第27話 ぶっ殺せ悪夢の森!魔物ジェノサイダージュジュ!!
ずっと好きだった先輩に告白したら彼女がいた、それが僕です。
あやうく百合の間に挟まる男になりかけたんだよね怖くない?
「ふーーーーっ」
ギチギチと、筋骨の軋む音。
右手一本で正眼に構えた鍛錬用の素振り棒をゆっくりと時間をかけて大上段に構え、静かに降ろす。
………吸血鬼になった影響か、前世に比べて負荷が物足りない。
パワーがあるのは結構だが、これじゃ基礎鍛錬による強化は見込めそうもないな。
今の私の身長は141センチ、体重はおよそ40キロ。
この体でもアレは使えそうだが、やはり身長と体重がネックか。
もっと食べて大きくならないと以前のような近接戦闘は厳しいだろうし、体が大きければそれだけ強力な重火器を扱えるようにもなる。
ただ、こればっかりは焦ってどうにかなるような問題じゃないし………やっぱり基本の型の反復練習をメインにこなした方がよさそうだ。
まぁ、日ごろの訓練は続けるが。
「あっ、こっちにいたんですね。おはようございます、お嬢様。もうそろそろ朝ごはん出来ますよ?」
「おはよ、リナ。掃除して体拭いてから行くよ」
稽古場の入り口からひょっこり顔を覗かせるリナにそう言って、素振り棒を壁にかけ、モップを手に取る。
………シオンとアヤメが稽古を始めてからおよそ2週間、基礎もある程度は出来てきたし、そろそろ型稽古を始めてもいいかもしれない。
欲を言えば一年くらいは基礎をみっちり仕込みたかったが、そう悠長に構えてもいられないだろう。
「まったく、いやになる」
リナがベーコンでも焼いているのか、脂の弾ける音と香ばしい匂いの混ざる朝の空気を吸い込んで、溜息をついた。
「うっぷす」
「………」
「お疲れ様。血飲む?」
「ん」
「んっ」
「あいたっ」
稽古終わり、床に転がってる双子に輸血パックを差し出して、カプリと手を噛まれた。
唐突な家庭内暴力?に困惑してたら、そのまま血を吸われ始める。
………一瞬止めようかとも思ったが、2人とも頑張ってたし別にいいか。
「………なにやってるんですかお嬢様」
「献血」
「私も吸っていいですか?」
「リナは吸い方がエッチだからダメ」
「そんな~………」
後ろから抱き着いてきたリナを躱して、やんわりと押しのける。
………実際、リナの吸血は、なんというか、こう、非常に教育によろしくない。
特に必要もないのに何度も甘噛みしたり、やたらペロペロしてきたり、匂い嗅いだり触ったり揉んだり、不健全極まりない。
少年ジャンプのお色気シーンみたいな健全なエッチじゃなくて、薄い本方面のエッチを感じる。
………私なに言ってるんだろうな?
「後で吸っていいから、今はやめて」
「仕方ありませんね、貸し一つですよ」
「はいはい」
双子が見てないときならそれでもいいけど、せめて今はやめてほしい。
「ジュジュにぃ、ちょっといい?」
「なに?」
「必殺技とかないの?」
「必殺技?」
上目遣いのシオンに聞き返して、コクリと頷く双子。
必殺技………必殺技、か。
「あるにはあるけど、どうかしたの?」
「おしえて?」
「ひっさつのいちげき」
あ~………でも、う~ん………。
「わかった。見せるだけならいいよ。リナ、ちょっと手伝って」
「え、危なくないですよね?」
「だいじょぶだいじょぶ、木刀構えて立っててくれればいいから、ね?」
「………あとで血、飲ませてくださいよ?」
「そりゃもちろん」
2人をどかして壁の掛け棚から木刀を2本とり、長い方をリナに渡す。
肩に担ぐように木刀を構え。
「────ふっ」
「ひぃんっ!?」
ボッ、と音を立てて飛んだ木片が壁に突き刺さる。
リナが正眼に構えた木刀の真ん中あたりが大きく欠損していた。
「………え?は、え?」
「今のが【爪】っていって、一応私のオリジナル技だね。現役時代に木刀で人体を切断できないか試してた時に閃いた技なんだけど」
「頭おかしいんですか?」
