9 アクリャたち 2
それからの日々は、サミの肉体と精神のすべてを、粉々にすり潰していくような厳格な規律の連続だった。
サミが容赦なく放り込まれたのは、「アクリャ・ワシ」——すなわち「太陽の乙女の館」と呼ばれる、高い石壁に囲まれた広大な一画だった。
そこで彼女の前に、絶対的な支配者として君臨したのが、年老いた女官長、ママコナであった。
ママコナの身体は、長年の精進と冷酷な規律によって鍛え上げられ、老齢とは思えないほど一本の鋼のように真っ直ぐに伸びていた。その顔に刻まれた深い皴は、優しさや知性の証ではなく、これまで数多くの少女たちの涙を無視し、その個性を圧殺してきた残酷な歴史の縮図のようだった。
「お前は、選ばれたのだよ。その身に流れる貴きインカの血、そして、聴く者の魂を激しく揺さぶるケーナの音色ゆえにね」
ママコナの声は、薄暗い石室の壁に反響する、冷たい水の雫のようだった。低く、しかし鼓膜の奥へと確実に染み込んでくる冷徹な響き。
彼女は、サミの拒絶の意志を完全に無視し、骨張った長い指でサミの顎を強く、痛いほどの力で持ち上げた。端正だが血の通わない蛇のような瞳で、サミの瞳の奥をじっと覗き込んできた。
「ここは、下界の汚れから完全に切り離された、神聖なる大要塞。すでに帝国が滅び、スペイン人の神が蔓延るあの汚れた下界から隔離された聖域だ。お前は今日という日から、大いなる太陽神インティに仕え、その身をすべて捧げられた『アクリャ』として生きるのだ。下界での卑しい記憶も、愛だの恋だのと抜かしていたあのギター弾きの若者の名も、すべては塵のように忘れ去り、この石床の隙間に捨て去りなさい。お前の身体も、お前の心も、もはやお前だけのものではない。すべては神のもの、我らのものなのだから」
サミの胸を、真っ赤に焼れた鉄の鏝を直接押し当てられたかのような、激しい衝撃と苦痛が襲った。息が詰まり、言葉が出ない。ワイラのことを「卑しい若者」などと呼ばれたことに激しい怒りが湧いたが、ママコナの放つ威圧感に声が出なかった。
アクリャ。それは、サミもかつて父の古い伝承の中で、あるいは旅の途中で耳にしたことがあった。
インカの最盛期において、各地から集められた容姿端麗で、特別な才能を持つ処女たち。彼女たちはこの隔離された館で、神聖な儀式に用いられる最高級の布を織り、神に捧げるためのトウモロコシの酒「チチャ」を造り、一生を純潔のまま神に捧げる存在とされている。
しかし、その美名の裏には、恐るべき血の真実が隠されていた。国家の重大な危機や、最も重要な祭礼の折、彼女たちの一部は、神の怒りを宥め、あるいは最大の加護を得るための「最高の供物」——すなわち、生贄として、その命を絶たれることがあるというのだ。ましてや、今のマチュピチュを支配する者たちは、滅びた祖国の復興を狂信的に願う残党たちだ。彼らが何を企んでいるか、想像するだけで背筋が凍りついた。
(そんな……そんな狂ったことのために、私はラパスから連れてこられたの? ワイラたちと引き離され、ここで死を待てと言うの!?)
しかし、彼女の抗議や絶望など、この館の巨大な歯車を止める役には立たなかった。
翌日から、指先が裂け、血が滲み出るほど細い糸を用い、皇帝や神のみが着用を許される最高級の幾何学模様の織物「クンピ」を織り続ける、地獄のような日々が始まった。
織機の前に座らされ、朝から晩まで、単調で息の詰まる作業を繰り返す。少しでも指の動きが止まれば、あるいは織り目にわずかな乱れが生じれば、背後で見守るママコナの、鞭のように鋭い叱責の声と、容赦のない棒による打擲が飛んできた。
だが、肉体的な疲労や激痛よりも、サミの精神をじわじわと、確実に追い詰めていったのは、共に暮らす他の少女たちから向けられる、冷酷極まりない拒絶の視線と、悪意に満ちた囁きだった。
「ねえ、聞いた? あそこにいる新入り。汚れを知らぬ聖なる乙女の顔をして、外の世界では男と一緒に旅をしていたんですって」
「汚らわしい。神聖なるこのアクリャ・ワシに、あんな下界の垢にまみれた娘が紛れ込むなんて。太陽神様がお怒りになって、私たちの祈りまで届かなくなってしまうわ。王族の末裔だなんて、名ばかりの野良犬よ」
幾何学模様の織機に向かい、必死に糸を通すサミの背中に向かって、毎日、容赦のない毒が浴びせられた。
館にいる少女たちの多くは、幼い頃から「自分たちこそが神に選ばれた特別な存在であり、この純潔を守ることこそが至上の正義である」と徹底的に脳を焼き切られるような教育を受けていた。
彼女たちにとって、外の世界の愛を知り、自由な旅を望むサミの存在は、自分たちの歪んだ信仰心とプライドを脅かす、絶対に許せない異分子だったのだ。彼女たちはサミを徹底的にいじめ抜き、排除することで、自らの純潔と忠誠心を神に対して証明しようとしていた。女性たちの閉鎖空間特有の、陰湿で執拗ないじめが、サミの心を確実に削っていく。
特に、クスコの没落貴族の家柄であることを病的なまでに鼻にかけ、他の少女たちを従えていた年長の少女、オクタービアは、サミに対する敵意を隠そうともしなかった。
ある日、オクタービアは、サミが部屋の隅の敷布の下に、命がけで隠し持っていた古いケーナを見つけ出した。それは、ワイラと共に旅をし、ラパスの祭りでもブランカに吹き方を教えてあげた、サミの旅の思い出そのもの、魂そのものとも言える大切な竹の楽器だった。これだけは、拉致されたときも奇跡的に手元に残っていたのだ。
「あら、これは何かしら?」
オクタービアは、軽蔑に満ちた嘲笑を顔に浮かべ、サミの目の前で、そのケーナを高く掲げた。
「返して! それは私の大切な……!」
サミが立ち上がろうとした瞬間、オクタービアは冷酷な目でサミを見下ろし、そのまま腕を振り下ろして、ケーナを固い石の床へと叩きつけた。
激しい乾いた音を立てて、ケーナの側面に何本もの深いひび割れが走る。
「こんな汚らわしい竹切れ、神聖なここでは不要よ。お前がその卑しい口で発するべきは、神への従順なへつらいの言葉だけ。二度と、そんな下人のものに触るんじゃないわ。次に見つけたら、ママコナ様に報告して、その指を叩き潰してもらうから」
オクタービアはフンと鼻を鳴らし、取り巻きの少女たちを連れて立ち去った。
サミは、夜の冷え切った暗い石室で、月明かりを浴びながら、ひび割れてしまったケーナの傷口を、震える指先で何度も何度もなぞりながら、声を殺して泣き続けた。
涙が、冷たい石床に落ちては吸い込まれていく。
きつく目を閉じれば、今でもワイラの奏でる、あの力強くも包み込むように優しいギターの音色が、アンデスの乾いた風に乗って遠くから聞こえてくるような気がした。
アトゥックの頼もしい冗談、ブランカの無邪気な笑顔。みんなで目指していた、あのクスコへの旅路。しかし、それは手を伸ばしても決して届かない、深い霧の彼方へと消え去った、楽園の幻影にすぎなかった。
この章もAIが書きました。




