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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
番外編①   騎士は気づかなかった ―レオン視点―

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全部知って、それでも

正体を知ったのは、あの夜だった。


白い光が路地を染めた瞬間、全部わかった。


最初の夜から薄々感づいていた。あの光、あの熱、傷の塞がり方。薬草でできることではなかった。聖力だ、とは思っていた。でも確信はなかった。今夜の光を見て、確信した。


……聖女だったのか。

だから隠していたのか。

十二年間、ずっと一人で抱えてきたのか。

アリアが誤魔化そうとした。笑って、「これにはいろいろ事情が——」と言いかけた。


遮った。


「……お前が聖女か」


「……はい」


「ずっと隠してたのか」


「……はい」


アリアが俯いた。謝る言葉を探しているような、怖がっているような顔だった。責められると思っているのだろう。


……怒るべきなのか。

騙されていたと、そう思うべきなのか。

でも不思議と、怒りは湧いてこなかった。


代わりに思ったのは——この娘は、ずっとしんどかっただろう、ということだった。


十二年間。ひとりで抱えて。笑って誤魔化して。信頼できる相手もなく。


……それは、しんどい。

俺が家族の話を誰にも言えなかった十二年間と、同じくらい、しんどかったはずだ。

「……ずっと、しんどかっただろ」


アリアが顔を上げた。


泣きそうな目をしていた。


……泣いていい。

全部話してくれ。

俺はここにいる。


全部聞いた。


前世の話。転生の話。五歳で力が発覚したこと。制度が怖くて十二年間隠し続けたこと。俺の家族の話を聞いてから罪悪感を抱えていたこと。


聞きながら、思った。


……この娘は、俺のことを考えていてくれたのか。

俺が気づかなかっただけで、ずっと。

「俺の家族のことを、気にしてたのか」


「……はい。あなたの話を聞いてから、ずっと」


「お前のせいじゃない」


これは本心だった。


アリアが逃げていたのは、俺が憎んでいた制度から逃げていたのと、同じことだった。方法が違っただけで。俺は力をつけることで抵抗した。アリアは隠すことで抵抗した。向いていた方向は同じだった。


だから責める気にはなれなかった。


そして——もう一つ、思っていたことを言った。


「聖女だから側にいたいんじゃない」


まっすぐに、目を見て。


「お前だから側にいたい。それだけだ」


アリアが固まった。


「……それは、どういう意味ですか」


「そのまんまの意味だ。わからないなら近づいて説明する」


「……近づかないでください」


一歩、近づいた。


アリアは避けなかった。


……よかった。

避けなかった。


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