第13話 遺跡攻略の依頼
ある日のこと。
新たに発見された遺跡を攻略して欲しい。
わたくしが仮面の女エリスとして活動する西の冒険者ギルドに、そんな依頼が持ち込まれました。
遺跡攻略は、さすがに駆け出し冒険者の参加は推奨されていません。言うまでもなく、命の危険があるからです。
となると、依頼を受けられるメンバーも自然と限られるというもの。
わたくしに白羽の矢が立つのも当然でした。
ですが遺跡攻略に関しては、わたくしも数えるほどしか経験がありません。
それは集められた他の仲間も同様のようでした。
集まったメンバーはいずれもそわそわしています。とはいえ緊張半分、期待半分といったところですが。
その遺跡が、本当にまだ誰にも荒らされていない場所ならば、貴重な宝物が残されていても不思議ではありませんから。
もっとも、それ以上に恐ろしい存在が待ち受けていることも多いのですけどね。
そんな期待と不安を抱えて、わたくしたちは旅立ったのでした。
◇◆◇◆◇
数日の行程を経て、目の前に古びた遺跡の入口が現れました。
入り組んだ場所にあり、これまでに発見されなかった理由も納得できます。
わたくしたちは周囲を警戒しつつ、足を踏み入れました。
先頭は、罠の発見に長ける斥候の方が務めています。
石畳の床は見た感じ、かなり年季が入っているように思えます。はたしてこの遺跡はいつ建てられたのか。
……遺跡といえば、リチャードはどうしているのでしょう。
わたくしがふと幼馴染のことを思い出していますと、先頭の方が足を止めました。
「……妙だな」
「どうしたのですか?」
「どうも、新しい足跡が混ざってるようなんだ」
「え!?」
わたくしたちがその言葉にびっくりして斥候の方が睨んでいる床をまじまじと見つめたその時。
ひいぃぃぃぃぃぃぃ……!!
何やら、大勢の悲鳴らしき声が奥から聞こえてきました。
同時に、ばらばらといくつもの足音がそちらのほうから響いてきます。
先ほど斥候の方が口にした疑問が氷解しました。
つまり、先客がいたということです。おそらく冒険者でしょう。
これはさすがに想定していませんでした。
まさか、同時期に同じような依頼が出されていたのでしょうか?
どうしたものかと、仲間と顔を合わせていると。
「ま、待て! 僕を置いて逃げるな!!」
……!? い、今の声はリチャード!?
わたくしは、まさかという思いと共に、声のした方へと走り出します。
後ろから仲間の大声が聞こえてきますが、振り向くことはありません。
危険な遺跡ではありえない行為。頭では分かっていますが、とっさに動いてしまいました。
走る途中、逆方向から向かってくる数人の冒険者たちとすれ違いましたが、構っている余裕はありません。
そのまま走り、直角の曲がり角を右へと入り……。
あれは……グリフォン!
大きな鷲の上半身と翼を持ち、ライオンの下半身を持つ、遺跡でまれに見かける番人――幻獣が視界の先にいました。
そしてそのグリフォンの前で、腰を抜かしたようにへたりこむ男……リチャード!
「すみません、援護をお願いします!」
遅れて追いついてきた仲間たちにそう呼びかけ、わたくしは居ても立ってもいられず飛び出しました。
グリフォンとリチャードの間に割って入り、グリフォンを見上げて睨みつけました。後ろから、息を飲む音が聞こえます。
巨大なグリフォンは闖入者を威圧するように胴体を持ち上げ、爪をかざしました。
こちらも、負けじと盾を構えてメイスをかかげ、仮面の奥から声を迸らせます!
「聖水を……まき散らせ!」




