とした地面に転がるメイスが視界に入った時、脳裏にあるひらめきが生まれました。
スキュラを正面に捉えながら円状に動き、そちらへ小走りで駆け寄ります。
その最中、左腕から丸盾を外し、スキュラに向かって円盤投げのように投げつけました。
それを見たスキュラの犬が一頭、わたくしの投げた丸盾にぱくりと噛みつきます。
本能的な行動だったのでしょうか、本体の女の顔が驚きに歪みました。
その隙、見逃しません!
落ちているメイスをがら空きの左手で拾い、素早く距離を詰め。
右腕と左腕、左右のメイスを高々と天にかかげ……。
今思いついたわたくしの必殺技、食らうがいいですわ!!
「二刀流撲殺奥義……アク・マ・シンカン!!」
言葉と共に、二本のメイスを真上から叩きつけます。
見事にふたつの犬頭にヒット。
脳天が陥没した二つの頭は赤い血を派手に噴き出します。
さすがにスキュラ本体がひるんだところに、左のメイスを投げ捨てて愛用のメイスを両手でフルスイング!
横殴りの一撃が女の顔に直撃。
言葉では表現しづらいものをたくさんまき散らしながら、ようやくスキュラは倒れたのでした。
◇◆◇◆◇
「スキュラ? それはずいぶんと珍しいモンスターが現れたものだな」
西のギルドに戻り、ギルドマスターにスキュラが出たこと報告します。
ギルドマスターは腕を組んで考えこみ。
「最近は種子からダンジョンが次々と生まれているのか、あまりにも敵の数が多くなってきた。それに質もな。さすがに西の冒険者ギルドだけでは手に余る」
くやしそうに言葉をひねり出しました。実際、もう西の冒険者では対処できなくなってきたと、わたくしも思っています。それはきっとここにいる他の冒険者たちもでしょう。
「幸い、東西南北のギルドによる会合がついこのあいだ行われてな。その時に、俺もその懸念を伝えたところだ」
先日、アルベールが連絡を密にすると言っていましたが、その効果が表れているようですね。
「近いうちに、東西南北のギルドメンバーから参加者を募り、大規模な討伐を行うかもしれん。可能なら、ここにいる者も参加して欲しい」
いつになく真面目な顔をする西のギルドマスターに、ここに所属する冒険者たちすべてが深刻な顔をして頷きました。
問題はこのわたくしです。もちろん参加はするつもりなのですが……。
聖女イリスで参加すべきか、仮面の女エリスで参加すべきか迷いますわね……。
でも合同で大規模な討伐を行うとなると、アルベールたちも参加することになるでしょう。
この間、ミラは一緒にいた時間が短いこともあってなんとかごまかせましたが、アルベールたちと長期で行動したら仮面の女エリスの正体がばれるのは明白。
ここはイリスで参加することにしましょうか。様々なモンスターと戦うなら、聖女としての力が必要になりそうですし。




