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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
第三章   聖光と、真実と、それでもお前がいい

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十話 全部、話した

レオンの傷の手当てをした。今度は隠さずに、治癒魔法を使って。


光が傷口を包んで、みるみる塞がっていく。レオンはその様子を、黙って見ていた。


手当てが終わってから、私はそこに座り込んで、全部話した。


前世の記憶のことから始めた。現代日本という別の世界で生まれて、働きすぎて死んで、この世界に転生したこと。五歳のときに聖女の資質が発覚して、石台を砕いたこと。


なぜ隠したかも話した。前世の記憶があったから、聖女という存在の末路を知っていた。国に縛られて、使い潰されて、自分の意志で生きられなくなる。それが怖かった。前世で一度、自分の人生を失っている私には、今世こそ自分らしく生きたかった。


レオンの話を聞いた後の罪悪感も話した。あなたの家族のことを知って、私が逃げ続けていることへの後ろめたさ。それでも怖くて言えなかったこと。


全部話しながら、私は自分でも驚いた。


こんなに言葉が出てくるとは思っていなかった。十二年間、一人で抱えてきたものが、溢れるように出てきた。


レオンは最後まで黙って聞いていた。


話し終えたとき、路地には静寂と、どこか遠くで聞こえる夜風の音だけがあった。



しばらくして、レオンが言った。


「俺の家族のことを、気にしてたのか」


「……はい。あなたの話を聞いてから、ずっと」


「お前のせいじゃない」


「わかってます。でも罪悪感って、論理で消えるものじゃないので」


レオンが少し間を置いた。


「……俺は聖女制度を憎んでいた。でも今のお前の話を聞いて、わかった。お前が逃げていたのは、俺が憎んでいたのと、同じ理由だ」


「……」


「制度に縛られて、自分の意志を持てなくなることへの、抵抗だ。俺は力をつけることで抵抗した。お前は隠すことで抵抗した。方法が違っただけで、向いてる方向は同じだった」


私は何も言えなかった。


そんな風に考えたことがなかった。


「お前は何も悪くない」とレオンは続けた。「俺の家族が死んだのも、お前のせいじゃない。お前がこの世界に生まれる前の話だ」


「……でも、私には力があった。もっと早く、もっと多くの人を——」


「止まれ」


レオンが静かに言った。


「自分を責めるために力を使うことを正当化するな。お前が自分の意志を持って生きることを、誰も責める権利はない」


私はしばらく黙っていた。


そして気がついたら、泣いていた。


声を出さずに、静かに。でも確実に。


前世でも、今世の十七年間でも、こんなに泣いたことはなかった。

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