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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
続編①   ふたりの、ごく普通の日常

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非番の使い方

レオンには、非番の日の使い方に問題があった。


問題というのは、非番のたびに薬草屋に来ることだ。


最初の頃は「薬草を買いに」来ていた。次に「配達の手伝い」と言って来た。その次は「採取に付き合う」と言って来た。いつの間にか理由がなくなって、「非番だから来た」というだけで来るようになった。


父は喜んでいた。母も喜んでいた。私は困っていた。


……困っているというのは、半分嘘です。

半分本当です。

全体的には、嬉しいんですが。この気持ちの処理が、まだ上手くできていないんです。

その日、レオンは朝から来た。


「今日も非番ですか」


「ああ」


「三日連続ですね」


「たまたまだ」


……騎士団は大変なはずなのに、非番が三日続くとは不思議ですね。

言わないでおきます。言っても「たまたまだ」と繰り返されるだけとわかっているので。

「今日は何をするつもりですか」


「お前の仕事を手伝う」


「今日は特に重い配達も採取もないですよ」


「そうか」


「……では、調合の手伝いでもしてもらいますか」


「わかった」


……この人は「帰る」と言う選択肢が存在しないんでしょうか。


薬草の調合を手伝ってもらったことは、これまでなかった。


レオンに手順を教えながら、私は少し心配した。指先の作業は繊細で、力仕事に慣れた騎士には難しいかもしれない。


しかし杞憂だった。


レオンは一度教えたことを正確に再現した。手の動きが安定していて、乱暴さがまったくない。剣の稽古で培った集中力と手の制御が、細かい作業にも活きているのだろう。


「……上手ですね」


「剣と同じだ。丁寧にやれば形になる」


なるほど、と思った。


しばらく二人で黙って作業した。薬草の香りが漂っていた。窓から日差しが入ってきた。朝の光が作業台を照らして、薬草の葉が少し透けて見えた。


「アリア」


「はい」


「これは何の薬になる」


手元の調合品を見て、私は答えた。


「頭痛薬です。ヒール草とシルバーリーフを合わせると痛みを和らげる成分が出て——」


説明している途中で、レオンが私の手元を覗き込んできた。近かった。


「……近いです」


「聞こえなかった」


「聞こえていたと思いますよ」


「聞こえなかった」


……この人は時々、こういうことをします。

嘘だとわかっているのに、なぜか強く言えなくなります。

困ります。本当に。

「……ヒール草の成分が神経の炎症を抑えて、シルバーリーフが血流を改善します。二つを合わせることで、単独より効果が高まります」


「なるほど」


「人によって効き方が違うので、初めて使う人には少量から試してもらいます」


「丁寧な仕事だ」


また、さらっとこういうことを言う。褒めるつもりで言っているのかどうかも分からない自然な口調で。


……ありがとうございます。

それだけは、心の中で言います。

「一つ質問していいですか」


「何だ」


「なぜ薬草の調合を覚えようとするんですか。騎士団でもそれほど必要ではないでしょう」


レオンが少し手を止めた。


「お前のそばにいるためだ」


「……それは、どういう意味ですか」


「役に立てれば、また来る理由になる」


……来る理由を、わざわざ作ろうとしているんですか。

もう来る理由なんていらないのに。

でも、そういうことを言う人です。この人は。

私はそれ以上何も言わずに、調合の続きをした。レオンも黙って手伝った。


窓の外で鳥が鳴いた。薬草の匂いがした。いつもと同じ朝だった。


でも、なんとなく、今日の朝は少し違って見えた。



昼過ぎに父が作業場を覗いた。


「レオンさん、今日も来てるね」


「非番だそうです」


「そうか」


父がちらりとレオンを見て、満足そうな顔で引っ込んだ。


……何ですか、その顔は。

夕方、レオンが帰る前に言った。


「また来ていいか」


「……来ていいですよ」


「非番のたびに来る」


「それは知っています」


「これからも来る」


「……それも、知っています」


……だから、ずるいと言っているんです。

こういう言い方をされると、困ります。嬉しくて。

レオンが帰った後、作業台を拭きながら、私は少し考えた。


この人が来るたびに、何かが少し積み重なっていく気がする。薬草の知識でも、仕分けの技術でも、そういう実用的なものじゃなくて、もっと別の何かが。


……積み重なったものが、何なのかは、もうわかっています。

処理が、追いついていないだけです。

翌朝、作業場の掃除をしながら、ふと前世のことを思い出した。


前世では、誰かに「また来る」と言ってもらえることが、ほとんどなかった。仕事の場では「また連絡します」という言葉が飛び交っていたが、それは社交辞令だとわかっていた。本当にまた来てくれる人は、ほとんどいなかった。


……この人は、本当に来ます。

毎回、必ず。約束したわけでもないのに。

それが、前世の私にはなかったものです。

掃除が終わって、薬草の仕分けを始めた。手を動かしながら、少し笑えた気がした。


今日また来るかもしれない。そう思いながら仕分けをするのは、なんだか悪くなかった。


それどころか、少し、楽しかった。


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