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土日は3話公開です。
近場の食堂で昼食をとって、腹を満たすと気持ちも落ち着いてきた。
エルディアは今日の予定を思い浮かべ、改めて考えた。
もう少し手持ちの情報を宿で整理したほうが良いのかもしれない。
「とにかく、一気に情報が集まり過ぎた気がするの」
「そうだな。全部が無駄だとは思わないが、今は必要ないのもありそうだしな」
宿に戻りたいというエルディアにラスティは頷いた。
それとは別に、エルディアも少し休ませたほうが良いだろうと判断した。
ずっと飄々としていたが、今回いつになく焦りが見え始めたのは疲れが溜まっているからというのもあるのだろう。
(まあ、移動もなにもかも1人でこなしてんだし……)
以前、気を使われるのが嫌だと告げてきたので本人の意見を尊重していたが、気付かれなければ問題ないだろう。
今日の午後は情報の整理に回して、聞き込みはまた明日から始めればいい。
そんな計算もあった。
それぞれの思惑を持って2人は宿に戻り、部屋のベッドのふちに腰を下ろして向かい合う。
そして、ベッドの上に集めた資料を広げつつ、1つずつ確認していった。
「あんたが竜騎士になるために必要な条件は、『晦』に出現する扉の向こうの竜と対面して力を授かることね」
これはカシスウェルに伝わる話だ。
エルディアは手元の紙に書きつけた。
「王家に伝わっているのは、『竜王眼』と呼ばれる琥珀色の目をした王族にしかその資格は与えられないということだな」
細かいルールはいくつもあったが、結局はこの2つに絞られる。
「これまでの話だと、その扉が出現する場所はこの村か、村の近辺にありそうってことだよね」
「占い師のヒントは『神殿』だったな」
改めてメモした紙を見つめてみるとなんだかとてもシンプルだった。
「『晦』までに『扉』を見つけて竜に対面する」
「恐らく『扉』の場所は『神殿』を見つけることで特定できるってことだろうな」
ラスティが結論付けると、エルディアは背中からベッドに倒れこみ、大きく息を吐いた。
壮大な話が次から次に舞い込んできたから、あれもこれもと知りたくなったがそんな必要はないようだ。
「よし。明日おじいちゃんに誰か薬師を紹介してもらおう」
「そうだな……。あんまり難しく考えない方がいいだろう」
ラスティはベッドに転がるエルディアを上から覗き込んだ。
小さい体の時に、エルディアを見下ろせる機会は滅多にない。
エルディアはラスティの顔が思ったより近くに寄ってきて、「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。まるで化け物に遭遇したような態度である。
「失礼なやつだな、おまえは」
「急に近づくからでしょうが!!」
「へぇへぇ、悪かったな」
適当に返事をして上体を起こすと、ラスティはエルディアに宿のパンフレットを放り投げた。飛んできたパンフレットを受け止めたエルディアが首をかしげる。
「貸切風呂、今日はおまえが入ってみろよ。結構よかったぞ?」
「え、なんでよ? あたしは大浴場で問題ないよ」
「いいから使え」
何を言っても聞かなそうなラスティにエルディアは不思議そうな顔をする。
そして僅かに眉間にしわを寄せる。
「あんたは大浴場はダメだよ?」
「まだ言ってんのか。じゃあ、その貸切に一緒に入るぞ?」
「だ、ダメに決まってんでしょ!!!!」
少し元気になったエルディアの様子に、ラスティは満足そうに目を細めた。
竜気がどうのこうのという前に、温泉には疲れを取る効果があるとジャンポネイルでも言われていたはずだ。
「1回ちゃんと休めよ。明日からまたこき使ってやるから」
「なあに、それ。めちゃくちゃ感じ悪いわね」
ラスティが揶揄うように唇の端を引き上げた。
挑発するような態度はかわいくないことこの上ない。
それでもラスティから感じる小さな優しさに、エルディアはまた、くすぐったいような落ち着かない気持ちになる。それを誤魔化すように乱暴にパンフレットをひらひらと振った。
「金にものを言わせて、2つある貸切を両方取ってやるわ!」
「言わせるな。他の客に迷惑だろうが」
ラスティは実に良心的な注意をしたのだが、タイミングよく2つの貸切風呂が開いていたため、その日の夜はそれぞれが無事にゆっくりと湯に浸かったのだった。




