11 引き裂かれた双子、洗脳された兄 4
「サイリ、惑わされるな。それはサタンの誘惑だ」
礼拝堂の奥、漆黒の闇の中から、冷酷な金属音のような声が響き渡った。
その声が空間を支配した瞬間、空気の温度が一段と下がったかのような錯覚を覚えた。
サミのケーナの音が、まるで見えない壁に阻まれたかのように掻き消される。
姿を現したのは、純白の法衣の上に、鈍く光る銀の十字架を首から下げた老人だった。
白髪は整然と切り揃えられ、その皮膚は死人のように青白い。何よりも、その瞳は一切の人間的な感情を排した、氷の塊のようだった。カトリックの司祭。このクスコの教区において、原住民の「矯正」と「教化」を統括する、実質的な支配者の一人だった。
「それはお前を再び暗黒の大地へ引きずり込もうとする、卑しい異教徒の調べだ。主の祈りを唱えよ、サイリ。悪魔の耳を貸してはならぬ」
司祭の低く、しかし威厳に満ちた声が響くと同時に、サイリの身体から劇的に力が抜けていった。
のたうち回っていた苦悶が嘘のように消え去り、彼の腕がゆっくりと耳から離れる。そして、再びあの人形のような、感情の一切存在しない無表情が、その顔を完全に覆い尽くした。
「……アヴェ・マリア、グラティア・プレナ……」
サイリの口から、虚ろなラテン語の祈りが、呪文のように滑り落ちる。
彼の瞳から、先ほど一瞬だけ灯った輝きは完全に消え失せていた。衣服に付いた脂汗だけが、先ほどの激闘の名残として残っている。
呪縛は、サミたちの想像よりも遥かに深く、根深かった。
それは単なる言葉の脅しではない。何年もの間、肉体と精神の限界まで叩き込まれた、恐怖と救済のシステムそのものが、サイリという人間を縛り上げているのだ。
サイリはゆっくりと顔を上げ、冷徹な視線をサミに向けた。
「……去れ。さもなくば、お前たちを聖域を汚した罪人として、兵士たちに引き渡す」
その口から出たのは、自らの意志を完全に放棄した、死人のような宣告だった。そこに、妹への慈悲も、過去への未練も、何一つ残されてはいなかった。
「あ……、あ……」
サミの喉から、言葉にならない掠れた声が漏れた。
彼女は力なく膝から崩れ落ちた。指一本触れられる距離に、あれほど焦がれ続けた兄が立っている。手を伸ばせば、その温もりを確かめられるはずの距離。
なのに、彼の心は、アンデスの険しい山脈をいくつ越えても届かないほど、遥か彼方の暗黒へ隔てられていた。
どれだけ激しく笛を吹いても、どれだけ涙を流しても、目の前の巨大な「壁」には傷一つつけられない。その無力感が、サミの心を粉々に打ち砕いた。
この章もすべてAIが書きました。
この物語のタイトル、アンデスへの旅路は、サミに代々伝えられたインカ王族にまつわる曲という設定ですが、
実は、アニメ母をたずねて三千里のBGMのCDに収められている曲です。三千里のCDはいろいろ出ていますが、
https://amzn.asia/d/09N9k4CX
このCDの音源をイメージしました。
ケーナとギターの合奏です。
アンデスへの旅路で記憶していたのですが、タイトルが変わっているような?
CDの後半部分です。




