↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せをくれたのは、見ず知らずの魔法使いでした。  作者: ゆめ子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/14

5 出張治療院


翌日、私は薬草や道具を入れた鞄を持って町長さんの家を尋ねた。


町長さんは笑顔で迎えてくれて、リビングに通された。お茶まで出してくれて申し訳ない。

町の人にはお知らせしたけど、どれくらい尋ねてくれるかは分からないという。

まぁ、そうだろう。

むしろお知らせしてくれただけでもありがたい。


そういえば、あの男性はどうなっただろうか。

この町に初めて来た時に診たあの男性。赤ちゃんを抱いた不安そうな奥さんは、安心出来ただろうか。

そんなことを考えていると誰かがやってきた。


「おはようございまーす。先日はありがとうございました!」


なんと今考えていた奥さんだ!

玄関で赤ちゃんを預かったらしい町長さんが、デレデレの顔をして後から入ってきた。


「え、あ、いえ、たいしたことはしてないので……」

「ふふ、ごめんなさい、びっくりさせちゃいましたね。私は……」

「シエラさん!みぃーてぇーこの可愛いお顔!!今日もご機嫌でしゅねー!ね、この目元とか私にそっくりでしょう?」


デレッデレの町長さんに挨拶を遮られたら奥さんは、ものすごく……怖い……後ろに魔王が見える。


「お義父さん、私今、シエラさんにご挨拶してましたよね?」

「え、あ、ごめん……で、でもそんな顔をしたらリーシェが怖がるよ?ねー?」

「お と う さ ん ?」


あ、今、ピキッて音が聞こえた。

町長さんは素直に「ごめんなさい」と小さくなって近くのソファに移動した。

腕の中の赤ちゃんはきゃっきゃと楽しそうだ。天使だなぁ。


「ごめんなさい、いきなりこんな場面を見せてしまって。改めまして、私はシェスカといいます。あの子はリーシェです。この前助けていただいた夫が町長の息子なんです」


なるほど!

あの地図に書かれていた「可愛い孫がいる!!」はリーシェちゃんのことだったのか。


「町長さんのご家族だったのですね。シエラです、よろしくお願いします。旦那さんはその後如何ですか?」

「もうだいぶ元気になって、歩き回りたくて仕方ないみたいです。リーシェよりも寝かせるのが大変で……ふふ、丁寧な挨拶はここまでにしましょう。私、シエラさんとお友達になりたいの。シエラって呼んでいい?」


わぁ、嬉しいお言葉だ。

私は思いっきり頷いた。

今世で初めての友達が出来た。


「お義父さんから、シエラが治療院を始めるって聞いたの。町にはお医者様がいないから、そのうちきっと患者さんがわんさか増えると思うのよ。知識は何もないのだけど、シエラの助けになれるように今のうちからお手伝いしたくて」


治療院を開くことになってから、いずれは誰かに手伝って貰おうと考えていた。ありがた過ぎる。

でもまだお給料は出せないことを素直に伝えると、シェスカは朗らかに笑った。


「当たり前よ!お給料は治療院が軌道に乗ってからでいいわ。夫が稼いでるから、私時間だけはたくさんあるの」

「ありがとう、シェスカ」


この人達に会えただけでも、ここに来て良かったなぁと思える。




それからシェスカに聞かれるままに、薬草や器具の話をしながら調薬をした。傷薬や熱冷ましの薬はたくさんあっても困らないだろう。

隣のソファでは、すやすや眠るリーシェちゃんを町長がデレ見している。




そんなことをしている間にお昼の時間になった。

そろそろご飯にしようかと話していると、窓の外から馬のいななきが聞こえてきた。

何事かとみんなで顔を見合せ、窓を開けてみる。

そこには栗毛の馬がいた。


『シエラ!ライナスがシエラに持っていけって。はい、これ』


そう言って首から下げた包みを見せる。

急ぎの何かだろうか。私は包みを受け取ると中を確認した。

美味しそうなサンドイッチが入っている……お昼ご飯か!?

思わず顔が綻んだ。


「ありがとう」

『シエラにも会えるし、お使いって楽しいね!お仕事頑張ってねー』


首すじをひと撫でしてあげると、そう言って森へ帰っていった。


「何だったの?」

「お昼ご飯をライナスさんが届けてくれたみたい」


2人はびっくりしていたが、何だか嬉しそうだ。




早速みんなでご飯を食べて食後のお茶を飲んでいると、記念すべき1人目の患者さんが来た。


お隣に住んでいるおばあちゃんで、なんでも昨日転んでしまってから手首が痛いらしい。

断りを入れて触れてみる。少し腫れていた。


「こうすると痛いですか?これは?うーん……骨は折れていないみたいだけど、筋を痛めちゃってるのかな」

「手が使えないと不便でねぇ。おじいさんにちゃんとしたご飯も作ってあげられないから申し訳なくて」

「そうですよね。しかもつい使っちゃうから、ずっと痛いんですよね」

「そうなのよぉ」


お婆さんと話しながら、湿布薬を手首に巻いて固定してあげる。同時に痛み止めを作るのも忘れない。


「これを飲んでみてください。痛みが引いてくると思うので」

「あら、お薬ってもっと美味しくないと思ってたけど、これは美味しいわねぇ」

「そうなんです。この薬草はこっちの茶葉と相性が良くて、一緒に煎じてあげると美味しいし良く効くんですよ」

「まぁまぁ、良く知ってるのねぇ。ほんと、だんだん痛くなくなってきたわ」

「それは良かったです。でも痛くないからといって手を使ってはいけませんよ。3日間はこのまま固定しておいてください」

「あらぁ、そうなの……不便だけど仕方ないわね。その方が早く治るのだものね」

「そうです。早く治れば、早く旦那さんに美味しいご飯を作ってあげられますからね。お時間があれば明日もまた来てください。湿布薬を交換しますので」

「ありがとう。素敵な先生に診てもらえて安心したわ。また明日来るわね」


おばあさんは町長さんと雑談をして、笑顔で帰っていった。



「すごいわ、シエラ!!本当になんでも知ってるのね!」

「何でもは知らないよ、でもそう言ってもらえて嬉しい。私ずっと勉強してたから」


そう、前世からずっと勉強してきた。

前世では看護師として必要だったから、今世では1人で生き抜く為に。

知識を得ることは嫌いではなかったけど、その知識がこうして誰かの役に立つのは本当に嬉しかった。


「でもなんだか申し訳ないな、こんなにお金をいただいてしまって」

「いいのよ、シエラの技術に対してもあるけど、安心出来たことへのお礼なんだから。それに、街へ行ってお医者様に診てもらうともっと払わなければいけないし」

「そうなの……」


患者さんが安心して笑顔で帰ってくれるのが一番だ。

でも貰い過ぎてはいけない。

余裕のない人だっているだろうし、そういう人達にも気軽に訪れて欲しい……そう思って、町長さんとシェスカと改めて金額や開院時間について話し合った。

何より、今の私は森に住んでいる。材料費はタダなのだ。




初日はおばあさん1人だけだったけど、なかなか良い時間を過ごせた。

空いた時間には治療院の細かな決め事を考えたり、お薬の作り置きをしたり。

シェスカともすっかり仲良くなれた。


暗くならないうちにと、町長さんの家を後にして森へ向かう。

ライナスさんの家が見えると、ほっとした。

今の私の安心はここにあるんだと心から思った。





3日後、すっかり良くなったおばあさんの噂を聞いて、たくさんの人が押し寄せてくることになるとは思わず……私は初日の充実感に満たされていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。