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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
番外編①   騎士は気づかなかった ―レオン視点―

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草原の日

草原でアリアを見つけたとき、正直、驚いた。


部下のラウルが訓練中に草原へ消えたと聞いて追いかけたら、遠くで金属音と魔物の鳴き声がした。急いで向かったら、ラウルが三体に囲まれていた。


間に合わないかもしれない、と思った次の瞬間——石が飛んだ。


三つ、正確に。それぞれが魔物の急所を打ち抜いた。魔物が消えた。


投石の軌道、力加減、タイミング。どれも素人ではない。魔物の急所を知っている。野生動物か、あるいは人間を相手にした経験があるかのような精度だった。


振り向いたら、アリアがいた。ラウルの傷の手当てを始めていた。手際がよかった。傷の状態を確認して、適切な処置をした。


……また、この娘か。

なぜ城壁の外に一人でいる。なぜ魔物の急所を知っている。あの石の投げ方は、素人じゃない。

問いかけたら「薬草採取」と「独学」と「運」で全部説明された。


嘘だ。

「独学」で魔物の急所を知るわけがない。「運」であの精度で三連投できるわけがない。でも証明する手段がない。

「採取の続きはするか」


「……はあ」


拍子抜けした顔をした。また、あの顔だ。お前に言われると思っていなかった、という顔だ。


……俺はどうやら、この顔が好きらしい。

それに気づいたのは、その日が初めてだった。

採取を続けながら、横でアリアが働くのを見ていた。草の見分け方、根の確認の仕方、摘む向き。一つ一つの動作に無駄がなかった。教わったのではなく、自分で積み上げてきた動きだとわかった。


「お前、ここに一人で来ることがあるのか」


「採取できる場所が限られていますので」


「一人は危険だ」


「気をつけています」


「気をつけていても、さっきみたいなことになる」


アリアが少し止まった。それから「それはそうですね」と言った。素直に認めた。


……こういうところが、妙な娘だと思う。

言い訳もしない。でも、じゃあ来ない、とも言わない。


帰り際、城門のところでアリアに言った。


「お前、ああいうの放っておけないよな」


事実を言ったつもりだった。責めているわけでも、からかっているわけでもなかった。


アリアが少し間を置いてから「そういう性分なので」と答えた。


それだけだった。でも、その後アリアは少し俯いて、何かを考えているような顔をした。


……何を考えていたんだろう。

店に戻ってから、ずっとそれが頭に残っていた。


夕食を食べて、剣の手入れをして、床に就いても、まだ残っていた。


……俺は何をしている。

副団長が、薬草屋の娘の顔を思い出しながら眠れないでいる。

自覚したくなかったが、もう遅かった。


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