6 4人の旅 2
食事をしながら、ワイラはさっき考えていたことをアトゥックに話した。
「アルマジロだって!?あれは美味しいんだぜ」
アトゥックは自分の皿と見比べながらよだれを垂らした。
「それじゃあ、今日はアルマジロ狩りだな」
4人は急いで食事を済ませた。アルマジロは夜行性の動物だが、早朝の今ならもしかしてうろついているかもしれないと思ったからだ。
廃屋を出ると小高い丘が広がっていた。よく見ると、小さい穴が所々に空いていた。
「見ろよ、ちゃんと巣があるじゃないか。こりゃついてるぜ」
アトゥックは舌なめずりをした。まず、ワイラとアトゥックが静かに穴に近寄った。運良く、穴の近くで2匹のアルマジロが、腐って倒れた枯れ木を舐めていた。木についているシロアリを食べているようだった。ワイラが前から、アトゥックが後ろから、アルマジロを挟むようにして取り囲んだ。
1匹のアルマジロはワイラたちにすぐ気づき、穴の方へ逃げたが、もう1匹はワイラたちには気づかずに、長いネバネバした舌でシロアリを引き出すのに夢中になっていた。
アトゥックがしっぽを掴むと、アルマジロは奇声をあげて逃れようと穴を掘り出した。鼻と前足の湾曲した爪でほじり取った土を、後ろ足で反射的に激しく蹴り出したため、アトゥックの目に土が入った。
「早く!ワイラ!!」
アトゥックは目を閉じながらも尻尾を離さなかった。ワイラが胴体に飛びつくと、アルマジロはワイラの腕に噛みつこうと必死でもがいた。ワイラは腰につけていた丈夫な袋をつかむと、慌ててアルマジロの頭にかぶせ、そのまま袋の中へと押し込んだ。
「やった!!!」
アトゥックが歓声をあげた。こうして、ワイラたちはあと2匹のアルマジロを捕まえた。
サミたちのところに戻った頃には、太陽はもう真上に上りかけていた。
「お昼前だというのによく見つかったわね」
ブランカが袋の中を覗いた。元々黄色がかった褐色の3つの甲羅が、太陽の光に当たって金色に輝いていた。甲羅は皮膚が変化したもので、鱗甲板でできていた。
アルマジロが飛び出しそうになったので、慌てて袋を閉めた。
「運が良かったんだ」
そう言うと、ワイラは袋の口をロープでしっかりと縛りつけた。
オルーロの町は目と鼻の先にあった。
4人は二頭立ての荷馬車に乗り込んだ。この荷馬車はあのアンドレスのものだった。ワイラは幼いブランカが旅をするにはこれが必要だと思い、1人残されたブランカに承諾を得て持ってきたのであった。これまで一緒だったラバは旅費に変えてしまっていた。愛着があったが、この際仕方がなかったのだ。
荷馬車の旅は、でこぼこ道でも徒歩よりはるかに楽であった。アトゥックが手綱を握り、他の3人は袋の中でもがいているアルマジロたちを押さえていた。早く売ってしまわなければ、袋が破れてしまいそうだった。
オルーロに差し掛かると、山頂から投げ落とされた午後の日差しがやけにまぶしかった。道のところどころで開かれている露店が目に飛び込んでくる。街の中心に近づくにつれ、道沿いにぎっしりとそれが並んでいた。
アルマジロの売買についてはまだわからなかったが、ここは商業の街であった。ポンチョや帽子、畑の作物や手作りの生活必需品など、様々なものが売買されていた。楽器を並べている店もあった。
「あそこで聞いてみよう」
ワイラが言った。
「でもよー、ケーナやサンポーニャはたくさんあるけど、チャランゴは2つしかないぜ」
アトゥックが心配そうに言った。
「そうだな」
ワイラも首をひねったが、とりあえず聞いてみることにした。
「あの、どこかでアルマジロを買ってくれるところを知りませんか?」
「◯◯☓☓△△……」
ケチュア語ではなかった。サミやアトゥックに教わり、この頃ではワイラもケチュア語で会話できるようになっていたが、目の前の男の言葉は違った。
赤の山高帽にピンク、青、黄色、緑という派手なポンチョをかぶった男は、何を言っているのかわからないというように大きく手を振った。
ワイラたちもこの男の言葉がさっぱりわからなかった。彼はアイマラ語をしゃべるアイマラ族のインディオだった。ボリビアはこのアイマラ族が多かった。かつてインカ帝国を築いたのはインカ族だけではなく、アイマラ族やケチュア族、チパヤ族やウル族(現在は絶滅)など多数の民族があった。このアイマラ族はプレインカ文明の偉大なティアワナコ帝国を築いた民族で、インカ時代に忠誠を誓ったケチュア族とは対照的に、好戦的な気質を持っていた。
