第25話 たった1つの才能
早めに投稿出来てよかったよかった。
あっ、今回若干グロ中尉でやんす。
「ふぅ………嫌な夜だ」
「まったくだ、こんな日には酒でも飲みたくなる」
「おいやめろ、中隊長に聞かれでもしたら、俺らまで巻き添えだ」
シャレにならないことを言い出したバカに釘を刺し、うっかり誰か聞いちゃいないか耳を澄ませる。
………人の気配は、ない。
俺が《風域探査》を使えればよかったが、無いものねだりをしてもしょうがないか。
………しっかし、中隊長も中隊長だ。
そりゃ、若くてツラとカラダのいい女が上司に就任となった時にゃ喜びもしたが、辺境に左遷されたからって毎日ピリピリしっ放しの上に、機嫌が悪けりゃ容赦なく略式処刑してくるようなヒス女はゴメンだ。
「そうだ、哨戒兵長殿。アンタ煙草もってないか?」
「配給がここしばらく来てないのはお前も知ってるだろう?悪いが手持ちはない、賭けは無しだ」
「へいへい」
ここの要塞に元々詰めていた政府軍どもの食残しはそれなりの量があったが、決して無限ではない。
幸か不幸か、中隊長の締め付けが厳しいせいで物資に余裕はあるが、そろそろどこぞの村でも襲わなければ部隊の士気が崩壊しかねないのも事実。
問題は、どうやって殺されないように進言するかだが………
「リュード、お前アタマいいだろ。なんかこう、いい感じに略奪できそうな建前とか思いつかないか?」
「………」
「………リュード?」
さっきからずっと黙っていた部下に話しかけて、返事がない。
振り返ってみれば、器用なことにリュードが立ったまま舟をこいで眠っていた。
肩を揺さぶって起こ
「こひっ」
ポンポンッと軽い音がして、視界が回る。
リュードの口からはみ出た腕が、赤黒く血に塗れた肉塊を掴んでいた。
誰かの悲鳴をガボガボと溺れるような音が塗り潰し、赤い雨が降り注ぐ。
黒い影が視界を過ぎり、何もかもが真っ黒になった。
「けぷっ………見たか、【忍法・人襦袢】」
歩哨のおっさん共の大部分を腹に納め、剥ぎ取った装備品を改良型の【なんでも収納箱】に放り込む。
………まぁ、フードロス問題が叫ばれる昨今の情勢的にあまりお行儀のいい行動ではないのは理解しているが、それでもやはり、喰うに際して抵抗のある部位が存在するのも事実。
いくら前世が男でも、というか性別関係なく知らんオッサンのポコチンなぞ喰いたくない。
内臓もまぁ、肝臓や膵臓、脾臓に心臓はともかくとして、何が入っているとも知れない消化器系は避けたいし、肺はヤニ臭くて喰えたもんじゃなかった。
というか全体的に筋張ってて脂ものってなくて美味しくなかったし。
喰えなくはないけど積極的に喰いたくない、10点満点中4点ってところか。
そのまま要塞内部に侵入し、巡回中の兵士2名の首をポキポキとへし折って抹殺。
殺してから気づいたが、片方は本当に子供が武装しただけといった風貌の、赤髪の少年兵だった。
ふむ………
「味もみておこう」
腕を引き千切って試食し、さっきのおっさんより格段に美味い。
なんというか、こう、臭みのない食いやすい肉だ。
前世じゃ若鶏よりも親鶏のほうが好みだったが、人の味はまた勝手が違うようだ。
腹を捌いてトクトクと脈打つ心臓を引きずり出して齧り付き。
「………そういや、食ってる場合じゃなかったな」
今回私が革命軍に占領されたこの要塞に襲撃かけたのは、バーナードさんに依頼されたのもあるし、おニューのボディーの慣らしをしたいのもあるが、それ以上に血液を補充するためだ。
屋敷の地下に専用の貯蔵庫も作ったし、血液のストックが多いに越したことはない。
少年兵を手早く平らげ、オッサンの首に針を刺してポンプで血液を吸い上げる。
