ホワイトデーでした。
次の月曜日に学校に行く途中で会長に会った。
「おはよう」
「あ、おはようございます。大会は如何でしたか?」
「優勝した」
おお……せ、宣言通りとは、まさに攻略対象者。どうやら体調の方は心配なかったようですね。
「それはまた。おめでとうございます」
「当然だ」
当然なんですか!凄い自信ですね。どこからその自信が沸き上がってくるのだろう。少しで良いから分けて欲しいくらいです。
「おっはよーとーるー!あ、会長さんも、どもですよ」
「ああ、金城か、おはよう」
何やら機嫌が良さそうな翼が笑顔で挨拶している。
この2人はなんだか随分と仲良くなっている気がします。
「あ、春休みにライブやるんだけど、会長見に来ません?」
「ほう……いつだ?」
「4月1日!なんかこう、嘘つこうイベントもする」
「はは!エイプリルフールか、楽しそうだな」
へぇ、ライブイベントですか。しかもエイプリルフールに……。なんでその日にしたんでしょう、いや、分かりやすいですけれど。
「透と、晴翔と会長の3人でどう?」
「あれ、私も誘ってくれるんですか?」
「当然じゃん!友達なんだから!」
「ふふ、有難うございます。翼の曲、久しぶりに聞きたいなぁって思っていたので、嬉しいです」
「え、そ、そう?へへ……ありがとう」
「いえいえ、こちらこそお誘い有難うございます。ぜひ行かせて貰いますね」
照れてる翼可愛いですね。たまには褒めて愛でないといけません。尻尾振ってる幻覚が見える気がする。
卒業式である。と言っても、特に変わったことはない。水無月先輩たちが卒業して、わずかばかり寂しくなるくらいですか。私としては刻一刻と社会的死のカウントダウンが刻まれているのでとても悲しいもんです。国歌や卒業の歌なんかをそれぞれ送ったりしちゃったり。まぁ、多少練習させられましたけれど、何もなく終了した。
「いやぁ、この学校に通えなくなるのかと思うと感慨深いものがありますね」
久し振りに会った水無月先輩はなんだか大人っぽくなっているように見えた。いえ、以前から大人っぽい方でしたが、より一層、といったところでしょうか。
「月島君の恋の行方がどうなったか、報告してくださいね」
「ええっ……!?いえ、まぁ、いいですけれど」
そんなに会長の事が気になるのですか。まぁ、確かにドジッ子なのでちょっと心配な気持ちは分かる。恐らく親御さん的な気持ちなのだろう。水無月先輩が副会長をやっていた時は、散々迷惑かけていましたもんね。他の人間とほぼ喋れないとか、人としてどうかと思いましたもの。
その為に副会長が必死で部屋を行き来して、食い違う意見を何とか飲み込ませたりしてましたからね。その苦労は計り知れない。歴代で最も苦労した副会長かもしれない、と思う。
今は結構それが軟化しているので、楽になったものです。もっと早くに改善できていたら、もうちょっと水無月先輩も気が休まったかと思うと……。いや、ほんとにすばらしい方だと思います。東京の最難関大学の法学部に受かったみたいですしね。頭の出来が違うようです。
水無月先輩の所はでっかい会社を経営してるんでしたっけ。テレビでCM出るレベルの。まぁ、法学部で民法とか習うなら、結構有意義だと思う。……普通に敏腕弁護士にちゃっかりなってたりして……。水無月先輩が会社継ぐ、とか言う話は全く聞いた事がないので、そこんところは分からないが、将来は安泰だろう。決して路上で死ぬ事はないと思う。よっぽどの事をしない限りはね。
3年生が抜けたので、校内が幾分か静かになる。
購買の方も買うのが楽になった、とはクラスの男子の言葉だ。私は購買の方にあまり言った事はないが、お昼休憩の時は結構混雑しているらしい。
そしてホワイトデーがやってきた。
私はこの日の為にマシュマロを大量購入してきた。なんせバレンタインの時に沢山チョコ頂いちゃいましたからね、そのお返しです。全員の顔は覚えてないので、なんかこう、自主申告してくれた人にあげるつもりです。ふふ、凄く適当ですね。でも仕方ない。名前も記入してない子が机にいれてたりしてくれちゃってましたからね。私ではどうしようもない。
なんでクラスの男子より私の方が多くチョコ貰ってんだ……もういいですけれど。関係ない子も貰いにくると想定して沢山買いました。量産型で申し訳ないですが、数が多いのでこれでも結構な値段になっちゃったんですよねぇ……。
しみじみとそんな事を思いながら登校する。
と、丁度校門の所に、最初にチョコを渡してきた女の子を発見した。
「あ、えっと君」
「ひゃっ!き、木下さん?な、なんでしょう!」
「これ、バレンタインのお返し。少なくて申し訳ないけれど、貰ってくれますか?」
「え、え、え……か、家宝にしましゅ!」
え、いや、腐りますよ……?
