5等星
夕日をバックに二人で校門をでる。どうやら家の方向は同じみたいだ。
「今日は晴れて良かったね。ここ最近雨ばっかりだったから。ほんと、梅雨って嫌い。」
俺の半歩分くらい先を歩きながらユイは言う。
「久しぶりだね。ナツとちゃんと話すの。あの日以来か。」
俺は黙って、ユイの後ろを歩く。ふいにユイが後ろを振り返る。
「ねぇ、ナツ。」
ユイは真剣な顔で俺を見る。
「あたし、今年中に死のうと思ってるんだよね。」
ユイが何を言っているのか分からなかった。
「ちょっと、そこの公園で話そ?」
二人で公園のベンチに座る。俺たちの他には誰もいなかった。ユイはカバンから緑のパッケージの箱を取り出すと、一本抜き取り火を点ける。俺もブレザーの内ポケットから取り出し、火を点ける。
「スー、ハー。」
「いきなりでびっくりしたよね。まだいつかは決めてないんだけどね。」
ユイは笑いながら言う。
「だからさ、今年一年あたしの楽しみに付き合ってよ。」
いきなり言われても意味が分からなかった。
「拒否権はありませーん。じゃないとあのことバラしちゃうよ。」
ユイはイタズラな笑みを見せる。それはユイにとっても都合が悪いのではないか。
「ん。」
ユイは携帯型の袋を差し出す。なるほど終わった後のこれを入れるやつか。ありがたく捨てさせてもらう。
「あのね。」
ユイは長袖の制服の袖をまくる。ユイの細いうでには痛々しい傷やアザの痕が所々あった。初めて会った日、ユイの胸元に見えたアザは見間違いではなかったようだ。この分だと身体中がアザだらけなのだろう。
「うちのお父さん、酔ったら人が変わるの。家族に暴力振るうのもしょっちゅう。そのせいでお母さん、出て行っちゃったの。ずるいよねー、あたしも連れてってくれれば良かったのに。それからお父さんもよくお酒飲むようになって、休みの日なんか朝から飲んでるんだよ?気に食わないことあるとすぐ暴力振るうし。ほんと最悪。だからもう死んでやろうと思って。」
ユイの目にはうっすら涙が浮かんでいた。
俺は何も言えなかった。
「じゃあ明日から決行ね。あたしに最高の一年をプレゼントすること。」
ユイは笑顔でそう言った。それから家に帰ったまでのことは覚えていない。