いや~、バーナードさんに頼み込んで空の輸血パックを大量に持ってきてよかっ
「っ、貴様何者だ!どこから入っ」
「はいお口チャック」
巡回と思しき兵士が銃口を向けてきたので飛びつきざまに膝蹴りで頸椎を破砕し仕留め、もう1人の喉笛を喰い千切る。
ゴリゴリ食感が楽しい気管を咀嚼して飲み込み、少々お行儀が悪いが血が零れる前に口をつけて血を啜る。
良いなコレ、巡回が2人1組って決まってるからか、1人即殺してからもう1人を落ち着いて食べる余裕がある。
飲み干した後の体を放り捨て、くの字にへし折れた首の動脈に針を突き刺して血を抜く。
………ドックタグ的なアレがあれば血液型とか書いてたりしないだろうか。
もしあれば血の回収がだいぶ楽に
「おっとあぶない」
足音が聞こえたのでナイフを投擲し、ちょうど廊下を曲がったバカが眉間にナイフを生やして倒れ………あっ駄目だ、アタマが弾けちゃった。
「パワーが強すぎるのも考え物か?」
「~~~~~っ!?なにがっ」
目の前で相方の頭が吹っ飛んで硬直した兵士に腹パンかまし、そのまま内臓を引き摺り出して殺す。
痙攣する半死体の首に噛みついて血を吸い尽くし、美味しかったのでそのまま頭もバリボリと食べてみる。
「ん~~~………うまいっちゃうまい、か?」
独特の臭みはあるが、まぁ旨い。
味としてはフグの白子が近いような気もするが、如何せん髪の毛が喉に張り付いて食べづらい。
しっかり殻を剥いて、辛口の日本酒、ぬるめの燗があれば最高だったな。
私まだ未成年だけど。
「いや、こっちの法律、そこらへんどうなってるんだ?」
転生者なんてイレギュラーに対応する法律があるとも思えないし、そもそもこの国で法が機能しているのか甚だ疑問だ。
………リナに聞いてオッケー出たら少し飲んでみようかな。
お肉めっちゃ食べたせいか、赤ワインでも飲みたい気分だ。
ふと、辺りを見渡して。
「………こっちか?」
過敏化した感覚が人の気配を捉えた。
場所は………左から、距離はそう遠くない。
匂いと音からして3、40人はいるか。
かすかな香辛料の香りと笑い声、ご飯でも食べてるのかな?
ちょうどいいや、私も混ぜてもらおう。
「このブタちびすけ市場へまいった♪このブタちびすけお留守番でござる♪このブタちびすけ、牛肉、炙った………あれ?」
この童歌の続きは何だったっけ、どうも思い出せない。
結構好きな戯歌だったんだけど………まぁいいや。
思い出せないという事は、思い出さなくてもいいってことだろうし。
くぅくぅと空腹を主張する腹の虫を宥めるように、少し足早に歩を進めた。
「クソっ、速すぎっ」
「狙うな弾幕張れ!!ジュドー、高位魔術使える奴を呼んっ」
「グレネードをっ」
「はい、残念」
変異させた右腕の鉤爪でバラバラにした兵隊さんを通り過ぎて、手榴弾を構えた腕を、ピンを抜かれるより速くチェーンブレードが胴体ごと引き裂いた。
機械の左腕でスロットルを握りしめて。
「ホップ♪ステップ♪スラッシュ♪ってね?」
スカスカの弾幕を躱して肉も壁も骨もバリケードも銃も全部まとめて切って、温かくて甘い雨が降る。
壁に張り付いてた誰かの目玉を口に放り込んで転がして、どろっとした甘い液体がお腹に滴り落ちる。
脳裏を埋め尽くす至福の2文字。
甘くて、あったかくて、おいしくて、しあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせで、頭がふわふわしてどうにかなっちゃいそう。
差しだされた手を食べて、床に落ちてた足を食べて、絶叫する喉を食べて、命乞いする舌を食べて見開かれた目を食べてのうみそをしんぞうをかんぞうをすいぞうをひぞうをはいをはらわたをたべてたべてたべてたべて!!!!!
