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神と人が相席するカフェは、神と人が戦う世界にある。  作者: 蒼い諒


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Ep01 オーディンと暗殺者のパスタ ②

「暗殺者のパスタも知らねぇのかよ!」

太田は反笑いで噛み付いた

「ニンニクとトマトペーストで味付けした焦がしパスタ!

神のクセに知らねぇとは!」


「人間風情が…ミンチにしてやる」

オーディンが髪を揺らし、腕を広げ立ち上がる


ドシュッッ!

店内の灯りが瞬断するように落ちた

直後、マスターから青い炎が稲妻の様に飛び出し

暗闇の店内を覆うように駆け巡る


「お客様…店内での戦闘はご遠慮頂けますか?」

マスターがニコリと笑うと、店内の灯りが再び灯った


3人は何も言えなかった

身体が固まった

絶対者のプレッシャーによる束縛、それを感じる一瞬だった


「ちょっと…手が震えますね…」

鈴木はその手を太田に見せた

太田は足が震えていた


「フン…」

オーディンは再びドカッと座りなおす

「それじゃ、その暗殺者のパスタをくれ」


「マスター、私もお願いします」

「あ、俺も!」

「かしこまりました、三人前ですね、食後にコーヒーもあります」


「おい、人間、なぜ暗殺者なのだ?これは」

オーディンはどうしても名前が気になっていた


「赤さ、辛さ、美味さから来る比喩表現だよ!」

「さすが太田さん、グルメに詳しいですね」

「フン!後で覚えておけよ…しかし」


オーディンは改めてメニューを見る

「人間は感性から食べ物に名前を与えるのか…

名は理解の入口とも言うが」


鈴木はこの言葉に、ただの殺戮者ではない

オーディンの一面を感じた


キッチンではマスターが冷蔵庫からタッパーを取り出し蓋を開ける

中はトマトペーストに包まれたパスタが赤く煌めいていた

そして、トマトとニンニクの匂いが、ほんのりと漂ってくる


「うん? 作り方が違う?」

太田か怪訝な顔でタッパーを睨んだ


「よくご存じで、実際は時間のかかる料理なので、カフェ風アレンジです

あとは焼くだけ、という所まで下ごしらえしてるんですよ」


マスターは焼けたフライパンに 中身をさっと開けると

トマトの激しい蒸発音が3人を期待させた


そして、流れるような所作から徐々に出来上がる料理は

焚火のような灯りとなり、3人はそれをじっと眺める

彼らの緊張感をほぐすには十分すぎた


「あの…神々の方は、何を食べているんですか?」

鈴木は恐る恐るゆっくりと聞く


オーディンは腕組みをし、怪訝な顔をすると

「お前ら、神が古いものばかり食べていると馬鹿にしているだろう」

「いえ、そんな事は…」

「天界には肉も魚もパンも、調味料も酒もある、ただ…」

「パスタはないのか…」

「フン!」


ふと、鈴木がマスターを見ると、既に盛り付けの段階

赤く、そして黒い焦げを纏ったパスタは

クルっと山の様に身をうねらせている


「お待たせしました」

マスターが3人の前にパスタを並べると

その塔では凄惨な殺し合いが起こっている事など嘘のように思えた


「では、いただくとしよう…」

オーディンの「初」に、鈴木と太田

そしてマスターも、興味深げに見守る


ぐわっと豪快で大きな一口

すぐに呑み込まず、味わっているのが分かる


「美味い…」


「だろう! そうでしょ!」

太田はオーディンを指差し、勝ち誇ったように笑う


「パスタにトマトが染み込んで、ほんのり辛く香ばしい…」

オーディンの言葉にニヤつきながら、鈴木と太田もそれに続く


敵と同じテーブルで同じ物を食べる

禁忌、背徳、それらが混じった中で美味いパスタを食べる

二人は今までに味わったことのない感覚を感じていた


「美味しかった~!」

「ごちそうさん!」

「…美味かった」


三人は 瞬く間に平らげると、椅子に深く座り 一息ついたが

「おい、人間よ…」

オーディンの一声で

鈴木と太田は隙だらけになっていた自分を感じ、恥じた


「お前らは、なぜ、神々に歯向かうのだ?」


この言葉に太田は目を見開いた

「あんたらが先に仕掛けたんだろう!」


「仕掛けた? この戦いはラグナロクだ…マスター、知ってるんだろ?」

「えっ?」

コーヒーの準備中で、不意に振られたマスターだったが

「簡潔に言うと…ラグナロクとは

巨人族と人間の連合軍が神々を滅ぼす、という予言です」


「そう、我々は滅びたくない、だから、お前らを滅ぼす、いや滅んでくれ」


「そうは…いきませんよ、我々も滅びたくない」

鈴木は落ち着いて返す


「そうか、ならば最後の一人まで殺り尽くす」

オーディンは二人から目を逸らし つぶやく


「最後の一人? 戦況を知らんのか?

この塔が神々の最後の砦、どちらが優勢だと?」

太田は席を立ち息を荒くした


「お前らは知らんだろうが、全員が滅びぬよう

ワシは世界を分断し、それぞれを異世界にしたのだ! それを繋げおって…」

オーディンは頭を抱えた


「あの…」

マスターが不穏な空気を変えるべく話し始めた


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