男は「言葉が通じないなら話にならん」というような顔つきをしていた。それでもワイラは身振り手振りでこの男を荷馬車まで連れていき、アルマジロを見せた。
すると男の顔が輝いた。そして、さっきまでの態度とは打って変わって、言葉も通じないのにペラペラと喋り出した。ワイラは訳も分からず男の言うことを聞いていたが、なんだかうまくいきそうだと思った。
その見立て通り、男は金網の張った柵にアルマジロを入れると、ワイラにお金を握らせた。ワイラたち、特にアトゥックが深々と頭を下げると、荷馬車をゆっくりと走らせた。
「なあ、その金で食べ物たくさん買おうぜ」
と、アトゥックがお腹を押さえて言った。
「ほんと、わたしももうペコペコ」
ブランカも合わせて言った。しばらく行くと、調理した食べ物と採れたての野菜を売っている店があったので、ワイラは焼きとうもろこしとそら豆の煮物、干し肉、それからじゃがいもや果物などをたくさん買った。
この店のおばさんはケチュア語を喋っていたので、すぐに話が通じた。先刻の男のことも聞いてみた。
「ああ、アイマラの人だね。商売するなら普通はケチュア語やスペイン語を身につけているはずだけどね。あんな派手なのを着て、私もわけわからないよ。でもね、チャランゴはよく売れるんだよ。だから数が少なかったんだろうし、アルマジロを見せたら飛びつくのは当たり前さ」
買ったものを荷馬車まで運んでくれながら、おばさんはサミの方を見て感心したように言った。
「おや、可愛い子だね。私も若い頃はこうだったよ」
そう笑いながら帰っていった。サミは恥ずかしそうに下を向いていた。
ワイラは焼きとうもろこしを片手に荷馬車を走らせた。アトゥックとブランカも焼きとうもろこしを頬張っていた。サミはそれを持ったまま通りを見ていた。
「どうして食べないの?」
ブランカが言った。
「人が多いもの。見られているような気がするの」
「そんなの平気よ。誰も見てないって」
ブランカが大きな口を開けて言った。
「サミはお前とは違うんだよ〜」
アトゥックがからかうようにブランカに言った。
「何よそれ……」
ブランカはむっとして、アトゥックを言い負かすいい言葉はないかと考えていた。
「そうだ、アトゥックとワイラと、どっちがサミの恋人なの?」
子供らしい、あまりにもストレートな言葉だった。
ワイラはギクッとして聞き耳を立てていた。
(そうだ、アトゥックはどう思っているのだろう?)
あの出会った時以来、そんなことはほとんど考えたことがなかった。アトゥックはいい友達だ。自分のサミに対する気持ちははっきりしていた。だから、そんなことは考えたくはなかった。
アトゥックは面食らったように黙り込んだ。ワイラのサミに対する気持ちはよくわかっていた。しかし、自分はどうなんだろう。初めて出会った時の、サミのあの瞳にひきつけられた自分を覚えている。しかしそれ以来、そんな風に考えたことはなかった。ワイラはただの旅の道連れではなく、いい友達だとアトゥックも思っていた。
(俺はワイラに遠慮しているのか?まさか、そんな……)
アトゥックにはよくわからなかった。
ブランカがじっとアトゥックの顔を見ていた。
「ねえ、どっちなの?」
「そんなの、見りゃわかるだろ」
アトゥックはぶっきらぼうに言った。
「じゃあ、ワイラね」
ブランカは勝ったというように言った。
「やっぱりそう思うか?」
アトゥックは、ブランカの目にはワイラのその気持ちの方が強く映るのだろうと思った。そして、それは正しいような気がした。
サミは確かに優しい。そして守ってやりたくなるようなものがあったが、自分のタイプとは違うような気がした。アトゥックはこんなことを考えるのが面倒になってきた。今はそんなことよりも〈インカの宝〉だと思った。
ブランカがサミに聞いた。
「ねえ、ワイラのこと好き?」
「うん。好きよ」
とサミはこっくり頷いた。
ワイラはサミが素直に答えたことに喜びを感じたが、あまりに素直すぎたので、「どういう『好き』なのだろう」とも思った。大抵の場合、本人を目の前にすると、こんなに素直には口に出せないものだから……。
誤字脱字、言い回しが変なところはAIで修正しました。
この章も自力で書きました。




