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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
番外編②   エミリアの聖女院日記

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月に一度の時間

魔瘴が収まってから、月に一度の食事が続いた。


ある日、食堂でアリアが焼き栗の入った袋を持ってきた。


「レオンが買ってきてくれたんです。多すぎたので」


「……レオンさんが」


「はい。最近やたらと食べ物を買ってくるんです。私が足を止めるたびに」


……それは、完全に好意です。アリアさん。

「気づいていないんですか」


「何をですか」


「……いえ、なんでも」


エミリアは焼き栗を一つ食べた。甘くておいしかった。


「アリアさんは、幸せですか」


少し唐突な質問だった。アリアが少し考えた。窓の外の光を見て、手元のお茶を見て、それからエミリアを見た。


「……幸せです。前世も今世も、こんなに穏やかな気持ちになったことはなかったので」


「よかった」


「エミリアさんは?」


今度はエミリアが考える番だった。


「……私も、最近、少し変わりました。院長に申し出たことがいくつか通り始めて、地方への派遣が少し増えました」


「それはすごい」


「まだ小さな変化ですけど。でも、言い続ければ変わると、思えるようになりました。一人で言っていたのが、同じように思っている人が他にもいるとわかって、少し楽になりました」


……それはきっと、アリアに会ったからだ。

この人が自分の意志で立っているのを見て、私も変わりたいと思った。

「……友達になってよかったです」


エミリアが言ったら、アリアが少し笑った。


「私もです。毎月、楽しみにしています」


「私もです」


二人でしばらく、焼き栗を食べた。


甘くておいしかった。レオンさんが買ってきたものだ、と思ったら少し可笑しかった。あの無口な副団長が、アリアが足を止めるたびに何かを買ってくる。


……きっとアリアさんはまだ、あまり気づいていない。

でも、わかる日が来るといいな、と思う。

もう来ているかもしれないけれど。

帰り際、アリアが包みを持たせてくれた。


「残った薬草茶の葉です。院でも飲めますよ」


「……ありがとうございます」


「また来月」


「はい、また来月」


温かい包みを抱えて、エミリアは帰り道を歩いた。


空が夕暮れに染まり始めていた。橙色と紫が混ざった、きれいな空だった。


院に戻れば、また夜の業務が待っている。報告書を書いて、明日の依頼の準備をして、就寝は二十二時。毎日同じ。


でも、今日一日は、昨日とは少し違う一日だった。


……友人がいる、ということが。

こんなに毎日を違うものにするとは、思っていませんでした。

院の部屋に戻って、薬草茶の葉を棚の上に置いた。小さな包みだったが、なんだか存在感があった。


明日の朝、これを淹れてみよう。礼拝の前に、少しだけ。


……来月も、また会いに行こう。


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