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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
第三章   聖光と、真実と、それでもお前がいい

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十一話 嘘とは思っていない

しばらくして、涙が止まった。


レオンが何も言わずに待っていた。急かさなかった。ただ、そこにいた。


泣き止んでから、私は少し深呼吸して、口を開いた。


「……怒らないんですか」


「何に」


「ずっと嘘をついていたことに」


レオンが少し考えるような間を置いた。


「嘘とは思っていない」


「でも私は——」


「自分を守るために隠していた。それは嘘とは違う。俺だって、家族のことを誰にでも話すわけじゃない。話せる状態になるまで待てばいいと言ったのは、俺だ」


「……それは」


「お前が話してくれたことが、嬉しかった」


静かで、飾りのない言葉だった。


私はしばらく黙っていた。


……この人は、どうしてこんなに真っ直ぐに人を受け取れるんでしょう。

責めてくれた方が、楽だったのに。

全部受け止められてしまったら、もう逃げ場がない。


「一つ、聞いていいか」


「何ですか」


「これから、どうするつもりだ」


私は空を見た。夜が終わりかけていた。東の方が薄く白んでいた。


「……わからないです。まだ。聖女院に登録するつもりはありません。制度に縛われるつもりもない。でも——見て見ぬふりをして生きるのも、もう私には無理だとわかりました」


「なら、どうする」


「自分で決めたいんです。どこで、誰のために、何をするか。制度に言われるんじゃなくて、自分の意志で」


レオンが頷いた。


「それでいい」


「……怒らないんですか。国に貢献しろとか、登録しろとか」


「俺はお前に、制度に縛われてほしくて騎士になったわけじゃない」


私は少し笑った。前世も今世も合わせて、この夜が一番素直に笑えた気がした。



立ち上がろうとしたとき、レオンが言った。


「アリア」


「はい」


「聖女だから側にいたいんじゃない」


まっすぐに、私を見て。


「お前だから側にいたい。それだけだ」


私は立ち上がる途中で固まった。


夜明け前の薄い光の中で、レオンの表情はいつもより少しだけ柔らかかった。


「……それは、どういう意味ですか」


「そのまんまの意味だ。わからないなら近づいて説明する」


「……近づかないでください」


一歩、近づいてきた。


私は避けなかった。


……あ、これはもう、終わりですね。

完全に、逃げられなくなりました。

……でも。

不思議と、それが怖くなかった。

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