表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
番外編②   エミリアの聖女院日記

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/46

初めて会った日

店に入ったとき、薬草の匂いがした。棚にきれいに並んだ薬草の束、清潔な作業場、整えられた道具たち。手入れの行き届いた店だった。


奥からアリア・ヴェルメールが出てきた。エミリアより一つ年上の、落ち着いた雰囲気の娘だった。警戒しているのかと思ったが、どこか自然体で、笑顔に作り物の感じがなかった。


「あなたが、先日の聖光の源だと思っています」


単刀直入に言った。エミリアは遠回しな会話が得意ではない。


アリアが少し考えて、「……そうです」と答えた。


……正直な人だ。

もっと否定すると思っていた。「何のことですか」とか「私には関係ない話です」とか。

でもあっさりと認めた。

「やはり。……あなたの力、すごかったです。私には、ああはできない」


「あなただって十分な力をお持ちですよ」


「違います」


エミリアは自分の力の限界を知っていた。訓練を重ねて、今の自分が出せる最大値を把握していた。そして、アリアの力がそれをはるかに超えていることも、感じてわかった。


なぜ隠しているのか聞いた。アリアが話してくれた。制度への恐怖、自分の意志で生きたいという気持ち。


聞きながら、エミリアは自分のことを考えていた。


……私は、選んでここにいる。

でもそれは、他に選択肢がなかっただけかもしれない。

アリアには選択肢があって、逃げた。私には選択肢がなくて、従った。

どちらが正しいかなんて、わからない。でも——どちらも、本物の選択だと思う。


帰り際、エミリアは口を開いた。


「友達になってもらえますか」


自分で言っておいて、少し恥ずかしかった。でも、言わずにいられなかった。こんな風に自分の言葉で話してくれる人と、ちゃんと友人になりたかった。


アリアが「もうなってますよ」と笑った。


……もうなってる。

そう言われたのが、なぜかとても嬉しかった。

聖女院に戻りながら、エミリアは少し足取りが軽くなっているのに気づいた。


夕暮れの石畳が橙色に染まっていた。いつもと同じ道なのに、少し違って見えた。


明日も朝五時に起きて、礼拝をして、訓練をする。それは変わらない。でも今日、何かが変わった気がした。


……友人、か。

聖女院の外に、友人ができた。

それがこんなに、胸のあたりを温かくするものだとは思わなかった。

院の門をくぐるとき、空を見上げた。夕星が一つ、出始めていた。


……また来よう。

また話しに行こう。それだけで、明日の朝が少し楽しみになる。

今日初めて「友達になってもらえますか」と誰かに言った。それも院の外の人間に。自分でも驚いている。でも、言って正解だったと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