4等星
その日は仕事内容の確認だけで終わった。
それから何ら変わりのない高校生活をおくり、六月となりじっとりとした空気の雨の日が続いていた。あれからユイとは図書当番の事務的なこと以外では話していない。俺は俺で毎日、
「やっぱさぁ、二年だからって試合に出さないのはナンセンスだよなぁ。ぜってー桑野先輩より俺の方がうめーのに。」
ユウキの部活への愚痴を聞いていた。
「ちょっとー、ナツ?聞いてる?」
「聞いてるよ。」
そう言って俺は席を立つ。
「あ、また抜けんの?いいよなぁ成績上位者は。何しても怒られねぇんだもん。」
そう言うユウキに
「ただの便所だよ。」
そう言い、教室を出てトイレに向かう。用を済ませて教室に戻りドアに手をかけようとしたとき、
「あ、あの。」
誰かに声をかけられた。声の方を振り返る。知らない女子だ。
「あ、あの。F組の図書委員のムラタくんですよね。あの私、D組の図書委員なんですけど、その。」
なるほど、そういうことか。
「わかった。他の人にも聞いてみるから、ちょっと待って。」
俺は教室を見渡す。いた。窓際の席で開いている窓からの風で長い黒髪をなびかせている小柄で色白な女の子。俺はその子の席に向かう。
「ミタニさん。」
水谷 祈李。彼女に声をかける。本を読んでいた様だ。彼女は白くて細い綺麗な手で栞を本に挟み、俺の方に顔を向ける。
「なんですか。」
彼女はいつも敬語だ。
「D組の子たちが今日の当番替わって欲しいみたいなんだけど。」
「かまいませんよ。」
「ほんと?ありがとう。」
そう言って俺はもう一人の図書委員を探す。俺と目が合うとユイはわかっていたみたいで指でOKサインをした。
ドアの前に戻り、さっきの女の子に大丈夫という旨を伝える。彼女は
「ありがとうございます。」
と笑顔でお礼を言い、自分のクラスに帰っていった。
その日の放課後、図書委員の仕事をそつなく終え、帰ろうとするとふいにユイに呼び止められた。
「ナツ、待って。」
俺はユイのほうに目をやる。ミタニさんはもう帰っていた。ユイはニヤつきながら、
「一緒にかーえーろー。」
特に断る理由もなかったので俺はうなずく。




