12 硝煙のクスコ、轟く大地の怒り2
1
外の喧騒から隔絶されたかのように、太陽神殿の奥深くは、底冷えのする静寂に包まれていた。
いや、それは完全な静寂ではなかった。四方の精緻な石壁を伝って、地響きのような民衆の鬨の声と、時折建物を激しく揺らす爆音(マスケット銃や大砲の轟音)が、微かな振動として伝わってきている。
サミは、冷たく湿った石の床に膝をついていた。
彼女の小さな手の中には、一本のケーナ(葦の縦笛)があった。旅を共にしてきた、大切な楽器。しかし今のそれは、度重なる過酷な移動と、捕らえられた際の衝撃によって、表面に痛々しいひび割れが幾筋も走っていた。
サミは、そのケーナをそっと唇に当てた。
冷たい竹の感触が、震える唇に伝わる。彼女は野生に近い、鋭敏な直感で悟っていた。外で起きているこの未曾有の動乱、地面を揺らすほどのエネルギー、それは他でもない、ワイラとアトゥックが自分を救い出すために、このクスコの心臓部へと突き進んできている証拠なのだと。
(ワイラ、アトゥック……来てくれたのね。私の声を、信じて……)
胸の奥から、熱い感情が込み上げてくる。しかし、その希望を押し潰すほどの、巨大な絶望の影が、彼女の目の前にそびえ立っていた。
サミの視線の先――神殿の最も神聖とされる祭壇の前に、一人の男が立っていた。
抜き放たれた細身の鋼鉄の剣を構え、微動だにせずに入り口を見据えているその男は、サミの実の兄、サイリだった。
「兄さん……どうして……」
サミの声は、かすれて消えそうだった。
サイリの瞳には、かつて故郷の小さな村で、サミの髪を優しく撫でてくれた面影はひとかけらもなかった。その瞳は、まるで深い、深い灰色の霧に包まれたかのように濁り、完全に光を失っている。彼はスペイン人の宣教師たちによって、徹底的な「再教育」を受け、カトリックの教条と植民地政府の秩序を守るための忠実な人形へと作り変えられていた。
今のサイリにとって、目の前にいる実の妹さえも、キリスト教の秩序を乱す「不純な異端」であり、神聖な神殿(今は教会として使われている)を穢す「神の敵」でしかなかった。
サミの心は、激しく千切れていた。
ワイラたちが来てくれるという狂おしいほどの喜びと希望。その一方で、もし彼らがここに到達すれば、最愛の兄であるサイリと、血を流し合う刃を交えなければならないという、耐え難い現実。
(どうして私たちは、同じ血を分けた兄妹なのに、こんな場所で殺し合わなきゃいけないの? 私たちの神様と、スペイン人の神様は、そんなに仲が悪いの? 違う……そんなわけがない……!)
「兄さん、もうやめて……! どうしてそんなに悲しい瞳をしているの? 私を見てよ、サミだよ! 一緒に牛を追って、山の風を聞いた、サミだよ……!」
サミは涙を流しながら叫んだ。しかし、サイリの横顔は、あたかも冷徹な大理石で彫られた仮面のように、一切の感情を動かさない。ただ、冷たい声が神殿の空間に響いた。
「黙れ、異端の眷属よ。我が名は教会の番人、秩序の守護者。主の聖域を侵す者は、誰であれ容赦はしない。……たとえ、かつて妹と呼んだ狂人であってもだ」
その言葉は、サミの胸にどんな刃よりも深く突き刺さった。サイリの纏う空気は完全に拒絶の色に染まっており、言葉による対話の余地は、すでにどこにも残されていないように思えた。
2
その時だった。
神殿の頑強な木製の巨大な門が、外側からの凄まじい衝撃によって、凄惨な音を立てて内側へと弾け飛んだ。
アトゥックの超人的な突進と、それに続いた民衆の圧倒的な圧力が、何世紀もの間、誰も侵せなかった「聖域」の境界を力任せに粉砕したのだ。立ち込める白煙と硝煙、そして砕け散った木片の向こうから、一人の青年が姿を現した。
「サミッ! 今だ、吹け!」
髪を振り乱し、全身に煤と返り血を浴びたワイラが、叫び声を上げた。その顔は必死そのものだったが、その瞳にはサミを救い出すという絶対的な意志が、太陽のように輝いていた。
ワイラは走り込みながら、背中からギターを取り出し、構えた。
その動作には一瞬の迷いもなかった。彼は自らの魂をすべて指先に集約させるようにして、力強く、激しくギターの弦をかき鳴らした。
――ザンッ!!!
神殿の冷徹な石壁に、異質な、しかし圧倒的に生命力に満ちた音が衝突した。
イントロが響き渡る。
それは、洗練されたクラシックの形式でも、スペインの宮廷で流れるようなお上品な音楽でもない。かつて、アトゥック、ワイラ、サミの三人が、終わりの見えないアンデスの険しい旅路を始めたその日に、焚き火を囲みながら共有した、あの『アンデスへの旅路』の旋律だった。
サミは、ワイラの姿を見た瞬間、胸の奥の震えが止まるのを感じた。
「ワイラ……!」
彼女は袖で乱暴に涙を拭うと、自らの限界を超えて、ひび割れたケーナに全霊の息を吹き込んだ。
ピー――、フウウゥ――。
ひび割れた隙間から空気が漏れ、その音は決して完璧なものではなかった。かすれ、掠れ、時折音程が震える。
しかし、その不完全な、傷だらけの音色こそが、これまでの過酷な運命に翻弄され、傷つきながらも、決して死なさずに守り抜いてきた彼らの「生」の、何よりの証明だった。
高く、天をも突き抜けるようなサミのケーナの音。
そして、大地の底から響く地鳴りのように、民衆の足音と同調して響くワイラのギターの重低音。
二つの、まったく異なる楽器から放たれた音が、神殿の中央で、完璧な調和を伴って重なり合った。
この章もすべてAIが書きました。




