9 アクリャたち 3
そんな、精神の死を待つばかりの絶望の闇の中で、唯一、サミにとっての微かな救いの光となったのは、神殿の外周や館の周囲の守衛を務めていた、一人のインディオの青年だった。
彼は、名を名乗ることさえ、衣服を整えることさえ満足に許されない、この巨大な階級社会の底辺に位置する身分だった。アクリャ・ワシの少女たちと言葉を交わすなど、死罪に値する行為であり、到底許されることではない。
しかし彼は、サミが細い腕で、自分の体重ほどもある重い水瓶を運ぶ際、周囲の監視の目がわずかに逸れた一瞬の隙を突き、物言わぬまま、密かにその力強い手で水瓶の底を支え、サミの負担を軽くした。
そしてある日、やはり一瞬の交錯の際、彼はサミの小さな手のひらに、監視の目を盗んで、布に包まれた一握りの干し肉を押し付けた。そして、唇をほとんど動かさず、地を這うような低い声で囁いた。
「……泣くな、サミ。君のあの曲は、我ら虐げられた民の心の中で、今も鳴り続けている。君は、私たちの光だ」
サミは驚き、目を見開いて青年を見た。
青年は、かつてクスコへと続く長い街道の片隅や、ラパスにたどり着くまでの町々で、サミとワイラが旅の資金を得るために奏でていた路上の演奏を聴き、その魂を激しく震わせた民の一人だったのだ。彼らの奏でる「アンデスへの旅路」のメロディは、スペイン人に酷使され、過酷な労働を強いられるインディオたちの間で、密かに希望の歌として語り継がれていた。
彼との、言葉にもならないような短い、刹那の交流だけが、サミにとって、自分がこの冷たい石の要塞で消え去ろうとしている「アクリャ」ではなく、「サミ」という名を持った、愛され、音楽を愛する一人の人間であることを証明してくれる、唯一の標だった。彼が手を貸してくれるからこそ、彼女は毎日の重労働に耐え、ワイラたちへの想いを繋ぎ止めることができた。
しかし、この冷酷な要塞は、そんなささやかな救いの光さえも、無慈悲に、傷口をえぐるような形で奪い去る瞬間を狙っていた。
青年の密かな、しかし必死の支援は、ある冬の夜、音もなく影のように忍び寄ってきたママコナの、異様なほど鋭い観察眼によって、完全に暴かれてしまった。
聖なる、神のものとなるべきアクリャに、下界の卑しい男が私情で触れること、あるいは言葉を交わすこと。それは、このマチュピチュの絶対的な規律において、神に対する最大級の、容赦なき反逆を意味していた。
その報いは死。それも、ただ命を奪うだけではない、周囲に対する強烈な見せしめを含んだ、最も残酷な形での公開処刑を意味していた。
数日の後、サミは、何が起こったのかも分からぬまま、複数の年長の少女たちによって、強引に館の中央にある石造りの広場へと引きずり出された。
眩暈のするような、強烈で、すべてを白日の下に晒す残酷な太陽光が広場を照らしている。
サミが、乱れた髪を振り払って視界を開いた瞬間、彼女の目に飛び込んできたのは、広場の中央に急造された処刑台の上に、両腕を後ろに縛られ、立たされているあの青年の姿だった。彼の顔は、事前の激しい拷問によって無残に腫れ上がり、血にまみれていたが、その瞳だけは、まだ死んでいなかった。
「やめて……! お願い、やめて! あの人は何もしていない! 私が、私が重い水瓶を持てなくて、ただ助けようとしてくれただけなの! 悪いのは私よ! だから、あの人を放して!」
サミは狂ったように叫び、青年のもとへ駆け寄ろうとしたが、その身体はママコナの冷徹な指示を受けた少女たちによって、地面に強く押さえつけられた。
サミの絶叫は、周囲を囲む無機質な、何一つ感情を持たない石壁に空虚に跳ね返るだけで、誰の心にも、この場の空気を一瞬たりとも変えることはできなかった。
周囲を囲むオクタービアをはじめとする少女たちは、まるで行事でも見るかのような、冷ややかで、どこか恍惚とした目で、館の「穢れ」が今まさに取り除かれようとする様を、じっと見つめていた。
青年の細い首に、太く、無情な麻の縄がかけられた。
その瞬間、青年は激しい痛みに耐えながら、顔を上げ、広場の地面に組み伏せられているサミの姿をじっと見つめた。その瞳には、恐怖も、悔恨も、サミに対する恨みの色も、一切なかった。
彼は、静かに、そして信じられないほど誇らしげに、サミに向かって微笑んだ。
その唇は、もう音を出すことはできなかったが、魂の底からの確かな意志を込めて、はっきりとこう動いた。
——『歌え。サミ。お前の歌を、絶やすな。』
ガサリ、という重い衝撃音が広場に響き渡り、青年の身体が、宙へと落とされ、激しく揺れた。
「ああああああああああーーーっ!!」
サミの喉から、人間のものではないような、獣のような悲鳴が上がった。
次の瞬間、彼女はその場に力なく崩れ落ちた。視界が、まるで黒い砂嵐に呑まれるように真っ黒に染まっていく。
(どうして……どうして私の周りの人は、みんな傷つき、死んでいかなければならないの……?)
ラパスの広場で引き裂かれたワイラ、アトゥック、ブランカ。そして今、自分のために命を落とした名もなき青年。一族の誇りも、音楽の力も、この狂った石の檻では何の役にも立たない。心の中で必死に守り続けてきた「サミ」という少女の最後の尊厳が、修復不可能なほど粉々に、音を立てて砕け散る感覚がした。
「……ワイラ……アトゥック……助けて……ブランカ……ごめんなさい……」
この章もすべてAI書きました。
AIも中々やりますね。