しょくよくがあふれる
せかいがキラキラする
ぜんぶおいしそう
おなかすいた
なにもかもがすてきにきれい
たべものならいくらでもある
なんでもたべれる
なにもかもが いとおしくて おいしくて
「《業火砲》ッ!!!」
かわして、私の目の前を業火が吹き飛ばした。
飛んできた方を見て、ガタイのいいオジサンを従えた赤髪の美人さんが、私を睨みつけていた。
………この人たち、強いな。
ふざけてたら普通に殺されそうだ。
チェーンブレードをダラリとぶら下げ。
「どこのどいつか知らんが、調子に乗るのもここまで………子供、それも劣等髪だと………?ベルナドット、どうなっている」
「詳細は分からんが、動きが異様に速かった。政府軍の新兵器かもしれん」
「わかった。可能な限り生かして捕らえろ。不可能でも死体は残せ。無理ならここで是が非でも殺す」
「了解した」
「ね~ね~、作戦会議終わった?もう食べていい?」
「やれ」
「承知!!」
「や~んコワ~イ」
腰だめにジャックナイフを構えたオジサンが突っ込んできた。
ギラリと剣呑な輝きを帯びた刃が私の喉に迫り。
「でも、それじゃ当たってあげられないかな?」
「ぬぅっ!?」
高圧水流の魔法を纏っているのか、鉄板程度なら容易く切り裂きそうな一撃を摘まんで止め、力任せに壁に叩きつける。
展開された水の防壁ごと顔を引き剥がし、腹を蹴破って臓物を抉りだす。
夥しい量の血を吐いたオジサンを無視して、美人さんに向き直り。
「────よくやった、ベルナドット。《火精霊の息吹》!!!」
私の脇腹に深々とナイフが突き刺さり、直後、視界を赤が埋め尽くした。
狭い通路で身動きを封じた上での高火力範囲攻撃か。
単純で、それ故に実に効果的な戦法だ。
威力からして生身の人間が喰らえば灰しか残らないだろうし、悪くない選択ではある。
悪くない選択ではあるが、
「相手が悪かったね」
「がッ、ぁあっ!?」
引き抜かれた拳銃を翼爪で叩き壊し、相手の右ひざを踏み砕いた。
ドラゴンブレスならともかくコレくらいなら普通に翼を盾にすれば防げるし、燃焼による窒息も中毒も肺に施した付呪で対策済み。
熱波は普通に熱いけど、それだって死ぬほどじゃない。
この要塞にいた人は大体殺したし、あとはこのおねーさんを食べてミッションコンプリート………あっ、やべ。
「そういやバーナードさんにお使い頼まれてたんだった」
「ぐぅっ………バーナード、だと?あの冷血と繋がっているとは貴様っ、何者だ!!」
「何者と言われても………なんだろ?こういうものですって言ったらわかるかな?」
グッサリ根元まで刺さってたナイフを引き抜き、服をめくって傷口を露出させる。
ブクブクと異様な音に目を遣れば、赤く血を流す傷口の肉が沸騰するように泡立ち、急速に再生していた。
………傷の再生初めて見たけど、こんな感じだったのか。
なんというか、私マジで人間辞めちゃったんだな。
「ま、見ての通りマトモな体じゃないのは確かだよ」
「………政府軍の奴ら、こんなバケモノを造っていたとは………っ!」
壁にもたれて茫然自失って感じだったおねーさんが、なんか怖い顔でそんな事を言う。
ビミョーに勘違いされてるっぽいけど、まぁ別にいいや。
おねーさんのお腹をまさぐって、軍用鎮痛剤を注射してあげて。
「話し戻すけど、おねーさん偉い人でしょ?いくつか教えてほしいことがあってさ」
「………お前のような怪物に、話すことなどあるものか」
「あらら、もしかして嫌われちゃった?」
「これでも私は軍人だ、覚悟など既に出来ている。見せしめにするなり慰み者にするなり好きにしろ」
そう言うおねーさんの目は、私を前にしてなお微塵の揺らぎも見られなかった。
う~ん、むちゃくちゃ「くっ殺せ!!」って言ってほしい。
お願いしたらしてくれないかな?
ダメそう?
