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スフィリアから神殿らしき建物の情報を得たエルディアは、念のため修道女についても確認してみる。
「じゃあ、大昔に修道女たちとこの村の薬師たちに交流があったっていうのは?」
「あれが神殿かどうかは分からないけど、あの辺にも昔は人が住んでいたんだよ」
「まぁ、そんな建物があったくらいだもんね?」
スフィリアは懐かしそうに目を細めた。ギャンブル好きの老婆が薬師であることを思い出させるのには十分な、優しい顔つきだ。
「あたしのおばあさんから聞いた話じゃ、あの周辺にいる薬師たちは、それまでの常識とは全然違う知識を持っていたそうだよ」
「そうなの? その場所はこの村の一部じゃないんだ?」
「そうだね。その当時は別の集落だった」
スフィリアの話を聞き終えたエルディアは、顎に手を当てて視線を落とした。
(神殿っぽい場所はある。修道女のことはおばあちゃんの話を聞いたブルーベルが神殿から連想した勘違いって可能性も高いのね……)
整理するとラスティに視線を投げた。
ラスティも同じ結論にたどり着いたようで、エルディアを見て頷く。
そしてスフィリアに近寄るとちょこんと頭を下げた。
「ありがとう、おばあちゃん。あと、ズルしてごめんね?」
「いやいや、いいものが見れて楽しかったよ。ああ、折角だからこのカードもお嬢ちゃんにあげようね。いっぱい練習してまた見せておくれ」
「いいの? ありがとう」
スフィリアは目元を緩めて、ラスティの頭を撫でた。そのまま、よいしょと立ち上がると表の看板を返して「営業中」に戻した。
それを合図にエルディアとラスティは軽く挨拶をして、スフィリアの店を後にする。
勿論、スフィリアのおすすめの謎の薬草ドリンクもしっかり買わされた。
宿に戻ると、エルディアは部屋の椅子の背もたれに体を預けた。
そのままスフィリアおすすめの得体の知れない緑色の液体を眺める。
恐る恐るそっと顔を近づけると、ぐっと鼻にしわを寄せた。
「あり得ないほど、えぐい匂いがするんだけど……」
「飲んでみろよ?」
「やだよ、なんであたしが」
ラスティがさらっとエルディアに押し付けようとしたが、エルディアは即座に首を振る。
押し付け合いを続けた結果、結局、先ほどのドラコゲームをして負けた方が飲むことになった。
「ぎゃー! あんた、絶対、イカサマしてるでしょ!!」
何度やっても勝てないエルディアがラスティに噛みつくと、ラスティがかわいげなく顎を上げた。
「証拠があるのかよ?」
「かわいくない!!」
「いいから、ほら、早く飲めよ」
促されて、しぶしぶとエルディアはその緑色の液体をあおる。その直後、「ぐげっ」という妙な声とともに、テーブルに突っ伏した。
「にーがーいー」
呻くエルディアをラスティが笑い飛ばす。
エルディアは悔しそうにラスティを見上げた。
「あんた、なんでこんな詐欺師みたいなことできるのよ!!」
エルディアが楽しそうなラスティに苦い顔で問いかけると、ラスティはカードを切りながら、少し斜め上に視線を滑らせた。
「兄上が……」
「また、兄上なの!?」
ラスティのよくない特技はだいたい兄上様が絡んでいる。
エルディアは大きく息を吐いた。
「ドラコゲーム……っていうか、王都じゃ『ラトロゲーム』だけど、あれは訓練にちょうどいいからって」
「なんの訓練よ……」
「そういうなよ、俺だっておかしいなとは思ってたんだから」
エルディアが話を混ぜっ返すのを苦笑しながら受け流し、ラスティは話をつづけた。
「要するに、俺たちみたいな権力者の子どもはカモにされやすいから、いざっていうときに、先手を打てるようにしておけって……」
「あんたのお兄さん、いろんな意味で好戦的よね」
「あ、兄上は俺なんかよりずっと上手いからな?」
どんなフォローなのか、そこはかとなく誇らしげにラスティが唇を持ち上げた。
エルディアは全く興味のないラスティの兄上自慢に付き合わされることを覚悟して、相槌を打った。
「そうなの?」
「ああ。俺はターゲットに有利になるようにカードを配るくらいしかできないけど、兄上は場のカードを全て支配するからな」
「兄上さまは王さまじゃなかったら詐欺師になるつもりだったのかしら?」
ラスティの話は大げさすぎる。話半分に聞いたほうが良いだろう。
それにしたって、かなりのブラコンだとは思うが。
「おまえ、本当に不敬だな」
「あんたの『不敬』も久しぶりに聞いたわ」
エルディアはラスティからカードを奪い取って、それを弄びながら肩をすくめた。




