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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
続編②   新たな脅威と、ふたりの剣

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旅立ちの朝

出発は三日後に決まった。


エミリアにも伝えた。エミリアは「私も行きます」と即答した。


「危ないですよ」


「知っています。でも、これは聖女の仕事の範疇です。院長にも許可を取ります」


「院長が許可しますか」


「します。私が頼んだら、最近は大体通ります」


……エミリアさん、強くなりましたね。

「ガイウスさんという老魔術師も来ます。少し不思議な人ですが、信頼できます」


「わかりました。四人ですね」


「心強いです。よろしくお願いします」


エミリアが少し笑った。「こちらこそ」と言った。



出発前夜、店を片付けながら、父と母に話した。


「少し遠くに行ってきます。一週間くらいで戻ります」


父が少し顔を曇らせた。でも何も聞かなかった。


母が「気をつけて」と言って、保存食をたくさん持たせてくれた。


「お母さん、こんなにいらないですよ」


「レオンさんの分もあるから」


「……ありがとうございます」


母がそっと私の手を握った。「戻っておいで」と言った。


それだけだった。でも、それだけで十分だった。


父は荷物を準備するのを手伝ってくれた。薬草の補助薬を「念のため」と言って入れてくれた。使い方は説明しなかったが、父なりの気遣いだとわかった。


「……行ってきます」


「ああ」


父が短く答えた。目が少し赤かった気がしたが、気づかないふりをした。



夜、レオンが来た。


「明日の準備はできたか」


「はい。あなたは」


「問題ない」


二人でしばらく、暖炉の前に座っていた。


「怖いか」


レオンが聞いた。


「……少し」


「そうか」


「あなたは」


「俺も、少し」


珍しかった。レオンが「怖い」という言葉を使うのは。


……この人も、怖いと思うことがあるんですね。

当たり前なんですが、少し意外でした。

でも、それを隠さずに言ってくれたことが、嬉しかった。

「……一緒に怖がって、一緒に帰ってきましょう」


レオンが少し笑った。


「ああ、そうしよう」


暖炉の火が揺れていた。外では風が吹いていた。


「アリア」


「はい」


「帰ってきたら、また茶館に行こう」


「……約束ですか」


「ああ」


……それは、帰ってこなければ果たせない約束ですね。

だから言ってくれたんだ。

「わかりました。約束です」


しばらく、二人で暖炉の前にいた。火が小さくなった頃、レオンが薪を一本くべた。いつものように、当然のように。


……この人がここにいることが、当たり前になっています。

良いことだと思います。

「……家族には、何と伝えますか」


「少し遠出すると伝える。詳しいことは言わなくていい」


「ご両親は、心配しませんか」


「……いない」


短い言葉だった。私は何も言わなかった。


「騎士団の同僚に一言伝えてから行く。副団長が動くのは不審に思われるかもしれないが、それくらいは仕方ない」


「団長には」


「話した。個人的な動きとして許可してもらった」


「……頼りになります、団長さんは」


「世話になっている人だ」


レオンが短く言った。それ以上の説明はなかったが、言葉の重さでわかった。


翌朝、出発の前にレオンが店の前で待っていた。エミリアも来ていた。ガイウスが少し遅れて現れた。


「遅れてすまない」


「少し遅いですよ、ガイウスさん」


「老体ゆえ」


……昨日まで杖もついていなかったのに、今日は杖をついています。

どこまで本当のことを言っているのか、この人は。

エミリアが私に寄ってきた。「荷物、多くないですか」


「お母さんが持たせてくれたんです。補助薬と保存食」


「お母さんらしいですね」


「エミリアさんは会ったことないですよね」


「アリアさんから聞いています。温かい人だと」


「……はい、温かい人です」


四人で街を出た。冬の朝の光が、石畳を白く照らしていた。


街を出るとき、振り返った。薬草屋の看板が見えた。父が戸口に立って、手を上げた。


私も手を上げた。


母が父の隣に出てきて、二人で見送ってくれた。何も言わなかった。


……行ってきます。

戻ってきます。

絶対に。

レオンが隣にいた。


「……大丈夫か」


「はい。大丈夫です」


「そうか」


エミリアが「いい家族ですね」と言った。


「そうですね」


「……私も、帰ったら院長に会いに行こうと思います。もっと変えたいことがあって」


「いい考えですね」


ガイウスが「では、急ごう。日が高くなる前に国境まで進みたい」と言った。


「老体にしては速いですね」


「必要なときは動ける」


……なんだかんだ、頼りになる人です。この老魔術師は。

道中、ガイウスが色々と話してくれた。ヴォルドの弱点のこと、塔の構造のこと、魔力の流れのこと。


「……よく覚えていますね、百年前のことを」


「忘れられないからな」


「……後悔しているんですか」


「止められなかったことは、ずっと後悔している。だが、今日ここにいることは後悔していない」


ガイウスが前を向いたまま言った。


……百年間の後悔を、今日終わらせに来た。

それがこの人の旅の理由なんですね。

国境が近づくにつれ、空気が変わり始めた。レオンが少し眉を寄せた。


「……魔力の歪みがわかりますか」


「肌でわかる。重い」


「これから先が本番です。気をつけてください」


「ああ」

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