「結局、切断は無理で削ぎ落すところまで行って満足したんだけど、真剣で使ったらまぁ死ぬんじゃないかな?」
「………お嬢様、本当に一般市民だったんですか?軍人とかじゃなくて?」
「違うよ。………話し戻すけど、この技の要は握力にあってね」
「あくりょく?」
「うん。指先の握力だけで武器を操作して鞭みたいに使うの。軌道を曲げるのも自由だから、相手の防御の上から柔い部分を斬り飛ばせる、いい必殺技だよ」
「おぉ」
実際、我ながら使い勝手のいい技ではある、あるんだけど。
「ただ、前提条件がきつくってね。全力で刀振るのと同じ速度でぶん回してすっぽ抜けないようにする握力と、それを継続する持久力、まともに打ち合ったら弾かれるから相手の攻撃を躱す眼と足もいるし、十全に動き続けるために柔軟性もいる。無論、それら全てが莫大な鍛錬の上に成り立つ以上、一朝一夕で身につく技じゃないから地道に頑張るしかないね」
輸血パックにストローを刺して啜り。
「『千日の稽古を以て鍛とし、万日の稽古を以て錬となす』………私がいた国の宮本武蔵って大剣豪の言葉だけど、本当にこの通りだと思うよ。天賦の才って奴は確かにあるし、他より覚えがいい人もいる。それでも地道な努力に勝る近道は存在しない。例外はない。強くなれる不思議な魔法も、覚えただけで相手を倒せる必殺技もない。強くなりたいなら、少しづつ前に進むしかないよ」
「………いや、強くなれる不思議な魔法はありますよね?」
「リナ茶々入れない」
「わぷっ」
余計なこと言ったリナの頬っぺたをムニムニして黙らせ。
「要するに、強くなりたいなら地道に頑張ろうねってこと。わかった?」
「わかった」
「ラジャ」
「じゃ、もうちょっと稽古しよっか!」
ずびしっ!と勢い良く手を挙げた双子が、泣きそうな顔になった。
ごめんて。
「ギャハハハハぶっ殺しじゃあっ!!!」
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!
斬って殺す刻んで殺す撃って殺す抉って殺す潰して殺す燃やして殺す叩いて殺す殴って殺す貫いて殺す。
チェーンブレードで
ボルト・ガンで
火炎放射器で
戦槌で
大鉈で
槍で
踊るようにステップを踏み、押し寄せる魔物の大群をすり抜け、そして殺す。
私自身の改造に合わせて新規開発した自立稼働戦闘用拡張義体、【致死の光輪】。
背中の追加マウントと疑似神経を直接接続することで反応性を高め、高速白兵戦にも耐えれるように調整した逸品だ。
全力戦闘となると【紅梅】システムをフル稼働させる必要があるせいで消耗が激しい欠点はあるが、それでもコレはいいモノだ。
トカゲめいた魔物にチェーンブレードを突き立て、獅子を戦槌で打ちのめし、飛行型の魔物の群れをボルト・ガンと火炎放射器で薙ぎ払う。
火炎放射器、新しく作ってみたが悪くない。
やっぱり汚物は消毒するに限る。
全部燃えるがいいや!
「ファイヤーー!!」
辺り一帯薙ぎ払い、攻撃を抜けてきた虎っぽい魔物を鉈で脳天カチ割り、ヤマアラシめいたバケモノを槍で突き殺す。
武器は多ければ多い方がいいというのは、割とこの世の真理だと思う。
制御するものが多すぎて頭痛いけどそれはそれとして殺して楽しいってのは大事だし。
なんか翼の生えたトカゲにボルタ弾を叩き込んで爆発四散させ、もう一匹飛びついてきたのでチェーンブレードでぶった切る。
つまみ食いしてう~ん………微妙。
なんか肉臭くね?
血抜きして臭み抜きしても美味しくなりそうな予感がしない。
コイツを食用にするのはナシか。
今思えば、この森の魔物ども、肉食が多いからか手放しで美味しい奴ってあんまいない気がする。
ドラ〇エの『つのうさぎ』じゃなくてウィザード〇ィの『ヴォーパ〇バニー』なバケモノは旨かったけど、アイツ下手すると「ジュジュ は くびをはねられた!」ってなりそうでヤだし。
ここら辺に住んでるのは全滅させたけど、獅子猿もまぁ臭かったし。
………あ、でも吸血鬼になってからだとそこまで問題なく食えてるな?
