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土日は3話公開です。
「俺が兄上たちとやってたラトロゲームは、チーム戦だったんだよ」
「チーム戦?」
「そう、2人1組でイカサマも心理戦もありでやるんだ」
エルディアは想像して、うへぇと舌を出した。
聞くからに面倒くさそうな頭脳戦ゲームだ。
「何それ、疲れそう」
「疲れる……信じられねぇくらい、疲れんだよ」
思い出したのか、ラスティもうんざりとした顔をしている。
そんな顔をするくらいなら話を持ち出さなければいいのにと思い、エルディアがラスティを見つめると、ラスティは不本意そうに唇を尖らせる。
「兄上とギュバンスが組んだ時、俺たちは1回も勝てたことないんだ」
「明らかに面倒くさそうな2人組じゃない。……あんたは誰と組んだの?」
「ニコラ……義姉上……」
エルディアは少しだけ目を瞬いて思わず噴き出した。
以前聞いた暗号文の時もそうだった。
きっと幼いころのラスティは、ずっとオルディスとギュバンスのあとをニコラと一緒について回っていたのだろう。
「なんだか、かわいいわね。あんたも王妃様も」
「かわいいってなんだよ」
「お偉いさんのおうちの子なのに、うちの近所の子たちとあんまり変わらない感じってこと」
大好きな年上のお兄さんたちに遊んでもらって大きくなったという感じだろう。
不敬だろうが何だろうが、エルディアはこれまで想像つかなかった雲の上の存在が自分たちと変わらない人間なんだと感じて、また肩を震わせた。
「だけど、しょうがないんじゃないの? だってあんたも義姉上さまも、兄上さまたちより年下なんだし」
「年は関係ないだろ。兄上はその時の俺と同じ年のころにはもう強かったし」
兄弟だから永遠に埋まることのない年の差を、ハンデとしては考えないらしく悔しそうな顔をするラスティにエルディアは苦笑した。
「そう。兄上さまは強いのね?」
「ああ。そして、その兄上だってなかなか勝たせてもらえないのが、ヴァランだった……」
ふいに出てきた名前にエルディアの片眉が上がった。
ラスティの表情に翳りが浮かんでいる。ずっと気にしていたのだろう。
エルディアだって忘れていたわけではない。
「……ジーンは『この町にいる間は』追っ手の心配はないと言っていただろう?」
「言ってたわね、そんなこと」
「だとしたら、あの町を出た時点でジーンの目くらましは無効になってる可能性もあるよな」
2人がジャンポネイルの町を出てから少し時間が経っている。
エルディアは沈黙した。その可能性が十分高いからだ。
「だとしても、すぐにここにたどり着くとは思えないけど?」
「相手はヴァランだ……」
「あんた、お兄ちゃんのことめちゃくちゃ崇拝してるもんね」
その兄オルディスが一目置いている人物。それだけでもラスティにとっては十分脅威だ。王都でオルディスやギュバンス、ニコラが手を回してくれていることは感じている。
そのおかげで、ぎりぎりのところをすり抜けられているといっても過言ではない。
「これだけ後手に回っていて、そのまま終わらせるような性格じゃない。そろそろ、本気を出してくるころだ……」
「あらま。こっちも結構頑張ってんだけどね?」
思いつめたような顔をするラスティの鼻をエルディアが摘まむ。
むぐっというくぐもった声とともに、ラスティの不機嫌そうな目がエルディアを見上げた。
「どうしたの? あんなに堂々と大浴場にだって行こうとしてたくせに、急に心配になっちゃった?」
「そういうわけじゃない……けど、ゲームでなんとなく思い出しただけだ」
「大丈夫だよ。『焦ってもしょうがない』んでしょ?」
エルディアがラスティの目を覗き込んだ。
夕焼けのような目が、ラスティのささくれ立つ気持ちに滲むように入ってくる。
「明日、その神殿らしき場所に行ってみよう。そんで、追っ手に見つかる前にさっさと試験会場を見つけましょ」
「ずいぶん簡単に言うな?」
「大丈夫、明日はきっと見つかる」
何を根拠にそんなことを言っているのか。そんなことを思わないわけではなかったが、エルディアが自信満々に唇を引き上げるので、思わず頷いてしまった。
ラスティがふいに不安になったと思ったのだろう。エルディアはラスティを引き寄せて、小さく耳元で歌いだした。
(……こいつ、また俺のことを子どもだと思ってやがるな)
とはいえ、しばらくしたらエルディアもまたラスティの本来の年齢に思い至って、挙動不審になるのだろう。
そんな先の想像が簡単についたが、ラスティはその声を大人しく聞くことにする。
あとで居たたまれなくなって悶えるのはエルディアだ。
その時になって慌てても自分の責任ではないと思いながら、ラスティは目を閉じた。




