12 神様
今回は少し短めです。
それから2日、シエラはまだ目を開けない。
しかし、顔色が良くなってきた。
その間、町長家族が町を代表して見舞いに来た。
出迎えたライナスを見て慌てたシェスカは、急いで食事の支度をしライナスを無理矢理休ませる。
それほどにライナスの顔色が悪かった。
現実世界でみんなが心配している中、私は光の中にいた。
どこを見ても何もなく、ただひとり私だけが漂っている。
記憶も全て取り戻し、生きている確信もある……早くライナスさんの元に帰りたいのだが帰り方がわからない。
うんうん悩んでいると、目の前に光の玉が現れた。
「もうすっかり元気だな。だが、だいぶ削られている」
喋った!光の玉が喋っている!
念の為あたりを見回すが誰もいない。
「ははは、私が喋っているよ。何も驚くことはない、安心しなさい」
「……あの、そう言われても何も安心出来ないのですが?」
「ふむ、少しだけ教えてあげよう。私は君達から神と呼ばれる存在だ。今君は私が作った空間にいる」
……神だそうだ。
私は深く考えるのをやめた。頭痛がしそうだ。
だけど、声が優しかったから少し話してみることにした。
「私、帰りたいのですけど、どうしたら帰れますか?」
「どちらの世界に帰りたい?」
「え……」
「ふむ……実はな、君を今の世界に生まれ変わらせたのは私なのだ。たとえばどちらか一方の世界で死亡した場合、もう一方に連れて行っている。まぁ、条件はあるがな。本来なら生まれ変わる時に記憶を消すのだが、君の場合は私の手違いで記憶が残ってしまった。そのせいで理が多少ずれてしまったが、この際だ、君は特別ということにしよう」
なんかとんでもない裏事情を聞いてしまった気がする。
私は元の世界で死んだから今の世界で生まれ変わり、神様の手違いで両方の記憶を持つことになり、そのせいで世界の理がずれて、仕方ないから私を特別扱いしてくれる……だんだん混乱してきた。
でも、帰りたい世界は決まっている。
ライナスさんのいる世界だ。
「私は、今生きている世界……魔法のある世界に帰りたいです」
「後5年しか生きられなくとも?」
「え!?今世も短命なんですか!?」
「あぁー……いや、本来はもっと長かったんだが、あの魔法使いに君の生命エネルギーを使われてしまったからね。うーん、そうだなぁ……じゃあこうしよう!」
やけに明るい声で神様は提案してきた。
要は私の寿命を伸ばす代わりに、世界各地を回って神様の手伝いをしろと。
私はあからさまに「無理じゃね?」という顔をした。
私、ただの人間なんですけど。
「寿命を伸ばしてくれるのはありがたいですけど、私、前世でも今世でも穏やかにのんびり暮らしたいって夢があるんですよ。それは叶えられないってことですか?というか、普通の人間の私には無理な仕事だと思います。そもそも貴方の手違いで起こったことですよね?その手違いがなければ私が狙われることもなかったし、寿命が縮むこともなかったはずですよね?私に対して申し訳ないって気持ち、本当にあります?」
「うぐ……うぐぅ……」
私はここぞとばかりに強気に出る。
ライナスさんと後5年しか一緒にいられないのは寂しいが、それでも私の希望は変わらない。
ならいっそ言いたいことを言ってしまおうと思った。
この神様なんかちょっと軽いし、ただの光る玉だし、言うだけはタダだし。
思ったよりダメージを受けている神様が、うぐうぐ唸っている。
私は「ふんっ!」とそれを見つめた。
「ぐぅ……じゃあ、あの場所でのんびり暮らすがいい。だが!!定期的に報告に来ること、これは譲れない!!寂しい!!」
私はぽかんと口を開けた。
え、今この神、寂しいって言った?
全く理解が出来なくて思わず固まってしまった。
そんな私の周りを、光る玉がぷんぷん動き回っている。
「だって!ずぅっと独りで2つの世界を切り盛りしてきたんだよ!?人間達が家族を持って幸せそうに暮らしてるのを見るだけだったんだよ!?可哀想じゃない!?」
えぇー……ただ友達が欲しかっただけじゃん。
それならそうと言ってくれれば良いのにと、呆れてため息が出た。
それを聞いた光る玉がビクッとする。
「あの、変な条件を付けなくても友達でしたらいくらでもなりますよ?」
「え!?いいの!?じゃいくらでも寿命伸ばしちゃう!」
いやいやいや、それはダメでしょ神様。
光る玉がぴょんぴょん飛び回っている。喜び過ぎじゃないか。
「そういうのはダメだと思います。普通でいいです。普通で……あ、でも、もし可能なら……あ、いや、やっぱいいです!」
顔を赤くした私の周りを、光る玉がふよふよ漂う。
なんだかにやにやされている気がするのは気のせいだろうか。ちょっとむかつく……
「よいよい、良いようにしよう!よし、これから君は人間という種族の枠から飛び出すことになる。授けた寿命が尽きた時、転生出来なくなるが良いか?」
みんな来世では記憶を失うのだ。
それなら、私は今を目一杯生きたい。
私はしっかりと頷いた。
「うむ、ならばこれを渡そう。共にいる魔法使いに言えば、意味が分かるだろう。かの者にとっても有用だ。では、帰るが良い、友よ」
そう言うと、玉の輝きが強くなりまぶしさのあまり何も見えなくなった。




