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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
続編②   新たな脅威と、ふたりの剣

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二人で話した夜

ガイウスが去った後、私はレオンに話した。


全部、正直に。ガイウスのこと、ヴォルドのこと、自分の聖力がなければ止められないかもしれないこと。


レオンは黙って聞いていた。途中で口を挟まなかった。表情も変わらなかった。でも、目が真剣だった。


話し終えると、しばらく沈黙があった。


レオンが暖炉の火を見て、少しの間、何かを考えていた。


私は待った。急かさなかった。この人が話す前に考える人だとわかっているから。


「……危険か」


「そこそこ危険だと思います」


「そこそこ、とは」


「力の差から言えば、私の方が強いはずです。でも、百年前の魔術師の力の規模を、私は実際に見ていない。想定外のことが起きる可能性はあります」


「想定外とは」


「ガイウスさんが言っていた『聖力を吸収する』という点が、一番の懸念です。使い方を誤ると、逆に力を奪われる可能性がある」


レオンが少し目を伏せた。


……怒っているのかな、と思った。

「行くな」と言われるのかな、と思った。

「……俺も行く」


「え」


「お前一人で行かせるつもりはない」


「でも、魔術師相手に剣は——」


「お前の隣にいると言った。それは、こういうときも含む」


まっすぐな目だった。迷っている様子が、まったくなかった。


……この人は、いつもこうです。

私が怖いと思っていることを、当然のように隣で引き受けようとします。

「……危ないですよ」


「知っている」


「私が守りますよ」


「それは頼む。だが俺も守る」


「私の方が強いですよ、多分」


「それでも」


それだけだった。それ以上の言葉は必要なかった。


私はしばらく黙っていた。それから、小さく笑った。


「……わかりました。一緒に行きましょう」


「ああ」


レオンが少し表情を緩めた。安心したような顔だった。


……この人は、私が一人で行こうとすることが怖かったんですね。

私が危険なんじゃなくて、一人でいることが。

……それは、私も同じです。


「一つだけ聞いていいか」


「はい」


「お前は、怖くないのか」


少し驚いた。レオンがこういうことを直接聞くのは珍しかった。


「……怖いです。百年前の相手というのは、規模がわかりません。一年前の魔瘴よりずっと大きな存在かもしれない」


「それでも行くのか」


「行かなかったら、もっと多くの人が怖い目に遭います。そちらの方が、嫌です」


レオンがしばらく私を見た。


「……そういう人だと、わかっていた」


「どういう意味ですか」


「放っておけない人だということは、最初から知っていた。だから一緒に行く」


……最初から。

私が厄介ごとを放っておけない性分だと、最初からわかっていて、隣にいてくれているんですね。

……ありがとうございます。

「……一つ聞いていいですか」


「何だ」


「怖いと言ってくれましたね。さっき」


「ああ」


「何が怖いんですか」


レオンが少し間を置いた。


「……お前が、戻ってこなかった場合のことを考えると、怖い」


……あ。

そういうことを言いますか、この人は。

さらっと。

「……帰ります。約束します」


「ああ。俺も帰る」


「一緒に帰りましょう」


「ああ」


短い言葉だったが、それで全部だった。暖炉の火が少し明るくなった気がした。


「準備は、何が要りますか」


「体力と、剣と、お前の薬草補助薬があれば足りる」


「補助薬は多めに持っていきます。あと……エミリアさんにも声をかけます。一人より二人の方がいいですし、彼女の聖力は私とは別の方向で役に立ちます」


「わかった」


「出発は三日後でどうですか。準備の時間が欲しいので」


「問題ない」


レオンが立ち上がった。帰る前に、少し私を見た。


「……無理をするな」


「しません」


「信じる」


……信じる、と言う。

この人はいつも、そうやって手放してくれます。縛らずに。

それが、一番信頼できると思います。

「……ありがとうございます。帰ります」


「送る」


「大丈夫ですよ、近いので」


「送る」


繰り返した。それで話は終わった。


……この人に「大丈夫」は通じません。

でも、それも嬉しいです。

帰り道、石畳を並んで歩いた。月明かりが道を照らしていた。


「……三日後、絶対に来てください」


「当然だ」


「遅刻しないでください」


「……するつもりはない」


「ガイウスさんが遅れるかもしれないので、あなたには早めに来ていてほしいんです」


「……早めに行く」


……しっかりしてくれると思います。

信頼しています。

薬草屋の前まで戻ると、レオンが「入れ」と言った。


「え、もう遅いですよ」


「少しだけ」


戸を開けると、父が起きていた。


「……ガイウスさんが来て、話していましたよ。少し遅くなりました」


父が私を見て、それからレオンを見た。何も言わなかった。ただ、お茶を三人分入れた。


三人でしばらくお茶を飲んだ。父もレオンも、あまり話さなかった。でも、それで十分な夜だった。


……この家族は、言葉が少ないです。

でも、その分だけ、ここにいることが言葉の代わりになります。

「遅いから今夜はもう寝なさい」と父が言った。


レオンが立ち上がった。「お邪魔しました」


「いや。来てよかった」


父が短く言った。レオンが少し頭を下げた。


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