非番の使い方
レオンには、非番の日の使い方に問題があった。
問題というのは、非番のたびに薬草屋に来ることだ。
最初の頃は「薬草を買いに」来ていた。次に「配達の手伝い」と言って来た。その次は「採取に付き合う」と言って来た。いつの間にか理由がなくなって、「非番だから来た」というだけで来るようになった。
父は喜んでいた。母も喜んでいた。私は困っていた。
……困っているというのは、半分嘘です。
半分本当です。
全体的には、嬉しいんですが。この気持ちの処理が、まだ上手くできていないんです。
その日、レオンは朝から来た。
「今日も非番ですか」
「ああ」
「三日連続ですね」
「たまたまだ」
……騎士団は大変なはずなのに、非番が三日続くとは不思議ですね。
言わないでおきます。言っても「たまたまだ」と繰り返されるだけとわかっているので。
「今日は何をするつもりですか」
「お前の仕事を手伝う」
「今日は特に重い配達も採取もないですよ」
「そうか」
「……では、調合の手伝いでもしてもらいますか」
「わかった」
……この人は「帰る」と言う選択肢が存在しないんでしょうか。
◆
薬草の調合を手伝ってもらったことは、これまでなかった。
レオンに手順を教えながら、私は少し心配した。指先の作業は繊細で、力仕事に慣れた騎士には難しいかもしれない。
しかし杞憂だった。
レオンは一度教えたことを正確に再現した。手の動きが安定していて、乱暴さがまったくない。剣の稽古で培った集中力と手の制御が、細かい作業にも活きているのだろう。
「……上手ですね」
「剣と同じだ。丁寧にやれば形になる」
なるほど、と思った。
しばらく二人で黙って作業した。薬草の香りが漂っていた。窓から日差しが入ってきた。朝の光が作業台を照らして、薬草の葉が少し透けて見えた。
「アリア」
「はい」
「これは何の薬になる」
手元の調合品を見て、私は答えた。
「頭痛薬です。ヒール草とシルバーリーフを合わせると痛みを和らげる成分が出て——」
説明している途中で、レオンが私の手元を覗き込んできた。近かった。
「……近いです」
「聞こえなかった」
「聞こえていたと思いますよ」
「聞こえなかった」
……この人は時々、こういうことをします。
嘘だとわかっているのに、なぜか強く言えなくなります。
困ります。本当に。
「……ヒール草の成分が神経の炎症を抑えて、シルバーリーフが血流を改善します。二つを合わせることで、単独より効果が高まります」
「なるほど」
「人によって効き方が違うので、初めて使う人には少量から試してもらいます」
「丁寧な仕事だ」
また、さらっとこういうことを言う。褒めるつもりで言っているのかどうかも分からない自然な口調で。
……ありがとうございます。
それだけは、心の中で言います。
「一つ質問していいですか」
「何だ」
「なぜ薬草の調合を覚えようとするんですか。騎士団でもそれほど必要ではないでしょう」
レオンが少し手を止めた。
「お前のそばにいるためだ」
「……それは、どういう意味ですか」
「役に立てれば、また来る理由になる」
……来る理由を、わざわざ作ろうとしているんですか。
もう来る理由なんていらないのに。
でも、そういうことを言う人です。この人は。
私はそれ以上何も言わずに、調合の続きをした。レオンも黙って手伝った。
窓の外で鳥が鳴いた。薬草の匂いがした。いつもと同じ朝だった。
でも、なんとなく、今日の朝は少し違って見えた。
◆
昼過ぎに父が作業場を覗いた。
「レオンさん、今日も来てるね」
「非番だそうです」
「そうか」
父がちらりとレオンを見て、満足そうな顔で引っ込んだ。
……何ですか、その顔は。
夕方、レオンが帰る前に言った。
「また来ていいか」
「……来ていいですよ」
「非番のたびに来る」
「それは知っています」
「これからも来る」
「……それも、知っています」
……だから、ずるいと言っているんです。
こういう言い方をされると、困ります。嬉しくて。
レオンが帰った後、作業台を拭きながら、私は少し考えた。
この人が来るたびに、何かが少し積み重なっていく気がする。薬草の知識でも、仕分けの技術でも、そういう実用的なものじゃなくて、もっと別の何かが。
……積み重なったものが、何なのかは、もうわかっています。
処理が、追いついていないだけです。
翌朝、作業場の掃除をしながら、ふと前世のことを思い出した。
前世では、誰かに「また来る」と言ってもらえることが、ほとんどなかった。仕事の場では「また連絡します」という言葉が飛び交っていたが、それは社交辞令だとわかっていた。本当にまた来てくれる人は、ほとんどいなかった。
……この人は、本当に来ます。
毎回、必ず。約束したわけでもないのに。
それが、前世の私にはなかったものです。
掃除が終わって、薬草の仕分けを始めた。手を動かしながら、少し笑えた気がした。
今日また来るかもしれない。そう思いながら仕分けをするのは、なんだか悪くなかった。
それどころか、少し、楽しかった。




