隣にいる理由
魔瘴の夜、アリアが全力で力を解放したのを見た。
白い光が夜を割って、無数の魔物が退いて、遺跡まで道ができた。
その光の中心にアリアが立っていた。
……きれいだった。
きれいで、強くて、自分の意志で立っていた。
制度に従うからでも、命令されたからでもなく、自分が守りたいものを守るために、ここに立っていた。
調査官が詰め寄ったとき、前に出た。
止めるためではなかった。アリアが自分の言葉で言えるように、隣にいるためだった。
アリアは「私のものです」と言った。
声が震えていなかった。
……この娘は、強くなった。
いや、最初から強かったんだ。
ただ、一人で抱えていたものを、やっと下ろした。
◆
夜明けの石畳で、言った。
「俺の隣にいろ」
アリアが「……それは、どういう意味ですか」と聞いた。
「そのまんまの意味だ。国に縛られるなら言わない。俺の隣に、お前の意志で、いてくれるかと聞いている」
アリアがしばらく黙っていた。
朝の光の中で、どんな顔をしているのか気になった。でも、急かさなかった。
それから、少し笑って、「……いいですよ」と言った。
「いいですよ、とはどういう意味だ」
「そのまんまの意味です」
……真似するな。
でも、まあ。
そのまんまの意味なら、それでいい。
朝の光の中で、アリアが店の扉を開けた。
俺はその隣に立っていた。
薬草の匂いがした。いつもと同じ匂いだった。
でも何かが違った。
……最初の夜、あの裏路地で。
「妙な娘だ」と思った。
今でも思っている。
でも今は——妙だろうと何だろうと、この娘の隣が、俺の場所だ。
――――◆――――
完
番外編②「エミリアの聖女院日記」へ続く




