第一章:6 目覚め、そして
「……どこだ、ここは」
「っ!?目が覚めた!?すぐに姫様を呼んでこないと!!」
バタバタと誰かが俺の近くから走り去っていった。
俺は……
そうか。ミタマの力を行使した後に倒れたんだ。あの後どうなったのかはわからないが、俺がこうして生きているということは……無事に釈放されたということか。
起きあがろうとしてみるが、力が入らない。
あれだけの無茶をしたのだから仕方がないことなのかもしれない。
どのくらい寝てたのか。ちらりと窓の方を見ると夜みたいだ。
ぼんやりと天井を眺めながら、ベッドの柔らかさに眠気を誘われていると、騒がしい音が迫ってきた。
俺のいる部屋の前までやってきて、勢いよく扉が開く。
「ケンジョウ様っ!!!」
「姫様、あの、目覚めたばかりなのでお静かに……」
王女だった。とりあえず顔だけそちらに向ける。
涙を流しながら寄ってくるその様はまるで親を見つけた迷子のようだった。
「ケンジョウ様……ぐすっ、ご無事で何よりです……。
良かった……。あと、本当にごめんなさい……」
「……いえ」
正直なところ、俺はあまり王女に良い印象が無かった。そもそも最初から助けてくれていたならこんなことにならなくて済んだし、捕まってからも特に何かの役に立ったわけでもない。
……でも、俺が無事だったことをここまで喜んでくれていること。そのことは、素直に嬉しいと思ってしまった。
「ここは……?」
「……ずずっ……ここはトゥージア城。私の居城ですわ」
ようやく泣き止み、話せる状態になった。
……何故、ただ一時、助けられただけの相手にここまで泣けるのだろう。
「あの後、どうなったのですか」
「ケンジョウ様が倒れた後……
私の側近がルートヴィヒとあの賊達を繋ぐ物証と証人を連れてきたので、ルートヴィヒを闘技場内に投げ込み、公開尋問をしましたわ」
投げ込み?
「結果、因果関係をその場で認め、このトゥージアにて投獄されておりますわ」
「そうですか……」
「そして、ケンジョウ様は無罪が証明され……大会は幕を閉じましたわ」
「……王子は、どうなりましたか?」
「お兄様は無事ですわ。腕は飛んだものの、傷口が焼けていて出血が少なかったのが良かったのでしょう。
今、ギアラン公国から技師を呼んで義手を作ってもらう為にこの城にいます。ケンジョウ様の体調が良くなったら一度会いに行ってあげてくださいませ。きっと喜びますわ」
「そう、でしょうか……」
「お兄様は今まで対等な友達を作ることもできず……孤独を抱えていらっしゃいますから。貴方のような人に巡り逢えて、きっと嬉しく思っておりますわ」
そうだろうか。腕を飛ばした相手にそんな良い感情を抱くものだろうか?
「……たぶん」
え?
「それはそうと、あの、ケンジョウ様。
こちらを……」
言いながら王女様はこちらに何かを差し出してくる。
……刀だ。
「ミタマ!」
『やーっと目を覚ましたか。心配させおって』
「……すまない」
「お二人とも、仲がよろしいのですわね」
「あ」
『大丈夫じゃ。姫様とお主の両方に聞こえるようにしておるよ。姫様とはケンが捕まった直後に話しておるからの。わしが喋ってても問題なかろ』
「そうか」
『なんならさっきまでずーっと姫様を宥めてたところじゃよ。お主が目を覚まさんもんじゃからずっと泣いてたり、泣き止んだかと思ったら忙しなくうろうろしてたり。兄の腕よりお主の意識のが大事みたいじゃ。良かったの〜?愛されておるぞ』
「ちょっとミタマ様!?」
『泣いてる時、わしに鼻水落としそうになったじゃろ』
「は、鼻水とかそんなこと言わないでくださいまし!?」
ミタマと王女様はずいぶんと楽しそうだ。
……ミタマも、寂しかったのかもしれない。今までの旅の途中、ミタマが俺以外に話していたのはそう多くなかったから……。
「あ、あの……姫様?姫様は誰とお話しなさってるのですか……?そちらのケンジョウ様とはまた違う人と話してるように見えますけど……」
「あ」
『侍女のこと忘れておったわ』
「えーーっと……あー、その、席を外していただけるかしら?まだ、あの秘密の話があるから、ね?」
「……はい。かしこまりました」
怪訝な顔をしながら出ていく侍女。
「……いいんですか?微妙な顔して出ていきましたけど」
「ええ……どうしましょう。変な人って思われたら」
『手遅れじゃろ』
「貴方のせいではなくて!?」
きゃいきゃいと戯れを始める2人(?)
話が終わったのならもう一眠りさせてほしいのだが……
『それより姫様や。ケンに頼みたいことがあったのではないか?』
「……そうでした。ケンジョウ様にひとつ、その……お願いが」
「嫌です」
「まだ何も言ってませんわよ!?」
本当に短い付き合いだが、この人の頼みとなるともう面倒なのは目に見えている。
そもそもの話。王族が何処ぞの馬の骨かもわからないような旅人を捕まえて頼み事をするというのがおかしな話であって……。
『ケン、話くらい聞いてやったらどうじゃ?面倒なのはわからんでもないが……』
「(話を聞いて逃げられなくなったらどうする。聞かないのが一番だ)」
『ふむ……。姫様や、その頼み事とやらはケンでなくてはならんのか?』
「はい」
勝手にミタマが話を聞き始める。
こういうときに困る。どうするんだ、うっかり機密など聞いてしまったら。
『何故じゃ?』
「信用に足る人物であること、お兄様と渡り合えるだけの実力者であること……これを満たす条件の方はケンジョウ様しかいらっしゃいませんから」
「……王子の名が出るのは何故ですか」
レオニード王子と渡り合えるだけの実力者であること。そんな条件が出てくる時点でもう既に面倒極まりない。
「私の為すべきことには心だけでなく、力が要ります。
お兄様ほどの力があれば、為すことができる……民を、救うことができると。私は考えているのです」
「民を……?それこそ王子と協力すればいいのでは」
「いいえ、それは……できないのです。……ケンジョウ様、どうかお願いです」
王女様は真摯な顔でこちらを見る。
美しい碧色の瞳には、ただならない決意が宿っているように見えた。
「私と共に、お父様……我が国の王、アレックス=キュレネ=ハイフレイアを……止めてください」
第一章、罪人闘技大会編の読了お疲れ様でした。
最初から色々詰め込んだ話にはなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。よろしければ、評価、ブックマーク等をよろしくお願いします。創作活動の励みになります。
あとよかったら、僕が書いた短編【安楽死ボタン】も読んでみていただけると嬉しいです。あちらはファンタジーとは違って社会風刺に近い何かなんですけれども。好きな人は好きなやつだと思います。
それでは、次は第二章でお会いしましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。良かったら第二章も読んでね!