嗅覚含めた五感は人間の頃に比べてだいぶ鋭敏になってるけど………なんというか、感覚のキャパが広くなった、って感じなのかも。
「ま、そこら辺考えるのは後でいっか」
血の匂いに惹かれたのか、魔物が集まってなんだか地獄絵図めいた光景になってきた夜の森。
それこそ雲霞の如く押し寄せる魑魅魍魎どもに刃を突き付け、真正面から突っ込んだ。
「んぐっ、んめっ、うめっ」
肉ウメー!
やっぱり甲殻類ってうんまいな!!
………なんか、リナと双子から信じられないようなものを見る目で見られてるけど。
「………お嬢様、よくそんなの食べられますね」
「だって美味しいじゃん」
ガーリック………はお腹痛くなるから使えないけど、それでも特大サイズのクソデカエビステーキ、やはりうまいうまい。
まぁ、
「エビじゃなくてコオロギだけどね、コイツ」
ちょっとしたゾウくらいのサイズのクソデカコオロギを見かけたので一狩りしてみたのだが、いやはや侮れぬ。
エビ特有のあのぷりぷりとした弾力ある歯ごたえの肉を口いっぱいに頬張れるというのは、前世じゃなかなか味わえない口福感。
肉が少し臭いのは………まぁ、ご愛嬌か。
コレ、エビカツバーガーとか作ったら最高だろうな。
今度やってみよう。
「というかお嬢様、よくそれだけ食べれますね?」
「そう?」
「うっぷす」
「お腹いっぱい」
………そういや、私も結構食べたのにお腹いっぱいになってないな?
今思えば、要塞で食べ放題パーティーした時も、私の体積より明らか多く食べてた気がする。
ん~、消化速度がパない事になってる………にしては出ていく分が増えたわけでもないし、なんでだろ、わからん。
「………お嬢様、ちょっといいですか?」
「なに?」
「体重、計りましょう」
お風呂場になんとなく設置した脱衣所の体重計前。
「嘘だッ!!!」
「リナ?ちょっと怖いよ?」
なんか雛見沢症候群とか発症してそうな感じで絶叫するリナはともかく、ちょっとこれヤバいかもしれん。
あんだけ喰って腹も出てないし体重も増えてないってのは、うん、ちょっとマズいやもしれぬ。
しいて言うなら若干肉付きが良くなった気がしないでもないが、それでもあれだけ喰ってこんだけしか変わらないのはワケわかんないし。
常日頃からハチャメチャ動き回ってぶっ殺して運動して消費してるにしても、明らかに不自然だ。
「まさか太らない体質ってわけじゃないだろうし」
「もしそうならお嬢様にちょっと人に言えないことしますよ?」
「ひゃひ」
ポロっと零して、人殺せそうな目のリナにほっぺをガッ!!された。
ごめんて。
「というかリナも瘦せ型じゃない?」
「私の体形がそれなりの努力と我慢の上に成り立っているものであることは言いましたっけ?」
「すんません」
「まったく………これでも色々と気遣ってるんですよ?私みたいな暗部の人間は下手に筋肉つけたり体形変えたりするわけにもいきませんし」
「あ~………そりゃまぁそうか」
というかリナ、今しれっと暗部出身って言ったな?
