第17話 三人でお買い物
翌日。
アイテムショップの前で待ち合わせを約束していたわたくしの目に、ミラとクーデリカの姿が映りました。
わたくしが一番最後だったようです。
「遅れてすみません」
「大丈夫だよ、あたしたちも今来たとこだし」
「うむ。大して待ってないから安心しろ」
二人の言葉にほっとします。
ここは王都でも有数のアイテムショップ。
大抵のものはここに来れば揃うことで有名です。
今日買いに来たのは武器ですが、買い物が楽しいイベントだということに変わりはありません。
わたくしたちはうきうきした表情で、扉を開けて中に入りました。
やはり、魔力が大きく上がるものを買いたいですわね。
わたくしが買う予定なのはこの前壊れてしまったものに代わる、新しい王笏。
王笏は使用者の魔力を上昇させる能力がある武器。魔法使いが持つ杖と同じようなものですね。
ただ、聖魔法は魔法使いが使う魔法と違って少々特殊で、その魔力にも違いがあります。
わたくしがカクタスの持つ杖を持っても意味はありませんし、同様にカクタスが王笏を持っても意味はありません。
というわけで、王笏は魔法使いが使う杖とは別の一画に売られております。
この前折れてしまった王笏は、長い間使い込んでいて愛着があったのですが、最近のものと比べると能力がやや劣っていたのも事実。
完全に折れて修復も難しいですし、名残惜しいですが新しいものを探すことにしましょう。
「ところでミラは何を買うつもりなのですか?」
わたくしの後についてくるミラに、自分の買い物はいいのだろうかと気になって尋ねました。
「あたしは投げナイフを新調しようと思ってるんだ」
「投げナイフですか。ミラの投擲術は見事なものですからね」
これまでに、ミラが投げナイフでモンスターを仕留める姿を何度も見てきました。
わたくしも、エリスの時に何か投擲武器を持っておくべきでしょうか……でも、投擲武器だと手ごたえが……。
いけないいけない。今日は聖女として買い物に来ているのでした。
もう一人の同行者を探すと、クーデリカはアクセサリーの棚を眺めていました。
彼女は戦いの時、鎧が薄いのを補うため、アクセサリーによって抵抗力をアップさせています。
今日はお出かけ用なのか、その耳を可愛らしいデザインの宝石が彩っていました。
「いつも思うのですが、クーデリカはなぜ素手であそこまでの破壊力を出せるのです?」
これまでに数多の敵を素手で葬ってきたクーデリカに、ふとそんなことを訪ねていました。
クーデリカの徒手空拳から繰り出される一撃は、エリスの時のわたくしがうらやむほどの威力を持っています。
率直な疑問にクーデリカは考えこみました。
「うーむ。難しいな。気合いだ! としか言いようがない。砕けると思えば砕ける」
彼女から返ってきたのは、本当に難しい答えでした。
わたくしとミラの表情を見て取ったのか、クーデリカは慌てて付け加えます。
「これは言ってなかったかもしれんが、かつてアイアンゴーレムと対峙したことがあってな。その時、全身が黒い鉄で出来た姿を見てワタシの中に迷いが生まれたのだ。コイツは砕けないかも、と。そうしたら、実際この拳で砕くことは出来なかった……我ながら情けない」
「アイアンゴーレムを素手で殴りつけたの!? それだけだけでもあたしからするとびっくりだよ!?」
ミラが目を丸くしています。
アイアンゴーレムはモンスターの中でもはるか上位にいる存在です。出会って倒した冒険者はこの世にほとんどいないでしょう。わたくしは幸いにもまだ遭遇したことはありません。まあ、血がしぶかないので出会いたいとも思いませんが。
「というわけで、敵を砕きたいなら信念が必要ということだ。分かってくれたか?」
「あたしには無理そうってことが分かったかも……」
まとめるようなクーデリカの言葉に、ミラは困惑するような答えを返しました。
それからもしばらくアイテムショップで武器やらアクセサリーやらを眺める楽しい時間を過ごし。
最終的に、わたくしは以前の王笏とサイズも手触りも近いものを買うことにしました。
きっと、活躍してくれることでしょう。




