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神と人が相席するカフェは、神と人が戦う世界にある。  作者: 蒼い諒


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Ep03 オーディンと女子高生と昭和プリン ①

「……やはり、納得がいかないな」

最高神オーディンは、空になった皿を前に深く溜息をついた


「なぜ、この『暗殺者のパスタ』 は、今日でメニューから外れるのだ」


「ええ、カフェのメニューは

定期的に変えないと飽きられてしまいますから」

マスターは事もなげに答えると

手際よくカウンター内を磨き始めた


「飽きるはずがなかろう!

この香ばしいトマトの焦げ、ニンニクの刺激…」

オーディンはカウンターを何度も叩く


そう、彼は衝撃的なパスタと出会ってから

何度もカフェに通っていた


「光栄ですが、またしばらくすれば再登場もありえますので…」

その言葉にオーディンの顔が オッと反応

「来週か?」

「いえ、そんなに早くは…」


神族の最高神として君臨する彼も

好物の前では、一人の「熱心なファン」


カランコロンカランコロン…

ドアが開いた

入ってきたのは、小柄な少女

名は「かほる」

制服に身を包んだ女子高生

だが、その身に纏う空気は並の人間ではなかった


(こいつ、もしかしたら…)

かほる見て、オーディンは直感した


先日、神々の防衛ラインが大幅に後退する事件があった

オーディン直下の軍隊、エインヘリャルの兵士が言うには

相手は「とんでもない強さの女の子供 と 老人」


子供とは、この娘だろう

そして老人というは

トールと互角に戦ったというヤツの事だ…


(神々と互角に戦えるヤツが多すぎる)

オーディンはパスタの事もあり、更に気分が悪くなった


一方、かほるは店内に足を踏み入れると

静かな興奮を瞳に宿し、ニコニコと周囲を見渡した


オスマン建築風の内装、琥珀色の灯り

そして窓の外に広がる、雲を突き抜けた絶景

「……わあ、すごい」

小さく呟くと、彼女はオーディンから離れた端の席に腰を下ろした


彼が最高神であることを知っているのかいないのか

かほるは特に気にかける様子もない


「いらっしゃいませ、ご注文は?」

「えっと…ブレンドコーヒーと、昭和プリンをお願いします」

かほるの声は丁寧で、落ち着いていた


マスターは手際よく、コーヒーを淹れると

スイーツ専用の冷蔵庫からプリンを取り出し

かほるの前にコーヒーと共に置く

「お待たせ致しました」


オーディンは運ばれてきた「昭和プリン」をじっと観察した

(昭和プリン? 暗殺者といい、人間の名づけセンスは…)


しかし

「そこの…お前、それは何だ?」

オーディンは奇妙な名前がどうしても気になり

とうとう、いつもの好奇心に抗えず、プリンを指さし話しかけた

かほるはオーディンに視線を合わさず

プリンを見つめながら、ゆっくりと話す


「これですか? これは『昭和プリン』です

とろとろしたプリンじゃなくて、昔ながらの固めのプリン

甘みが強くて、でもカラメルはしっかり苦いんです」


彼女はスプーンで上に乗るホイップクリームを掬い

愛おしそうに見つめる

「このホイップも、お気に入りなんです

そして、最後に食べるさくらんぼが、一番のポイントなんですよ」

 

オーディンは、彼女の丁寧な解説に つい聞き入った

「『昭和』というのは、地名か?」


「地名? えっと…」


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