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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
番外編①   騎士は気づかなかった ―レオン視点―

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距離が縮まった夜

アリアが避け始めたとき、最初は理由がわからなかった。


来るたびに作業場に引っ込んでいる。返事が短い。目を合わせる時間が減った。何かまずいことをしたかと考えたが、思い当たらなかった。


……俺が何かしたか。

していないとは言い切れないが、心当たりがない。

二週間我慢して、作業場まで行った。


「ここ二週間、俺が来るたびに逃げてる」


「逃げてません。たまたま忙しいだけです」


「今も忙しいか」


アリアが手元の薬草を見た。それから、少し間を置いて「……少し、待ってもらえますか」と言った。


振り返った顔が、少し困っていた。こういう顔をするんだな、と思った。普段は落ち着いているのに、内側で何かを抱えているときだけ、こうなる。


「あなたが悪いわけじゃないんです。ただ、少し整理したいことがあって。私には、あなたに話せていないことがいくつかあります。それが、少し、重くて」


……隠しているのは、知っていた。

最初の夜から、ずっと知っていた。

でも、それを問い詰める気にはなれなかった。

「そうか」


「……それだけですか」


「言いたくないことを無理に聞くつもりはない」


「でも……知りたくないんですか」


意地の悪い問い方だった。でも、答えた。


「知りたいかどうかで言えば、知りたい。だが、お前が話せる状態になってからでいい」


アリアが少し黙った。


……待つのは苦じゃない。

それは本当のことだった。

この娘が話してくれる日を、俺は待てる。


聖女制度の騒動があった夜、気がついたら店に向かっていた。


疲れていた。一日中群衆の対応をして、ろくに食事もできていなかった。部屋に帰れば良かったのに、足が勝手に動いていた。


なぜ店に来たのかは、自分でもよくわかっていなかった。


アリアがお茶を出してくれた。


「お茶、飲んでいきますか」


断ろうとして、「もらう」と言っていた。


湯気を見ながら、自分でも驚くことを話した。


親父と妹のことを。村の流行り病のことを。聖女が来なかったことを。


……誰かに話したのは、初めてだった。

同僚には言えなかった。上官にも言えなかった。言ったところで、何も変わらないとわかっていたから。

なぜこの娘には言えたのか、今もよくわからない。

ただ——この娘は、話したら受け取ってくれる気がした。それだけだ。

「なんで俺はお前にこんな話をしてるんだ」


アリアが「聞きたかったので」と言った。


それだけだった。


でも、その「聞きたかった」という言葉が、ずっと頭に残った。


……聞きたかった、か。

俺の話を、聞きたかった。

それだけで、なぜこんなに気持ちが楽になるんだ。


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