ううむ、残念。
「まぁ、それならそれでいいよ。おねーさんから聞かなくてもどうにかなるし。………それじゃ、最期に1つだけいいかな?」
「………なんだ?」
「いただきます」
右腕に噛みついて、肩口から喰い千切った。
獣じみた絶叫をBGMに皮膚も肉も骨も一緒くたに咀嚼し、ガツンと脳を揺さぶられる様な多幸感の嵐。
多少の化粧臭さはあれど、そんな事どうでもよくなるくらい全てが美味しい。
薄く皮下脂肪の乗った、よく鍛えた女性特有の腹を食い破り、赤黒く輝く臓物を食む。
踊るように痙攣する身体を力尽くで捻じ伏せて肉を噛み千切る。
まだ生きている極上の肉の味。
組み伏せた獲物の抵抗が鈍く弱弱しいものになっていく、倒錯した充足感。
恐怖に染まった眼を見降ろし、断末魔の絶叫を奏でていた喉がゴボゴボと溺れるような音を鳴らす。
異常なまでの快楽と快感の中、私が目の前の全てを食べ尽くすのに、時間はそうかからなかった。
「ごちそうさまでした」
「………これはまた、ずいぶんと派手に暴れましたね」
後ろから声を掛けられて振り返り、迷彩服の女性が立っていた。
えっと………
「確か、フランキスカさん、でしたっけ?」
「はい」
バーナードさんの子飼いのヘルプ兼お目付け役のフランキスカさん。
なお、得意な武器は斧は斧でもフランキスカではなくバルディッシュだとか。
世の中ままならないものである。
「そうだ、フランキスカさん。良かったら色々探すの手伝ってもらえますか?」
「それは構いませんが………目途は立ってますか?」
「一応」
フランキスカさんを連れて進み、さっきの人の匂いを辿って奥の部屋へ。
扉を蹴破って侵入し、
「う~ん………こっちですね」
机の引き出しを開けようとして、鍵がかかっていたので腕力で破壊。
貴重品っぽいものとかなんか大事そうな書類とかあったので全部袋に放り込んでいく。
あとは………
「こっちの壁、なにか仕掛けありますね。今解除するので」
「なるほど、ちょっとどいてくださいな」
フランキスカさんがさっそく隠し金庫か何かを発見したみたいなので腕力で破壊。
なんだか呆れたような視線を感じるが、全部破壊すれば問題なし。
やはり暴力、暴力は全てを解決する。
「フランキスカさんは怪しいところを見つけてください。私が片っ端から破壊していくので」
「………はい」
なんだかションボリした様子のフランキスカさんはさておき、指示されるまま、人間重機よろしくデストロイ&デストロイ。
目に映るもの全てを破壊し。
「あっ、フランキスカさん。あっちの本棚の本、貰っていいですか?」
「それは………まぁ、構いませんが」
シオンとアヤメの勉強用の本ゲット、ヨシ!!
何をするにもやっぱり教育は大事だからね。
知識があって困ることはないだろうし、思わぬお土産が出来た。
輸血パック×たくさんと本を入れてずっしりと重くなったズタ袋を背負い。
「それじゃ、フランキスカさん。今日はありがとうございました」
「………いえ、こちらこそ」
なんだか引いたような顔のフランキスカさんに頭を下げて、私は1人、血まみれスプラッターの要塞を後にした。
「ふぅ………こわかった」
なんですか、なんなんですかあの子。
ちょっとちびりかけましたよ私。
というかアレ、要塞の中の革命軍、1人で全滅………というか食い尽くしてましたよね?
胃袋の容量どうなってるんですか?
しかもあちこち内臓とか飛び散ってて………オェッ!
「………疲れました」
もーやだやだ、帰ったらお酒飲んで寝よ。
報告も明日でいいや、今日はもう何もしたくない。
私はサボらせてもらいます。
もうしばらく血まみれでトリップしてる幼女は見たくありません。
「………有給申請しますかね」
三日くらい家で引きこもってゆっくりするとしましょう。
押収した書類と物品を詰め込んだ袋を背負い、私は1人夜の森を歩き始めた。
【忍法・人襦袢】
ベルセルクのピピンのアレと言えば伝わるはず。
人の中身を空っぽにしてキグルミみたいにする奴。
元ネタは衛府の七忍の生襦袢。




