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興奮するスフィリアを落ち着かせるために、一旦、ラスティは手の内を明かした。


「切札にしたいカードを意図的に決めて、強くなったカードを狙った相手に配ったの」


「そんなことができるものかい?」


「簡単じゃないけどね。技術としては可能だよ」


本人の言う通り、可能なことと実際にできることは別の話だ。エルディアとスフィリアはラスティの手元を見つめた。


ラスティは実際にカードを切って見せる。そして適当なところで動作を止めて、スフィリアを見上げて笑った。


「クルミの5」


そう言って、めくって見せた一番上のカードは「クルミの5」だ。


「はぁ! 本当だ。お嬢ちゃんはそれができるってわけなんだね?」


「うん。でも、やり方は秘密」


「あぁ、面白いもんが見れたから、それで十分だよ」


ラスティの言葉にスフィリアは頷いた。たとえ教えてもらっても分からないし、自分で再現できるとも思えない。


「あんた、詐欺師でも目指してるの?」


エルディアはラスティからカードを受け取るとあちこちから眺めた。


どう見てもただのカードだ。


「まさか。今回はおばあちゃんがお姉ちゃんを強く警戒してたから、うまくいっただけだよ」


ラスティは首を振った。


会得していた技術は体が覚えていたが、サイズが変わったことで勝手が変わったのも確かだ。ゲーム前にカードを切ってみて可能かどうか確認はしたが、注意深く疑われたら通用したか分からない。


「いやいや、今はちゃんと見てたけど、分からなかったよ!」


それでもスフィリアは興奮して手を叩いた。イカサマをされたというより、手品を見せてもらったという気分になってしまったのだろう。


「それじゃあ、こっちの聞きたいことも教えてくれる?」


「ああ、いいとも。聞きたいことはなんだい?」


ラスティがエルディアを見上げる。

エルディアは片眉をあげた。


「サンダクラプ村か、この近くに神殿があったっていう話を聞いたことない?」


「神殿だって?」


「うん。昔はこの辺にも修道女がいて、村の薬師たちも交流があったって聞いたの」


スフィリアは顎に手を当てて考えていたが、最後には首を捻った。


「神殿も修道女も聞いたことないね。誰に聞いたんだい、その話は」


「えー、そうなの? キールおじいちゃんのところのブルーベルに聞いたんだけど」


「ああ、あんたたち、ブルーベルの知り合いかい」


目を細めたスフィリアを見て、エルディアは自分のやり方が間違っていたことを悟った。


「最初からブルーベルの紹介って言えばよかった!!」


「今さら、そこかい」


思いっきり嘆いたエルディアを呆れたように見やって、もう一度スフィリアは考え込んだ。

そのまましばらく宙を見ていたが何かを思い出したようで、ぽんと手を打つ。


「だとすると……。ああ、薬草の群生地の辺りのことだ!」


「薬草の群生地って?」


「この村の向こうに広がる平原に、昔からやたらと薬草の取れる場所があってね」


エルディアは急いで地図を引っ張り出した。

それをスフィリアの目の前にぱっと広げる。


「この地図だと、どの辺?」


「この辺りだね」


「なんで、ここがブルーベルの言ってた神殿だと思ったの?」


スフィリアは「神殿はない」と言った。けれど、ブルーベルが言った神殿の場所に心当たりはあった。


小さな食い違いが気になった。


「古い神殿みたいな建物があるって言った覚えがあるからね」


まさかの話の出所である。


「おばあちゃんが、ブルーベルにそう言ったの?」


「ああ。あそこは大昔から竜に護られた場所と言われてたし……」


とにかく不自然に薬草が群生しているので、なにか特別な力に護られているに違いない、と伝承されているらしい。


「なんで、『神殿』になっちゃったのよ?」


「昔は竜も神様だったんだよ。『竜神』っていってさ」


竜神が護る土地。


「だから、神殿があったんじゃないかってこと?」


「いや、そこまでは考えてなかったね。なんとなく神殿っぽい古びた建物だったもんだからね」


「通称ってことじゃん!!」


全く、ぜんぜん、これっぽっちも、神聖な理由がなかったことに、エルディアはがっくりと項垂れた。


「ただのボロい建物じゃ、王家にも記録されないわけだわ……」


「落ち着けよ、そんなにショック受けなくてもいいだろう。……300年前は神殿だったかもしれねぇし」


「あんた、なんでそんなに前向きなのよ……」


恨めしそうなエルディアにラスティは肩をすくめて教えてやった。


「おまえの影響(せい)だよ」


「やめてよ……」



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