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第20話 受け取りの日

 今日は聖女としていつもの五人で活動しております。

 新しくなった王笏おうしゃくにもずいぶんと慣れてきましたわ。

 無事に戦いが終わって、五人で王都に帰還するところです。

 王都が近づくにつれて、わたくしはうきうきしている自分を自覚しました。


「なにやら嬉しそうだな、イリス」


 足取りや顔に現れていたのでしょうか、クーデリカがそう言葉をかけてきました。


「ええ、実は先日こんなことがありまして」


 ブラッディのぬいぐるみを作ってもらえることを、皆に披露します。

 そう。今日がそのぬいぐるみを受け取る約束の日なのです。


「イリスさん、ずいぶんと仮面の怪人ブラッディにはまっちゃったね」


 わたくしをスプラッターお芝居に誘ってくれたのはミラなのですが、ミラは一度観たらもういいやと思ったようで、それ以来誘われることも劇場で出会ったこともありません。

 まあ、わたくしのように何度も訪れる人の方が珍しいとは思うのですが、やはり時々ちょっとした寂しさを覚えてしまいますね。


「俺も観たことはあるんだが……もう少しストーリー性が欲しいと思った」


 あるじゃないですか!!

 アルベールの考察にわたくしは内心で激しくかみつきます。


「僕はああいうスプラッター系はちょっと苦手で、観る気にもなれませんでした……普段モンスターと戦ってるのに、おかしいですよね」


 カクタスがあははと困ったように笑います。


「おかしくはないぞカクタス。それが普通だ。ワタシもああいうのはどうも好きになれない……おっと、イリスの前で言うことではなかったな、すまん」

「いえ、人にはそれぞれ好みというものがありますから……」


 律儀に頭を下げて謝罪するクーデリカをやんわりとフォローします。

 それを最後に話題は別のことに飛びますが、しばらく彼らとのやりとりを引きずってしまいました。


 五人中、仮面の怪人ブラッディに好意的なのはわたくし一人……。

 心を通じ合ったはずの仲間たちですら、こうなってしまう。

 ああ、自分が特殊なのを理解してしまいますわね……。


 仮面の女エリスとして活動していることは、絶対にばれないようにしなければと、改めて誓ったのでした。


   ◇◆◇◆◇


「イリスさん、こちらです!」

「ああ、お久しぶり! お元気でしたか?」


 待ち合わせ場所の喫茶店で、わたくしはぬいぐるみ作りを約束した少女を見つけることができました。

 テーブルを挟んで、その向かいに座ります。


「こちらが、お待ちかね……仮面の怪人ブラッディのぬいぐるみです!」

「おお、これが! 素晴らしいですわ!」


 さっそく彼女がバッグから取り出したのは、可愛くデフォルメされたブラッディ。

 両手で持つのにちょうど良い、丸みのおびたフォルム。

 もちろん顔は両目に穴があいた仮面で完全に隠してあります。


 わたくしは幸せいっぱいの笑顔で受け取り、そのちっちゃな手足を愛情たっぷりに動かします。


「ナタも着脱可能なのですね! これはすごい!」

「ありがとうございます!」


 少女と二人、満面の笑みで笑いあいました。

 わたくしも自分のバッグを開け、約束の品を取り出します。


「では、こちらがわたくし自作のポーションです。受け取ってください」

「ありがとうございます! うわ、本当にサイン入りなんですね。父も喜ぶと思います!」

「ふふ、光栄です。お父様にもよろしくお伝えください」

「はい! きっと一生の宝物にしてしまうと思います!」

「ふふふ、ポーションなのですから、遠慮なく使ってください。なんなら、また作ってお渡ししてもいいですし」


 依頼で戦った疲れも大して感じず、少女とおしゃべりして今日は夕方まで過ごしたのでした。


 いただいたぬいぐるみはさっそく自室に飾るとしましょう。

 名前はブラッディくんと呼ぶことにします!

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