顔を真っ赤にさせて校舎にダッシュして行くのを呆然と眺める。そういや、バレンタインに渡された後もあっという間に逃げてましたから、陸上部の子なのかもしれませんね。足速いなぁ……。
休み時間など、私がバレンタインのお返しを配っている事が知れ渡ったのか、沢山の女の子が詰めかけて来た。うおお……なんという。なんということだ。私ってこんなにモテるのか!どうせなら男に生まれたかったよ!ちくしょう。
お昼休みもまるまる使って、ようやく全て渡し終えた。つ、疲れた……。女の子の力って結構強いんですね。ちょっと恐ろしかったです。
「あ……の」
「あ、はい……あれ、深見君どうしました?」
「こ、これ、お返し……」
「あ。わ、有難うございます!」
わぁ!すっかり忘却してた!お返しを返す事ばかり考えていたが、そういえば男子にもあげてましたね。私に女子としての威厳を取り戻させてくれて有難う、深見君。
うん。深見君にあげてた事も忘れてたくらいですけれど、有難く頂戴致しましょう。それに、深見君のお菓子美味しいですから、楽しみです。
「透、これ……」
「あ、ありがとうございます」
生徒会室に行くと、会長からお返しを貰った。
おお、なんだか女子っぽい気分です。いいものですね。
四角い箱が可愛くラッピングされている。
「なんのお菓子でしょう」
「いや、お菓子じゃない……」
あれ、そうなんですか?ホワイトデーのお返しはお菓子だとばかり思っていた。しかもマシュマロが多いと勝手に想像していた。そういえば、どの攻略対象者もホワイトデーのお返しは何かモノだったりしましたっけ。勿論好感度が高ければの話だが。
まぁ、今は現実でもあるので、その時の気分によって変わったりもあるだろうな。私にくれたみたいに。
「おっ、俺も、お返し、ある」
若干カタコトになった晴翔が鞄から袋を取り出してきた。
それを見た会長が眉を潜める。
「お前、貰ってなかったんじゃないのか」
「なんで知って……いや、あの後貰ったんだ、2月16日にな!」
「おま……なんて姑息な……」
ニヤリとしている晴翔を憎々しげに睨んでいる。なんとも仲が良いことだ。
何故会長が14日にあげなかった事を知っているのか謎だが、まぁあまり気にする事でもあるまい。
晴翔から袋に入れられたプレゼントを貰った。手にすると柔らかかったので、布的な何かだろうと思う。今度こそお菓子を期待していたのに!なんで晴翔はモノを送ろうとしますかね……。
「有難うございます」
「いや、こっちこそわざわざくれたんだから、有難う、だよ」
いえいえ、いいんですよ。色々考えすぎた私が悪かったです。正直、作って休みの日に持っていくのは面倒でしたけれども。仲直りできそうになったので、よしとしましょう。
……それにしても、もうホワイトデーですか。
もうすぐ、終業式ですね……あまり考えないようにしよう、そうしよう。
家に帰ってプレゼントを開く。
深見君のお菓子はまじで半端なく美味しかった。いや勿論、桜さんのお菓子も超絶おいしいのですけれどね。文化祭で2人がコラボしたお菓子は本当に美味しかったですね。
続いて会長から貰ったお返しを開く。
小箱から出て来たのはコンパクトな鏡だ。蓋がついたもので、鞄に入れても持ち運びの邪魔にならない鏡である。水色と黄緑の花柄で、花柄でも割とシンプルなデザイン。結構私好みのものだった。いつぞやのスノードームとはえらい種類の違ったものですね。これは普段使い出来そうですね。可愛くても可愛過ぎない感じがとても良いです。
で、最後に晴翔のものですが……開けるのを躊躇いますね。
なんせ前回ネックレスでしたから……まるで使っていませんけれども。まぁ、アクセサリー類ではないでしょうね。なんせ布的な感触でしたから。
悩んでいても仕方ない。早速開きましょう。
……。
……うーん。
ひざ掛け……?なんでこのチョイス……?
まー深い意味などなかろう。バレンタインのチョコねだる様な人間ですしね。
でも、これくらいだったら家で使えそうっちゃ使えそうです。
ネックレスは貰ったのに使ってませんでしたから、これは使いましょうか。なんだか晴翔に申し訳ないですし。




