11 引き裂かれた双子、洗脳された兄 5
「……サミ、戻ろう。一度、引くんだ」
物陰から飛び出してきたワイラが、崩れ落ちたサミの細い肩を抱き寄せた。
彼の心もまた、引き裂かれるように痛んでいた。しかし、ここで感情に任せて動けば、全員が捕らえられ、二度と太陽の光を拝めなくなることは明白だった。司祭の手が、すでに背後の合図のために動いているのが見えた。
サミはボロボロと涙を流しながら、ひび割れたケーナを自らの胸に強く抱きしめていた。その身体は、寒さではなく、絶望のあまり小刻みに震えている。
「おい、クソジジイ……」
アトゥックが、闇に潜む司祭を、そして完全に操り人形と化したサイリを、殺意の籠もった瞳で睨みつけた。彼の全身から、これまでにないほどの禍々(まがまが)しいオーラが放たれている。腰のナイフの刃が、蝋燭の光を浴びて妖しく煌めいた。
「覚えとけよ。その石壁ごと、お前らの神殿も、その汚え十字架も、全部ぶち壊してやるからな。サミの兄貴をそんな風にしたこと、地獄の底で後悔させてやる」
アトゥックは吐き捨てるように言うと、ワイラと共にサミを支え、迅速に反転した。
「兵士を呼べ! 異教徒どもを捕らえよ!」
司祭の冷酷な命令が背後で響き、遠くから鉄靴の足音が近づいてくるのが聞こえる。
三人は、背後で重々しく閉ざされる石の扉の音――サイリとの断絶を告げる決定的な音を聞きながら、複雑に入り組んだ地下通路を死に物狂いで駆け抜け、脱出の途に就いた。
クスコの夜は、これまで以上に重く、冷たく彼らを押さえつけようとしていた。
街を覆うスペインの建造物、そびえ立つ教会の尖塔、それらすべてが、原住民たちの歴史を圧殺する巨大な墓標のように見えた。
しかし、夜風に吹かれながら走るワイラの心の中には、絶望とは異なる、ある一つの確信が明確に芽生えていた。
(サイリさんは確かに、あの旋律に反応した)
耳を塞ぎ、苦悶の表情を浮かべたあの姿。あれは、洗脳という冷たい檻の中で、彼の本当の魂が「出してくれ」と暴れていた証拠だ。
彼の魂の深淵では、まだインカの火種は消えていない。サミの音楽は、確実にあの防壁に亀裂を入れたのだ。
ワイラは、走る足を少しだけ緩め、隣でアトゥックに支えられながら俯くサミの姿を見た。彼女の涙はまだ止まらない。しかし、その手はしっかりと、ひび割れたケーナを握りしめている。
自分たちの旅は、これまでスペイン兵の追っ手から逃れるための「逃避」だったのかもしれない。
しかし、今この瞬間、それは明確な目的を持った「奪還」へと変わった。奪うのは領土ではない、富ではない。奪われた彼らの誇りであり、家族の魂だ。
ワイラはクスコの深く昏い夜空を見上げた。
脳裏に浮かぶのは、この地で壮絶な戦いを挑んだ、あの伝説の指導者――トゥパク・アマル二世の力強い顔だった。
かつて彼が、あるいは彼と共に戦った音楽家たちが言った言葉が、ワイラの胸の中で反響する。
『言葉は人を分かつが、音楽は魂の根源を揺さぶる。この絶望という名の石壁を穿つ唯一の武器は、我らの血に流れる音色だ』
ワイラは背中にあるギターの重みを確かめ、心の中で強く誓った。
「俺たちの合奏は、まだ終わってない。サイリさんを、サミを……この大地を取り戻すまで、絶対に弾き続ける」
冷たいアンデスの風が、少年の決意を乗せて、クスコの夜の闇へと消えていく。
引き裂かれた絆の痛みを骨身に刻み、彼らは真の闘いへと足を踏み入れる。それは同時に、来るべき大決戦への静かな、そして熱い序曲となった。
この章もすべてAIが書きました。