まぁ、バトルメイドとかアサシンの系譜じゃんって言われれば納得しかないけど。
………暗殺、暗殺か。
「ねぇリナ、今度そっち方面の技術教えてくれない?」
「それは構いませんが………要ります?」
「要る」
主に私のロマン欲を満たすために。
だってかっこいいじゃん、アサシン。
暗殺教団とかアサシンブレードとか憧れるじゃん。
あと一回イーグルダ〇ブとかやってみたかったし。
「まぁ、それくらいなら構いませんが。お嬢様、暗殺術なんかなくても十分強いでしょう?」
「やっぱり手札が多いに越したことはないからね」
出来ることが多い、殺り方が多いというのは、それだけ生存率が高まることを意味するものだ。
………まぁ、魔物相手に暗殺術が通じるかは知らないけど、それでも手数は欲しい。
「………それとお嬢様、ちょっといいですか?」
「なぁに?」
「お風呂、入りましょう」
「ふぅ………」
「あ゛ぁ゛~~~」
あったかいんじゃぁ~。
あとお腹揉むのやめてリナ、くすぐったいから。
「別にいいじゃないですか、なにか減るわけでもないでしょうに」
「ま~、そりゃ減るものはないけどさ」
にしても胸やらお腹やら太腿やらお尻やら触りまわるのは止めてほしい。
というかリナ、ひょっとして下半身フェチだったりする?
モチモチしてて触り心地がいい?
………まぁ、あんまり変な事しないならいいけどさ。
あちこち触られるだけなら別に気にしないでいいし。
「そういえば、お嬢様から血を飲ませてもらうの忘れていましたね」
「あ~………そういや、そんな話もしてたっけ。今飲む?」
「では、失礼します」
首筋を差し出して、ガブリと噛みつかれた。
ん~………なんというか、最近リナ、吸血するときに遠慮がなくなってる気がする。
こう、けっこうガブガブ噛みついてくるし、そのうちお肉も齧られそうでちょっと怖い。
まぁちょっとやそっと齧られた程度じゃ死なないから別にい。
「お嬢様」
「ん?どうかした?」
「その、胸から吸わせていただいても」
「ふんっ」
「あばーーーっ!?!?」
リナが一線超えたのでデコピンブチかました。
「ちょっ、急に何するんですか!!」
「いや、流石にそれはヘンタイが過ぎるでしょ」
「………一応確認しますけど、胸揉むのはいいんですよね?」
「まぁ揉まれるほど無いし」
「お腹は」
「お腹はエッチじゃないからセーフ」
「お尻と太腿は」
「やめてほしいけど、リナにはお世話になってるし、まぁ我慢するよ」
「胸から血を吸うのは」
「エッチだからダメ」
「そんなぁ~………」
ばっさり切り捨てて項垂れるリナ。
………そういや、クラシックスタイルの吸血鬼って胸から血を吸ったりしてたな。
あれコレそういうことか?
私のマニアック知識がなんらかの要因でリナに遺伝してそうなったのか?
もしそうだとすれば、リナの性癖が歪んだ理由の半分くらいは私に原因があることになる。
………仕方ない、か。
「………わかった、ほら、おいで」
「………えっ、いいんですか!?」
「まぁ、いくらか私の方に非があるみたいだし、いいよ」
「いっ、今から『やっぱなし』ってのは無しですからね!?」
「そんな事しないってば。ほら、どうする?吸うの?吸わないの?」
「~~~~っ!!もっ、もう止まりませんからね!?」
「だからいいっていってるじゃん。ほら」
いつも通り、ベッドで目が覚めた。
横を見れば、なんだか満ち足りた顔のリナが眠っていた。
なんだか、酷く頭が痛いし、寝る前に何してたかイマイチ記憶がない。
ご飯食べて、リナとお風呂入って、そして
「………ァあ゛?」
待て、待て待て待て待て待て。
わ、たし、昨日の晩、なにやった?
リナに血ィねだられて、なんかホイホイ乗って、それで、授にゅ
「ギギュオわーーーーーッ!?!?」
「ぅうん………おじょうさま、まだあさですよ………」
「リナ、昨日の晩なにやったか覚えてる?」
「にゅむ、昨日の晩………あぁ、アレですね。大変美味しく啜れました」
ニッコリと、すごくいい笑顔で言うリナ。
「わすれて」
「え~嫌ですよ。お嬢様、すっごく可愛」
「わすれろッッ!!!!!」
「おあーーーっ!?」
リナとの追いかけっこは、騒ぎを聞きつけたシオンとアヤメが乱入してくるまで続き、リナに対して3日間の接近禁止と当分の間直接吸血禁止で決着した。
ちなみに、リナが禁断のアレ完遂しかけたのは単純な性欲と愛欲の結果です。
吸血鬼がどうのこうのはあまり関係ありません。
リナが立派なHENTAIなだけです。




