二人で話した夜
ガイウスが去った後、私はレオンに話した。
全部、正直に。ガイウスのこと、ヴォルドのこと、自分の聖力がなければ止められないかもしれないこと。
レオンは黙って聞いていた。途中で口を挟まなかった。表情も変わらなかった。でも、目が真剣だった。
話し終えると、しばらく沈黙があった。
レオンが暖炉の火を見て、少しの間、何かを考えていた。
私は待った。急かさなかった。この人が話す前に考える人だとわかっているから。
「……危険か」
「そこそこ危険だと思います」
「そこそこ、とは」
「力の差から言えば、私の方が強いはずです。でも、百年前の魔術師の力の規模を、私は実際に見ていない。想定外のことが起きる可能性はあります」
「想定外とは」
「ガイウスさんが言っていた『聖力を吸収する』という点が、一番の懸念です。使い方を誤ると、逆に力を奪われる可能性がある」
レオンが少し目を伏せた。
……怒っているのかな、と思った。
「行くな」と言われるのかな、と思った。
「……俺も行く」
「え」
「お前一人で行かせるつもりはない」
「でも、魔術師相手に剣は——」
「お前の隣にいると言った。それは、こういうときも含む」
まっすぐな目だった。迷っている様子が、まったくなかった。
……この人は、いつもこうです。
私が怖いと思っていることを、当然のように隣で引き受けようとします。
「……危ないですよ」
「知っている」
「私が守りますよ」
「それは頼む。だが俺も守る」
「私の方が強いですよ、多分」
「それでも」
それだけだった。それ以上の言葉は必要なかった。
私はしばらく黙っていた。それから、小さく笑った。
「……わかりました。一緒に行きましょう」
「ああ」
レオンが少し表情を緩めた。安心したような顔だった。
……この人は、私が一人で行こうとすることが怖かったんですね。
私が危険なんじゃなくて、一人でいることが。
……それは、私も同じです。
◆
「一つだけ聞いていいか」
「はい」
「お前は、怖くないのか」
少し驚いた。レオンがこういうことを直接聞くのは珍しかった。
「……怖いです。百年前の相手というのは、規模がわかりません。一年前の魔瘴よりずっと大きな存在かもしれない」
「それでも行くのか」
「行かなかったら、もっと多くの人が怖い目に遭います。そちらの方が、嫌です」
レオンがしばらく私を見た。
「……そういう人だと、わかっていた」
「どういう意味ですか」
「放っておけない人だということは、最初から知っていた。だから一緒に行く」
……最初から。
私が厄介ごとを放っておけない性分だと、最初からわかっていて、隣にいてくれているんですね。
……ありがとうございます。
「……一つ聞いていいですか」
「何だ」
「怖いと言ってくれましたね。さっき」
「ああ」
「何が怖いんですか」
レオンが少し間を置いた。
「……お前が、戻ってこなかった場合のことを考えると、怖い」
……あ。
そういうことを言いますか、この人は。
さらっと。
「……帰ります。約束します」
「ああ。俺も帰る」
「一緒に帰りましょう」
「ああ」
短い言葉だったが、それで全部だった。暖炉の火が少し明るくなった気がした。
「準備は、何が要りますか」
「体力と、剣と、お前の薬草補助薬があれば足りる」
「補助薬は多めに持っていきます。あと……エミリアさんにも声をかけます。一人より二人の方がいいですし、彼女の聖力は私とは別の方向で役に立ちます」
「わかった」
「出発は三日後でどうですか。準備の時間が欲しいので」
「問題ない」
レオンが立ち上がった。帰る前に、少し私を見た。
「……無理をするな」
「しません」
「信じる」
……信じる、と言う。
この人はいつも、そうやって手放してくれます。縛らずに。
それが、一番信頼できると思います。
「……ありがとうございます。帰ります」
「送る」
「大丈夫ですよ、近いので」
「送る」
繰り返した。それで話は終わった。
……この人に「大丈夫」は通じません。
でも、それも嬉しいです。
帰り道、石畳を並んで歩いた。月明かりが道を照らしていた。
「……三日後、絶対に来てください」
「当然だ」
「遅刻しないでください」
「……するつもりはない」
「ガイウスさんが遅れるかもしれないので、あなたには早めに来ていてほしいんです」
「……早めに行く」
……しっかりしてくれると思います。
信頼しています。
薬草屋の前まで戻ると、レオンが「入れ」と言った。
「え、もう遅いですよ」
「少しだけ」
戸を開けると、父が起きていた。
「……ガイウスさんが来て、話していましたよ。少し遅くなりました」
父が私を見て、それからレオンを見た。何も言わなかった。ただ、お茶を三人分入れた。
三人でしばらくお茶を飲んだ。父もレオンも、あまり話さなかった。でも、それで十分な夜だった。
……この家族は、言葉が少ないです。
でも、その分だけ、ここにいることが言葉の代わりになります。
「遅いから今夜はもう寝なさい」と父が言った。
レオンが立ち上がった。「お邪魔しました」
「いや。来てよかった」
父が短く言った。レオンが少し頭を下げた。




