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神と人が相席するカフェは、神と人が戦う世界にある。  作者: 蒼い諒


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Ep09 女神フレイヤとチーズケーキと女性への接し方と ①

バベルの塔、50階

神と人が戦う中間にある、カフェ・ウィルド

相対する者が安全に利用できるとはいえ

そんな場所にお客が来るのかと思われたが

「美味しいもの」を背徳的に食べる事ができるからだろうか

少しづつ、来店者が増えていった


そんなある日


カウンターの片隅で

ガルムの眷属マリは眉間に深いしわを刻み

目の前の皿を睨みつけていた


「…マスターこれ、本当にただのレアチーズケーキ?」


「…と、申しますと?」

マスターが、穏やかに微笑む


マリはその穏やかさが

(わかっちゃった? 秘密?)

と、言ってるようにも見え、逆に癪に障った


皿の上には最後の一口

舌の上で溶ける濃厚なクリームのコク

だが、その土台

砕いたクッキー生地の部分から

確実に、ある「違和感」が主張していた


「美味しいわ、悔しいくらい、でも、この土台

何か『仕掛けてる』でしょ? 普通のクッキーじゃない」


「お気づきで、実はその土台には隠し味が一つ、それは――」

「言わないで!」


マリはマスターの声を遮るように手を挙げる

「私、キャバ嬢やってたんだけど

客だけじゃなく、味覚の分析力にも自信があるの!」


そして、意気揚々と挑んだ一戦目

「…グレープフルーツ?」

「残念ながら」


二戦目

「…ゲランドの塩?」

「違います、確かにあの塩は素晴らしいですが」


回答のたびに一口

そしてまた一口…

気づけば皿の上は 「最後の一口」 に


これを外せば…正解にたどり着くため

おかわりを頼むことになるかも


だが、マリには一日の摂取カロリーという

神々との戦い以上に過酷な制約があった


その時

カランコロンカランコロン……

入り口のドアが開いた


凍り付くような金属音を立て

オレンジレッドの魔法鎧が周囲を照らす

――女神フレイヤだった


「…チッ」

「…あら、先客がいたなんて」

二人は互いに「フンッ」と言い合うと

フレイヤはマリから最も離れた席に腰を下ろした


「マスター、おすすめは?」

「本日は、レアチーズケーキと、ベイクドチーズケーキがございます」


フレイヤは、マリのテーブルにある

食べかけのレアチーズケーキをチラリと一瞥

そして、不敵な笑みを浮かべて言い放つ


「…ベイクドチーズケーキをいただくわ」


マリはその視線を見逃さなかった

「オイ、ちょっと、そこの女神様、今、私のケーキを見て注文決めた?」


フレイヤは優雅に髪をかき上げ

「被害妄想よ、人間、私はただ

今のあなたにはその程度の 『甘さ』 がお似合いだ、と思っただけ」


「あら、そうですか」

マリは意地悪な話で対抗し始める

「そうそう、この間、ロキが配ってた小冊子、読んだわよ

あなたが、とある首飾りを手に入れるために、小人相手に色々あったとか

神々の所業ってのは、随分と……情熱的なのね」


挑発的な言葉に、フレイヤは顔色一つ変えずに答える

「そうよ、私たちはそういう者で、そういう世界に生きている

欲しいものを手に入れるために、自分を捧げる、それが何か?」


予想外に淡々とした返答に、マリは拍子抜けした

「……まあ、正直、意外とあなた達、人間臭いのね」


「人間と同じにされちゃ困るわ

私たち神族には、あなたたちとは比較にならない

広い見識と高い洞察力がある、同じ土俵に立っていると思わないことね」


「ああ、そうですか悪うございましたね!」


険悪なムードの中

マスターがベイクドチーズケーキと紅茶をフレイヤの前に置く


オレンジ寄りの黄金色に焼き上げられた表面

焦げの形は、波のような厚みを強調させる

そして、ナイフを入れると程よい弾力が指先を返し

中はしっとりと濃厚なチーズの海


一口食べたフレイヤの動きが、ぴたりと止まる

「…はぁ、これは満たされるわ、土台も美味しい」


その漏れ出た一言に、マリがすかさず食いつく

「マスター、そのベイクドの土台も、こっちのレアと同じ?」

「ええ、共通の土台です」


「…なら、フレイヤ、あなた

その土台には、ある 『隠し味』 があるの、何だと思う?」


フレイヤはフォークを置き、勝ち誇ったようにマリを見据える

「当たり前でしょ…神の舌を侮らないで」

そう豪語しながら、彼女はさりげなくもう一口食べた


(……何、これ? この苦み、どこかで…)


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